栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 医者の高齢化/禁煙治療としてのニコチンパッチ vs バレニクリン vs 併用療法/反復する腹痛の原因は?/鉄欠乏性貧血レビュー/訴訟の疫学

■JAMA■

医者の高齢化 
The Graying of US physicians Implications for quality and the future supply of physicians*1

 人口の高齢化に伴い医師も高齢化していると言われています。また、医師という職業に決まった定年がないことも一因です。医師はいったいいつ引退すべきなのでしょうか?
 2012年に米国で医業を営んでいる医師の26%が60歳以上とされています。一部の患者団体や消費者団体は、医師の認知機能や運動機能を評価し、安全で妥当な医療を提供できるかを定期的に評価することを要求しています。アメリカ医師会は近くこれについてのガイドラインを作成する予定なのだとか・・・

 今回のポイントは、高齢医師が問題である!という話題ではなく、高齢化した場合にはある程度特定の評価を受ける必要があるというところです。神経認知スクリーニングが重要と記載があります。
実はいくつかのSystematic reviewでは、医師の年齢と診療パフォーマンスや学術的な知識に負の相関があるという報告もあります。一方で神経認知スクリーニング検査をどう用いたら良いかも不透明です。認知機能スコアが低いけれど臨床的に有用な医師もあり、安易に止めさせることは医師不足に拍車をかける可能性もあります。

 本文中にも

「Older physicians bring valuable skills, clinical expertise, and life experiences that can be gained only by years of practice.」

 年齢だけで排除すべきではないと書かれています。

 個人的には、高齢という年齢因子だけではなく、医師はある程度定期的にそのスキルを評価される必要がありますし、排除の論理というよりは全体的なレベルアップ・レベル維持の仕組みを作っていく必要があるだろうと思っています。

 

✓ 医師の高齢化と診療継続能の適性評価は今後の課題である

 

 

禁煙治療としてのニコチンパッチ vs バレニクリン vs 併用療法 
Effects of nicotine patch vs Varenicline vs combination nicotine replacement therapy on smoking cessation at 26 weeks*2

 禁煙治療については日本ではバレニクリン一辺倒になっている気がしないでもないですが、実はまだまだ検証の余地はある分野だと思っています。特に併用の効果はまだまだこれから。一応過去の研究結果で分かっているのは、併用がニコチン単独より良いことは分かっていますが、併用がバレニクリン単独より良いかはよく分かっていないところです。
 論文のPICOは、

P:広告で募集して禁煙希望があるcurrent smoker 1086人
※18歳以上で5本/日以上を組み入れ。呼気CO<4ppm・精神科既往・希死念慮などは除外
I/C:①ニコチンパッチ12週、②バレニクリン12週、③併用療法 12週
全ての群で計6回のカウンセリングは併用
O:26週時点での自己申告の7日以上の禁煙+呼気CO<5ppm
T:RCT/ITT解析
結果:
 平均48歳、女性 52%、平均喫煙本数 17本/日、28.6PY、FTND(ニコチン依存指数) 4.8点
 服薬アドヒアランス 43-49%
 プライマリアウトカムの26週時点での禁煙率は、ニコチンパッチ群 22.8%、バレニクリン群 23.6%、栄養群 26.8%で有意差は認めなかった
 52週時点での禁煙率も同様の結果。
 副作用はバレニクリン群が有意に多い結果だった

  アドヒアランスがかなり悪いので実際の薬効が評価されていない可能性はありますが、それにしても本当にバレニクリンって必要?という疑問がでそうな結果になっています。そして、禁煙率はよく半分とか言ってますけど、25%前後だから4人に1人ですねえ。


✓ 禁煙治療としてのバレニクリンの効果はニコチンパッチや併用療法と比較しても優位差はでていない



 

