栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:扁平疣贅の診断/声帯機能不全の診断/急性期脳梗塞に対する抗血栓療法/心筋梗塞後心室中隔穿孔の診断

MKSAPまとめは、今回もゲストライターC先生!ありがとー。相変わらずの誤字多めですが(笑)さすがです!当直明けでいけなかったのでここで勉強になりました。

扁平疣贅の診断
Diagnose flat warts

❶症例 
  25歳男性が、3ヶ月前から鮮やかで滑らかな瘤が顔面・額・手に出現するとのことで外来を受診された。髭をそる時にヒリヒリする。時間と共に数が増えているが消退したものもある。過去に皮膚疾患の治療歴は無い。
 身体診察ではバイタル正常。皮膚所見は以下。

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(MKSAPより)

 最も可能性の高い診断はどれか?
A.  日光角化症
B.  皮膚線維腫
C.  苔癬様角化症
D.  脂漏性角化症
E.  尋常性疣贅(扁平疣贅)

 ❷扁平疣贅
 本患者は扁平疣贅である。扁平疣贅はHPV感染で発症し、直接/間接接触で伝播する。髭剃りなど正常の皮膚バリアが破壊される程度で温床になる。HPV3・10・28・29が多い。髭剃りの傷は自家接種の原因になり、更に病変が増えることになる。

❸その他の選択肢
日光角化症有棘細胞癌の前癌病変。角化が重合し紅斑様の所見になる。注意し観察しないと見逃す。視診より触診の方が見つけ易い。見える場合は「砂のような」不整な辺縁と周囲の紅斑がある 。
苔癬様角化症:炎症を伴う脂漏性角化症で多発したり集簇したりしない。
皮膚繊維症:ペンの先に付いた消しゴム位の大きさの硬い皮膚結節で、両側をつまむとボタン穴やえくぼのような構造が出来る。成人女性の足に好発するが男性の体幹にも出来る。表面はピンクないし茶色。  
脂漏性角化症:茶色-黒の境界明瞭な丘疹。皮脂成分の多い表面と角質嚢腫で顔に好発するが多発はせず局所に広がっていかないし自然軽快しない。鑑別には生検を要する。

Key Point
✓ 尋常性疣贅はHPV感染による鮮やかで平滑な瘤。外傷や自家接種で伝播する。

Juckett G, Hartman-Adams H. Human papillomavirus: clinical manifestations and prevention. Am Fam Physician. 2010;82(10):1209-1213. PMID: 21121531

 

 

声帯機能不全の診断
Diagnose vocal cord dysfunction

❶症例
 35歳女性。気管支喘息の発作で救急外来を受診。喘息発作で予定外受診が度々あるが、間欠期の診察・肺機能検査では特に問題はない。処方薬は吸入ブデゾニドと吸入アルブテロール。
 身体診察では、中等度の呼吸ストレスがあり、吸気・呼気時に喘鳴を聴取する。T 37.0℃、HR 110bpm、RR 26/min。単音の吸気・呼気喘鳴を中枢気道優位に全肺野で聴取。頻脈以外には心音に特記事項なし。ほかの身体診察に特記所見なし。
 点滴のメチルプレドニゾロンとアルブテロール/イプラトロピウムの吸入治療を受けたが、1時間後でも喘鳴・頻脈・頻呼吸・呼吸窮迫が改善しなかった。SpO2は96%(大気下)。

 本患者で最も適切な対応はどれか?
A.  胸部X線
B.  硫酸マグネシウム点滴
C.  喉頭
D.  レボフロキサシン

 ❷声帯機能不全
  本患者で、次に行うべきは喉頭鏡である。声帯機能不全の患者では、吸気・呼気共に喘鳴、呼吸促迫、不安がある。発作中は気管支喘息と見分けるのが困難である発作が急に始まり急に終わる、喘息の治療に反応しない、頸部違和感が強い、低酸素がない、胸部レントゲンで過膨張ないなどが声帯機能不全の特徴。併存しているともっと判断が難しい。
 喉頭鏡で吸気時に声帯が内反するのが特徴。鑑別診断としてはフローボリューム曲線が有用かもしれない。声帯機能不全では胸郭外気道の狭窄のため曲線の吸気末が短縮されるが、呼気は保たれる。頻回のステロイド投与を避け、声帯機能不全の特異的治療を遅れなく開始する為にも、声帯機能不全という病態を知っている事が重要。治療は会話療法、リラクゼーション、不安/GERなどの原疾患治療になる。

❸その他の選択肢
胸部レントゲン:喘息の初期治療に反応しない、重度の発作、肺炎や心不全など併存疾患の可能性を考慮するとき、気胸を疑うとき、入院時などに必要だがこの症例では不要である。
硫酸マグネシウム点滴:喘息発作の時に考慮するが声帯機能不全には用いない。 抗生剤:適応は無い

Key Point
✓ 声帯機能不全の特徴は、発作が急に始まり急に終わる、喘息の治療に反応しない、頸部違和感が強い、低酸素がないである。

Benninger C, Parsons JP, Mastronarde JG. Vocal cord dysfunction and asthma. Curr Opin Pulm Med. 2011;17(1):45-49. PMID: 21330824

 

 

急性期脳梗塞に対する抗血栓療法
Treat acute ischemic stroke antithrombotic therapy

❶症例

 76歳男性。36時間前に右半身の不全麻痺と発語困難を主訴に救急外来を受診された。既往歴に高血圧と心房細動があり。喫煙歴は45Pack/year。内服はメトプロロール、サイアザイド、アムロジピンワーファリン
 身体診察では、BP 118/62mmHg 、HR 86bpm 不整、RR 16/min、両側の頸動脈雑音を聴取。聴診ではirregularly irregular rhythmでS1強度がバラバラ。神経所見では失語、右視野欠損、右上肢筋力低下。
 採血結果は以下。

