栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACPJC:Therapeutics 心血管疾患を合併した2型糖尿病患者では、エンパグリフロジンが3.1年後に心血管イベントを減らす

ACPJCでも取り上げられていました。
さてさて、どんな評価になりますことやら。 

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Empagliflozin, cardiovascular outcomes, and mortality in type 2 diabetes.

Zinman B, Wanner C, Lachin JM, et al; EMPA-REG OUTCOME Investigators. 

N Engl J Med. 2015;373:2117-28.


臨床上の疑問:
 2型糖尿病患者で心血管疾患を合併した患者に、通常治療に加えてエンパグリフロジンを追加すると心血管イベントが減るか?


方法:
①デザイン:ランダム化比較試験、プラセボ対照、非劣性試験(EMPA-REG OUTCOME trial)。
②割り付け:隠蔽されている。
③盲検:盲検化されている(患者・医師・データ収集者・アウトカム評価者・データ解析者等)
④フォロー期間:
平均3.1年
⑤セッティング:
42ヵ国、590センター
⑥患者:7028人の18歳以上の2型糖尿病患者(平均 63歳、男性 71%)で、心血管疾患を合併し、BMI≦45、eGFR≧30ml/min、12週間以上血糖降下薬が変更なくHbA1c>7%かつ≦10%、過去12週間血糖降下薬使用なくHbA1c≦9%、2週間のrun-in-periodあり。
⑦介入:エンパグリフロジン 10mg/日(n=2345)、エンパグリフロジン 25mg/日(n=2342)、プラセボ(n=2333)。
⑧アウトカム:プライマリアウトカムは、心血管死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合アウトカム。セカンダリアウトカムは、プライマリアウトカムと不安定狭心症入院の複合アウトカム。全死亡や副作用も報告された。
⑨患者フォローアップ:97%フォローアップ、modified ITT解析

結果:

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(本文より引用)

結論:
 2型糖尿病患者で心血管疾患を合併した患者に、通常治療に加えてエンパグリフロジンを追加すると心血管イベントが減った

  ACPJCのコメントは大変勉強になるので、今回は全文掲載!

 EMPA-REG OUTOCOME試験の結果は非常に魅力的だが、実際の診療を変えるにはまだ十分とは言えない。現在糖尿病の有病率は多くの国で10%前後と言われており、今後10-20年間で増加すると言われている。
 糖尿病患者の主な死因は、心疾患などの大血管病変である。2型糖尿病患者の血糖を厳密に管理することは、微小血管病変を減らしたが心血管疾患を減らすという結果は確定的ではない。そんな中、EMPA-REG OUTCOME試験で、エンパグリフロジンがHbA1cを下げ、心血管死亡を減らしたという結果は非常に重要。では、なぜ現時点で通常治療にエンパグリフロジンを追加しないのか?

 第一に、糖をコントロールすることが今回の結果の主要なメカニズムではないことが示唆されている。これは心血管死亡に対する効果が非常に早く、血糖コントロール管理だけでは早期の効果を説明できないため。
 第二に、このハイリスクな心疾患合併患者の23%がスタチンを内服していなかったことが挙げられる。また、スタチン用量の記載もない。基本的には、心血管死亡に対する効果は、通常治療にエンパグリフロジンを追加することよりも、適切な高用量スタチン治療の方が十分検証されている
 第三に、用量反応性が証明されていない。
 第四に、安全性アウトカムは問題ないようだが、過去の薬も重篤な副作用が影響で市場から姿を消しており、まだ十分な検証とは言えない。

 EMPA-REG OUTCOME試験の結果は、製薬企業からの資金提供がない調査者によって再評価され、再現されるべきである。それをもって初めて、糖尿病治療の心血管疾患に対する効果のパラダイムシフトと言えるだろう。

 

ということで・・・
ややこじつけ感はありますが、個人的な意見は最期の三行に集約されています。
再検証楽しみっす。