■NEJM■

反復する腹痛の原因は? 
Case 3-2016: A 9^year-old girl with intermittent abdominal pain*3

 初めて聞く病態。症例は9歳の女の子で慢性便秘と徐々に増悪する間欠的な腹痛を主訴に消化器科のクリニックを受診。患者は4歳までは特に何の自覚症状も悪、その後徐々に症状が出るようになった。発作は時折あり、便秘や非血性嘔吐を伴うこともあった。発熱や下痢症状なし。健康診断では異常なく、ポリエチレングリコールを内服して便秘は改善傾向。

 患児が8歳になったころから、突然の左胸痛が出現するようになり、頻脈や嘔吐を伴った。身体所見では脈は150bpm、体温は正常で身体所見の他の異常を認めなかった。心電図や胸部X線も正常。心臓検査も異常なかった。その後症状は徐々に増え、週に3−4回程度見られるようになってきている。週末よりは学校にいるときの方が発作が多い。典型的には心窩部痛で嘔吐を伴う。尿培養は正常でピロリ菌陰性、腹部X線で閉塞は見られなかった。PPIと下剤処方。9歳4ヶ月で強い心窩部痛があり救急外来を受診。左下腹部の膨満感と反跳痛あり。下剤を再開したが、症状は断続的に再開。採血を施行したが、電解質・肝腎機能・甲状腺ホルモン・白血球数・Celiac病検査などは異常なかった。


 鑑別は?? 多くの鑑別が出ていました。便秘・機能性腹痛・GERD・ピロリ菌感染症・炎症性腸疾患・食物特有の障害(食物アレルギー・Celiac病・食物耐性)・腹部片頭痛・胆道系閉塞・腸回転異常症など。で、最終的に本患者で考えられるのは腹部片頭痛ではないか?と。ただ、患者家族は納得せず更なる精査を希望

f:id:tyabu7973:20160211230109j:plain

(本文より引用)

 で、CTをご供覧でございます。

f:id:tyabu7973:20160211230145j:plain
(本文より引用)

 なんとかなり巨大な副脾を発見!副脾自体は珍しい所見ではなく、偶発的に画像で見つかるのが11%程度、剖検では30%に見られたなどという報告があります。ほとんどの副脾は2cm以下だが、本患者は4.4cm!副脾は一般的には脾門部付近に存在しますが、脾腎靱帯・胃脾靱帯・膵尾部・大網周囲に存在することがあるんだそうです。異所性脾臓ではsplenosisが鑑別ですが、通常外傷後に発症する。ほとんどの患者では無症状だが、捻転によって腹痛の原因になることがある。成人でも症例報告あり。本例では手術が施行され、術中所見で捻転を疑う所見と梗塞所見を認め、症状の原因と考えられました。術後3年経過しているが、症状の再発は認めていません。

 

✓ 副脾は捻転を起こして急性腹症の原因になることがある



鉄欠乏性貧血レビュー 
Iron-Deficiency anemia*4

 C先生の怒濤のレビュー紹介が続いています。急に目覚めた感じ。ポテンシャル高いなあと。まあ紹介させて頂きますよ〜。

■Introduction■
貧血の原因として今なお最多発展途上国/先進国の幼少児、閉経前女性に多い Public Health Nutr 2009;12:444-454
・鉄は呼吸/エネルギー産生/DNA合成/細胞増殖などで必須 Cell 2010;142:24-38
赤血球破砕後に再利用/排泄を低下→鉄を貯蔵
・鉄過剰は有害→吸収は1−2mg/日のみ。老化赤血球を貪食した食細胞を再利用し必要量 (25mg/日)を確保
再利用と排泄低下はヘプシジンというホルモンが関与
・鉄欠乏性貧血とは鉄の貯蔵量が低下し続けるか低下したままの状態が続き、小球性低色素性貧血に進行する事を指す