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(MKSAPより引用)

 頭部CTで、左側頭葉にMCA還流域の1/3を占める急性期梗塞の所見を認めた。

 この患者の治療で最も適切なのは以下のどれか?
A.  アスピリン
B.  ヘパリン点滴
C.  シンバスタチン
D.  低分子ヘパリン皮下注射

 ❷急性期脳梗塞に対する抗血栓療法
 本患者は、アスピリンを投与されるべきである。急性期脳梗塞の経過で、INRが治療域に達していない事が原因と思われる。IST研究(International Stroke Trial)とCAST研究(International Stroke Trial)の結果から、脳卒中罹患後14日以内では、アスピリン160mg/日以上投与プラセボと比べて再発率と死亡率が減る事が示された。虚血性脳卒中は、禁忌が無い限り全例アスピリン(160mg/日以上)を投与するべきである。梗塞の大きさによって1−4週後に二次予防としてワーファリンへの切り替えを考慮する。  

❸その他の選択肢
点滴ヘパリンと皮下低分子ヘパリン:急性期梗塞の予防には効果が無い事が示されたため不適切である。TOAST研究(Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment)、IST研究からヘパリン類似物質では脳卒中予防の利益を得られない(予防効果より出血リスクの方が上回る)事が証明された。HAEST研究(Heparin in Acute Embolic Stroke Trial)では急性期脳梗塞に対して14日以内にヘパリンを投与してもアスピリン以上の効果が示されなかった。
 急性期梗塞で抗凝固をするのは、①機械弁が入っている場合、②開心術後で心房細動による小梗塞がある、③頸動脈解離の場合である。
シンバスタチン:LDLコレステロール値が正常のため本症例では非適応である。SPARCL-trial(Stroke Prevention by Aggressive Reduction in Cholesterol Levels )ではLDLが100以上の患者の二次予防に、高用量スタチンをする事の有益性を示したが、脳梗塞発症1ヶ月後という限界がある事に留意が必要である。
※ 2013年のACC/AHA の心血管リスク評価ガイドラインでは、●動脈硬化性CVD、LDL>190、●CVDのない40-75歳のDMでLDL70-189、CVDのないDMで10年CVDリスク>7.5% に対するスタチンの有効性があると結論したためCも正解となり、不積雪問題になった。(PMID:4222018)。

Key Point
✓ 虚血性脳卒中は禁忌が無い限り全例アスピリン(160mg/日以上)を投与する。

Sandercock PA, Counsell C, Gubitz GJ, Tseng MC. Antiplatelet therapy for acute ischaemic stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2008;(3):CD000029. (PMID: 18646056)

 

 

心筋梗塞心室中隔穿孔の診断
Diagnose postinfarction ventricular septal defect

❶症例

  70歳女性が左室前壁のSTEMIで入院。症状は入院3日前から始まり、病院受診前に自然軽快していた。
 救急外来に到着した2時間後に、急に呼吸不全と低血圧を認め挿管。ポータブル胸部X線では心拡大と肺鬱血を認めた。血圧維持のためドパミン投与を開始。
 身体所見では、BP 90/60mmHg、HR 120bpm、RR 12/min、胸骨左右縁にスリルを伴う4/6の汎収縮器雑音。S3・S4は聴取しない。両肺肺底部にcracklesを聴取する。

 本患者で最も可能性の高い診断はどれか?
A.  大動脈解離
B.  自由壁破裂
C.  右室梗塞
D.  心室中隔穿孔

 心筋梗塞心室中隔穿孔

 本症例は、心筋梗塞後の心室中隔穿孔が最も疑わしい。受診の遅れたSTEMIの後に、急性の呼吸困難になり胸左縁で汎収縮器雑音を聴取。心室中隔穿孔か急性MRの所見であるが、雑音の場所とスリルを触れるという事から心室中隔穿孔をより強く疑う。LRシャントのため右心系の容量負荷になり急激に心原性ショックになる。緊急手術か経皮的インターベンションをしないと致死的である。

 ❸その他の選択肢
大動脈解離:下壁梗塞に合併する事が多い。診察では血圧左右差、拡張期雑音。
左室自由壁破裂:心タンポナーデになりPEAから死に至る。若年、女性、初回の梗塞、前璧梗塞がリスク。汎収縮期雑音は自由壁破裂には合わない。
右室梗塞:低血圧、肺音清、頚静脈怒張がある。前壁梗塞で右室梗塞が起こるのは稀。MRはMIの後期合併症で新規の汎収縮器雑音が聞かれる。虚血による乳頭筋破裂や腱断裂がMRの原因として最も多く「虚弱なM弁」とも呼ばれる。肺動脈カテーテル検査では逆流のため左室へ行き来する血液が増加し、PAWPで永続性V波が認められる。エコーで正確にVSDとMRは鑑別可能。

Key Point
✓ 梗塞後の心室中隔欠損は胸骨左縁の汎収縮器雑音が特徴で、発症数日後に起こる。

Poulsen SH, Praestholm M, Munk K, Wierup P, Egeblad H, Nielsen-Kudsk JE. Ventricular septal rupture complicating acute myocardial infarction: clinical characteristics and contemporary outcome. Ann Thorac Surg. 2008;85(5):1591-1596. PMID: 18442545

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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