栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:ラクナ梗塞の病歴/右心内血栓/気胸の原因

今週のカンファまとめました!
冬だけに血管系の話題が多いですね。

ラクナ梗塞の病歴 History of small vessel disease

 脳梗塞の病型分類は日々勉強なのですが、今回はTime courseについて考える機会がありました。これは以前当ブログでもまとめておいたので、TOAST分類あたりをだしておきます。

tyabu7973.hatenablog.com

今回取り扱うTime courseは皆様どのように理解していますでしょうか?
・Sudden=塞栓症
・階段状の進行=アテローム・ラクナ
みたいなイメージでしょうか?

 この階段状の進行も実はラクナ・アテロームで時間経過が異なるというのが今回のポイントです。ラクナ(small vessel)とアテローム(large vessel)では症状が動揺する時間経過が異なるとされています。以下Uptodateの図がまとまっていましたので、一部引用します。

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(Uptodate:Lacunar infarctsより

 個人的には、ラクナ症候群が入院中に悪化するという疾患群であった(Stroke. 2002;33(6):1510.)ことに今更ながら気付かされました。入院中に進行するとアテロームか?と思っていたのですが、ラクナの場合には数時間から数日の経過で症状が動揺するのが特徴で、アテロームの場合には数分〜数時間の間に症状が動揺するのが特徴的なんだそうです。ラクナの方が少し長い時間かけて動揺するのは知りませんでした。機序はあまり明確ではないようですが、知っておいて良い知識だと思います。もちろん、進行するラクナの場合にBADが隠れている可能性はありますが。

 ✓ ラクナ梗塞でも入院後症状が動揺することは多い

 

 

右心内血栓 Thrombi in the right heart

 心臓内血栓で有名なのは、心房細動の左房内血栓心筋梗塞などの心収縮能低下患者の左室内血栓などですが、今回は右心内の血栓についてでした。右心内は正直それほど多くは出会わないのですが、過去の文献をちらっと読んでみました。
 右室内血栓については、その多くがcase report程度に留まっており、まだまだ一定の見解や治療法は得られていないのが現状ですが、2008年のAngiology. 2008 Aug-Sep;59(4):415-20.がよくまとまっていました。
 
 Introductionから概要を抜粋すると、右心内血栓が見られるときは、明らかなmassive PEの時が多いとされています。また、浮動性のtype Aと可動性の少ないtype Bがあり、type Aは深部静脈から飛んでいく際にトラップされた可能性が高いとされており、type Bは中心静脈カテーテルやペースメーカーワイヤーなどの関与が疑われています。

 type Aの場合には、死亡率は 42%と高いことが報告され、一般的な肺塞栓症よりも予後が悪い因子として知っておく必要があります。一方でtype Bは肺塞栓合併が40%程度で見られるものの、死亡率は高くないと言われています。治療法はまだまだ検証が必要ですが、手術か血栓溶解療法がスタンダードで、ヘパリンのみだと死亡率が3倍高かったという報告があります。

 ✓ 右心内血栓は主に肺塞栓症に合併することが多く、予後不良のサインである

 

 

気胸の原因 Secondary spontaneous pneumothorax

 最近続発性が続いたので、備忘録的に。気胸原発性が多いですが、肺の基礎疾患がある方に起こる場合には続発性気胸と呼びます。続発性の場合には再発が多いことも報告されており、VATSや手術・胸膜癒着術などによる再発予防治療が必要になることも多いです。
 
 最も多いのは、COPD嚢胞性線維症(CF)・肺悪性腫瘍・壊死性肺炎・月経随伴性気胸などが比較的よくある原因です。それ以外の稀なものだと、強直性脊椎炎・喘息・肺ランゲルハンス細胞組織球症・間質性肺炎・リンパ脈管筋腫症・Birtt Hogg Dube症候群・Sjogren症候群・Marfan症候群・転移性肉芽腫・関節リウマチ・サルコイドーシスあたりは症例報告がある模様です。この中で、日常診療で日本で多いのが、COPD・肺悪性腫瘍・壊死性肺炎でしょうか。

 COPDは、続発性気胸の中では最も頻度が多く、50-70%を占めると言われています。ブラが破裂することが主な原因で、COPDの重症度が高まると気胸を起こしやすくなります。
 肺悪性腫瘍は、原発でも手にでも気胸を合併することがあります。続発性気胸の168例の疫学調査では16%をしめたという報告があります。腫瘍壊死や気管支内閉塞によるエアトラッピングが原因では?と言われているそうです。
 壊死性肺炎の原因として、通常の細菌感染以外に、Pneumocystis jiroveiiや結核なども原因になり得ます。細菌感染では、黄色ブドウ球菌・Klebsiella・Pseudomonas・肺炎球菌・嫌気性菌などが起因菌になります。上記疫学調査では原因の11%を占めました。

 ✓ 気胸を見たときに続発性の要素も考慮して基礎疾患がないかを考えよう