<鉄利用障害>
・鉄利用障害は鉄をいくら補充しても赤芽球の前駆体へ鉄がが輸送されない事を言う。 N Engl J Med 2005;352:1011-1023 Blood 2010;116:4754-4761
・慢性炎症(自己免疫疾患/癌/感染症/CKD等)による鉄の利用障害のため鉄貯蔵は正常か亢進している事も。 N Engl J Med 2005;352:1011-1023 Blood 2010;116:4754-4761
・高齢者では鉄欠乏やヘプシジン値上昇がない事もあるが、鉄欠乏と鉄利用障害が併存している事もままある。 Am J Hematol 2014;89:88-96 Oncologist 2011;16:Suppl 3:25-34 Blood 2010;115:3810-3816

<相対的鉄欠乏>
ESA製剤な使用後などで貯蔵鉄の利用より需要が高まっている状態を相対的鉄欠乏という。
・本稿では(小児や女性以外の)主に成人での体内での鉄動態把握、原因と病態生理的な特徴、治療法に触れる。Schrier SL. Causes and diagnosis of iron deficiency anemia in the adults. 2014  N Engl J Med 2014;371:1324-1331

 

■Global health problem■
・世界では20億人が鉄欠乏 Public Health Nutr 2009;12:444-454
・1990-2010年の184カ国の調査 Blood 2014;123:615-624
・貧血の最多の原因で就学前の小児や若年女性がリスク Lancet Glob Health 2013;1:e16-e25
・予防プログラムのお陰で半分に減ったが、中央-西アフリカや南アジアでは未だに世界平均の2倍の罹患者 Blood 2014;123:615-624 Lancet Glob Health 2013;1:e16-e25
罹患率:就学前児40%、生理のある女性30%、妊婦38% Blood 2014;123:615-624 Lancet Glob Health 2013;1:e16-e25 Blood 2013;121:2607-2617 
・高リスク患者のIDAは病的原因の精査は不要。高リスク患者でも治療への反応性が悪い時に原因を検索
発展途上国:食事摂取不足 and/or 寄生虫による腸管からの出血
・先進国:食習慣(菜食主義者/赤肉のみ)基礎疾患(CKD/吸収不良症候群) 
※先進国の方がIDAの有病率が下がりにくい
・高齢者の比率が多いことによると考えられている。 Blood 2014;123:615-624

 

■Modifications of iron homeostasis in iron deficiency■
・鉄代謝はヘプシジンによる微量な調整を受けている。 Cell 2010;142:24-38
FPN(フェロポルチン):細胞から循環プールに鉄を誘導する Science 2004;306:2090-2093
・ヘプシジン:主に肝臓で合成
 腸管上皮細胞/脾臓の食細胞のFPNを分解→血液への鉄を移動を阻害
 増加:血中/組織中の鉄の増加・全身の炎症・感染症
 減少:赤血球合成・鉄欠乏・組織低酸素 
Cell 2010;142:24-38 Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2013;2013:1-8
・慢性疾患→サイトカイン誘導(IL−6)→ヘプシジン増加→赤芽球への鉄供給
・ヘプシジンは若年女性で低下、閉経後女性で上昇。ヘプシジン値は血清フェリチンと良く相関 Blood 2011;117:e218-e225 J Med Genet 2011;48:629-634
・出血や吸収不良では貯蔵速度により欠乏の速度が決まる
・肝細胞は鉄を長期的に貯蔵。食細胞より放出速度は遅い

 

■Causes of iron-deficiency anemia■
後進国:欠乏/低栄養/飢餓が主因:穀物食品は成分のフィチンが鉄と結合し腸管吸収不良、鉤虫や住血吸虫による慢性的出血 Blood 2014;123:615-624
・先進国:忌肉主義/菜食主義/吸収不良/生理からの出血。高齢者の慢性的な消化管出血:良性腫瘍/血管腫/癌。小腸出血をカプセル内視鏡で精査:有効性を証明出来ず World J Gastroenterol 2014;20:10024-10037 Expert Rev Gastroenterol Hepatol 2013;7:323-329
・頻回に献血する人もリスク
・稀に血管内溶血で鉄欠乏になる事も(夜間血色素尿症)
・マラソン選手は溶血/出血/軽度の炎症が起こりうる
・NSAIDsや抗凝固薬も。PPIによる鉄吸収阻害も見落とされやすい Ther Adv Drug Saf 2013;4:125-133
後進国:飢餓+線虫などの寄生虫感染
・貧血の重症度と鉤虫の便中PCR量が相関 PLoS Negl Trop Dis 2012;6:e1555-e1555
・住血吸虫症:出血+感染による慢性炎症 Trends Parasitol 2005;21:386-392
・女性:月経過多 Blood 2014;123:326-333
・CKD:ヘプシジンの腎排泄低下  薬剤:PPI、抗凝固薬
・高齢者:IDA/炎症性疾患/ESA↑/癌など併存疾患多いと貧血も多い Am J Hematol 2014;89:88-96 Clin Interv Aging 2014;9:1187-1196
肥満:無症状の炎症を惹起→ヘプシジン↑ 鉄吸収↓ Nutrients 2014;6:3587-3600
・CHF:30−50%に鉄欠乏性貧血 鉄の吸収低下、炎症のためか。Nat Rev Cardiol 2011;8:485-493 Eur J Heart Fail 2014;16:984-991

f:id:tyabu7973:20160211231546j:plain(本文より引用)

 

■Iron refractory iron deficiency anemia:IRIDA

<遺伝性IRIDA>
鉄を4−6週補充してもHbが1以上増えない→「治療抵抗性」 Blood 2014;123:326-333
・TMPRSS6(膜蛋白遺伝子)の異常のある治療抵抗性IDAの50家系 Haematologica 2013;98:845-853 Hematol Oncol Clin North Am 2014;28:637-652
・機序:ヘプシジン産生↑ 腸管の鉄吸収阻害 → 補充療法に抵抗
 微小赤血球/トランスフェリン↑ /フェリチン→/ヘプシジン↑ Haematologica 2013;98:845-853
・確定診断はTMPRSS6遺伝子の配列異常を検出する事️

<その他のIRIDA>
・胃摘出後/十二指腸バイパス術後/肥満手術(Roux-en-Y)
・鉄の消化吸収阻害/胃のpH↑ 有病率45%(特に女性) World J Gastrointest Pharmacol Ther 2013;4:49-53 Ther 2014;40:582-609
・生涯にわたるモニタリングと鉄の補充が必要 J Am Coll Surg 2014;218:246-252
ピロリ菌感染:粘膜糜爛→出血とビタミンC吸収阻害 Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2014;11:234-242 世界人口の半分が感染→貧血治療の為に️除菌適応を考慮 Am J Gastroenterol 2013;108:656-676
・Celiac病:腸管のグルテン過敏性亢進による吸収不良。 Gastroenterol Hepatol 2013;11:808-814 件数はわずかだがグルテン過敏の2.5−5%が本疾患とも。 Blood 2014;123:326-333
・自己免疫性萎縮性胃炎:壁細胞と内因子への自己抗体 Blood 2014;123:326-333
IBD:鉄/葉酸/VitB12の欠損、薬剤性など下原因は多岐

 

■Clinical findings■
・無症状のことがあり診断の遅れに繋がる。
・組織の低酸素/鉄を含有する酵素の失効→脱力、倦怠感、集中力欠、仕事が出来ない等非特異的。
・どの程度鉄欠乏が進むと貧血出現の前に症候化するかは不明
・小児では認知機能の低下や精神発達地帯の原因
・妊婦では早産、低体重、母児死亡のリスク
感染症心不全、むずむず足症候群に罹患し易い
・鉄欠乏患者の心不全貧血の有無に拘らずQOL低下 N Engl J Med 2009;361:2436-2448

 

■Determination of iron status■
・機能的鉄欠乏・鉄欠乏性貧血・IRIDA・慢性貧血を鑑別
血清フェリチン<30μg/L トランスフェリン飽和度<16%が正常の赤血球合成が出来ない閾値として感度・特異度良好
・ただし単一検査より全体像の方が重要
・小球性貧血の鑑別診断は別にGLがあるため適宜参照
・慢性炎症+鉄欠乏性貧血は診断困難で単一検査では不可。血清フェリチン<100μg/Lが有効
心不全では<300μg/L、CKDでは飽和度<30%が有効
・骨髄検査し鉄沈着所見を見るのが有効だが実臨床では行っていない。
・ヘプシジン値は一般の検査室では測定不可能

 

■Therapy■
・鉄欠乏性貧血:鉄の補充。
マラリア感染者は効果がなく感染を増やすかも Lancet 2006;367:133-143 Science 2012;338:768-772 
・P. Falciparumに感染した赤血球は逆効果 Nat Commun 2014;5:4446-4446
・貧血の小児にいつ補充開始するかはヘプシジンが有効 Nat Commun 2014;5:4446-4446
吸収されなかった鉄は腸内細菌叢を破壊し感染リスク↑ FEMS Microbiol Rev 2014;38:1202-1234
貧血のない鉄欠乏の段階で補正するべきかは不明。小規模研究では点滴で貧血のない女性の倦怠感を改善 Blood 2011;118:3222-3227
・経口で生殖年齢女性の活動度を改善した報告も J Nutr 2014;144:906-914
※但し規模が小さく異質性が大きい事に注意
心不全狭心症症状などがある場合→輸血を推奨
・RCC1単位に鉄200mgを含有→低酸素も鉄欠乏も改善効果

 

<経口治療>
・内服は簡便/安価/効/有効性高い。種類も豊富。
・成人:100-200mg/日/小児3−6mg/kg/日分割。VitC併用も有効。
3−6ヶ月間内服しフェリチン正常化を目指す
・副作用:嘔気/嘔吐/便秘/味覚異常→嫌がる人もいる
・治療失敗→途中で中断/低コンプライアンス/真の難治を鑑別
・真の難治→HPの除菌、セリアック病にグルテン除去食を。Blood 2014;123:326-333
鉄剤投与の可否を予知するマーカーは今の所なし
・内服直後の数値測定をする手法は未検証であり非現実的
・ヘプシジン値測定は有効かもしれないが臨床応用不可。 Ther Adv Hematol 2014;5:48-60
・経口補充の早期有効性判定は鉄欠乏貧血+慢性貧血に有効かもしれない
・リウマチ性疾患での鉄欠乏+慢性貧血に関する研究。治療1週間後に網状赤血球のHb含有量↑を確認 Haematologica 2014;99:e171-e173

 

<点滴治療>
・過敏症状があるため点滴は適応は限られていた
・現在はより安全な製剤が市場に出たため使用し易い
腸管吸収の問題を回避出来るため急速に数字改善が可能 Nephrol Dial Transplant 2014;29:2075-2084 Transfusion 2014;54:306-315 Am J Hematol2014;89:7-12
・必要量(最大1000mg)を単回IVで投与可能なのが特徴(必要量:体重kg×2.3×欠乏Hb{目標Hb-現在Hb}+500)
・費用は高いが受診必要回数を減らす事が出来た J Crohns Colitis 2010;4:427-430
・吸収不良や遺伝性IRIDAは点滴製剤が必要な事もある Haematologica 2013;98:845-853 Hematol Oncol Clin North Am 2014;28:637-652
・遺伝性毛細血管拡張症など慢性出血が内服で対応不可能な場合
・活動性IBDは内服ではむしろ局所炎症が増悪する事があり適応 Aliment Pharmacol Ther 2013;38:1109-1118
・CKDで透析やESA製剤を投与している場合の鉄欠乏性貧血は静注で治療するのが基本 Oncologist 2011;16:Suppl 3:25-34 Nephrol Dial Transplant 2013;28:2570-2579
・鉄剤投与でESAや透析の需要を減らす事が出来る
ESAは低リスクMDSや化学療法中の患者にも処方される。ESA抵抗性の貧血かつ経口鉄剤が無効の時に点滴鉄剤を
・鉄剤がESA製剤にどう作用しているかは未だ未解明(食細胞に作用しFPN発現を増強➡️鉄循環を増強?) Blood 2010;116:4754-4761
1st−trimesterの妊婦には禁忌(安全性未確立) Haematologica 2014;99:1671-1676

 

・上記以外ではIV鉄剤の有効性は検証不十分
・鉄欠乏性貧血に心不全が合併した患者の多施設研究→NYHA,補充なしの期間が改善 N Engl J Med 2009;361:2436-2448 Eur Heart J 2013;34:30-38
1年治療治療すると再入院率を減らせる事も判明 Eur Heart J 2015;36:657-668
・但し非常に主観的評価。期間/規模とも不十分。追加試験が望まれる。
・点滴鉄剤の副作用:下記が出現し48時間以内に改善
・嘔気/嘔吐/皮疹/頭痛/発赤/筋痛/関節痛/胸背中痛 Am J Hematol 2013;88:944-947
・過敏反応は重篤化しうる。機序不明だが遊離鉄↑で増悪。現在の薬剤では起こらない Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2010;2010:338-347 Am J Hematol 2013;88:944-947
・急速IV/アトピー既往/薬物アレルギー既往が高リスク。
・予防策:緩徐に投与/患者観察/緊急対応可能な準備をする Haematologica 2014;99:1671-1676 European Medicines Agency, 2013  
・試験的注入、抗ヒスタミン予防投与はショックを防ぐため禁忌 Allergy Clin North Am 2014;34:707-723

 

✓ 鉄欠乏性貧血はコモンな病態。診断・治療などについて精通する必要あり



訴訟の疫学 
Prevalence and characteristics of physicians prone to malpractice claims*5

 訴訟社会アメリカでの実態調査。こんなのを観察研究でやっちゃうところが非常に米国っぽいですが・・・着眼点としては、訴訟される医師と訴訟されない医師を比較した研究は多数あるが、訴訟される医師の分布やどれだけ繰り返しているかなどの実態調査は実はあまりされていないんだそうです。もしかしたら何度も繰り返す医師が多いのでは?
 というわけで、全医者の何%が訴訟を受けているのか、訴訟再発リスクは何かを観察研究で明らかにしようという試みです。
 論文のPECOは、

P:National Practioner Data Bankで2005-2014年までの10年間で訴訟を受けた医師
※65歳以上の医師は除外。引退している可能性あり
E/C:医師の特性を評価
O:訴訟頻度
T:後ろ向き観察研究
結果:
 10年間の訴訟件数6万6426件で、全部で5万4099人の医師が訴えられていた
 これは、1日18件の計算・・・
 全体の82%が男性、年齢では45-54歳が最も多く39%、次いで55-64歳が35%
 専門では、内科 15%、産婦人科 13%、外科 12%、家庭医 11%
 最も少ないのは神経内科や精神科で1%
 都会が全体の87%、田舎は12%程度
 訴訟の原因:死亡が32%、重度の身体障害が38%
 平均で37万1054$=4000万円くらい・・・

 10%の医師が2回以上で全訴訟の32%を占めている
 6回以上という医師が126人いる

f:id:tyabu7973:20160211231751j:plain(本文より引用)

 再訴訟のリスク因子として有意だったのは、過去に訴訟を受けていることで、これは正の相関関係あり。過去1回 HR 1.97、2回 3.11、3回 4.19、5回 6.09、6回 12.39
 専門医では内科を1とすると、脳外科がHR 2.32、整形外科 2.02、外科 2.01と外科系診療科が繰り返すリスク

f:id:tyabu7973:20160211231820j:plain
(本文より引用)

 というわけで、なかなか考えさせられました。都会で外科をやるということはつらいことなんだなあと。あとは繰り返す人っているよね・・・というところでしょうか。


✓ 訴訟を受けるリスクは都会で外科系。繰り返す人は何度も繰り返す可能性あり