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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:男性性腺機能低下の診断/重症患者での延命治療/便秘患者の警告症状/CKD関連貧血

MKSAP 内分泌 高齢者 集中治療 緩和 消化器 腎臓 血液
MKSAPまとめです。もうC先生コーナーとします、これ(笑)。
自分ももう一回解きながら勉強になりますねえ。

男性性腺機能低下の診断
Diagnose male hypogonadism

❶症例 
  35歳男性、2ヶ月前からの性欲減退で受診。思春期経過は正常。家族歴に特記事項なし。週2杯ビールを飲酒。内服薬なし。
 身体診察では、バイタル正常、BMI23。視野検査は正常、精巣の大きさは正常。女性化乳房なし。
 採血所見は以下。

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(MKSAPより)

 最も適切な診断のための検査はどれか?
A.  フェリチン、鉄飽和度
B.  早朝の遊離テストステロン値
C.  早朝の総テストステロン値
D.  精巣の超音波

 ❷男性性腺機能低下
 本患者では早朝の総テストステロン値測定が最も適切である。内分泌学会ガイドラインでは、性腺機能低下の初期評価は早朝総テストステロン測定であり、もし異常であれば、二次性性線機能低下の検索の前に早朝テストステロン値を再検すべきであるとしている。この推奨は、多くの過去の研究から、テストステロン値は日によっても、時間によっても変動があるのが一般的で、早朝の総テストステロン値が最も正確に、患者のアンドロゲンの状態を反映することが分かっているからである。

❸その他の選択肢
フェリチン・鉄飽和度:本患者では性腺機能低下症が確定したわけではないので、性腺機能低下の原因としてのヘモクロマトーシスを除外するための鉄動態評価は適切ではない 。
早朝の遊離テストステロン値:遊離テストステロン検査は概して正確性を欠くため、平衡透析法で遊離テストステロンを測定しない限り性腺機能低下の診断には推奨されない。更に本症例は、肥満や高齢など性ホルモン結合蛋白(SHBG)に影響を及ぼし総テストステロン値の正確性が低くなるようなリスクがない。よって、遊離テストステロンを測定する理由が無い。
精巣超音波:精巣超音波は性腺機能低下の診断には使われない。精巣の体積を知るには診察で十分。

Key Point
✓ 男性の性腺機能低下の評価では、まず初めに早朝の総テストステロン値の測定を確認。

Bhasin S, Cunningham GR, Hayes FJ, et al; Task Force, Endocrine Society. Testosterone therapy in men with androgen deficiency syndromes: an Endocrine Society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95(6):2536-2559. PMID: 20525905 

 

 

重症患者での延命治療
Manage life-sustaining care in a critically ill patient

❶症例
 82歳男性が肺炎、敗血症、AKIで2日前に入院した。既往歴に再発性肺癌があり過去に肺葉切除も行われたが、その後副腎転移がある。入院後尿が出ていない。今朝から血清カリウム値が7.2mEq/Lと高値で、心電図上の変化もある。明らかに透析の適応ではある。患者は意思表示が出来ず、妻が代理意思決定者である。妻は、患者が肺癌で余命が短いことを知っており、機械に繋がれてまで長く生きながらえたくないと言っていたと話した。ただし、3週後にある孫の大学の卒業式に出席したがっていた。妻は透析に同意している。
 身体所見では、T 38.1℃、BP 110/64mmHg、HR 112bpm、RR 28。

 本患者で最も適切な対応はどれか?
A.  維持血液透析を開始する
B.  一時的な血液透析を開始する
C.  全ての延命治療を中止する
D.  透析を行わず内科治療を行う

 ❷重症患者での延命治療
  本患者では、長期的に透析が必要かどうかは分からないが、与えられた情報からは、最良の選択肢は、まずは透析を行って、今後腎機能が回復することを期待する、あるいは長期の透析を行うかの意志決定を患者自身が出来るような回復を目標とすることである。透析を開始し、状態が改善しなかったら中止するという選択肢をとるのは困難かもしれないが、孫の卒業式に参加したいという短期的目標達成の為にも、機械に依存したくないという長期的目標達成の為にも、Bが最良の選択肢だろう。文化や信教などにより治療の差し控えに関する考え方は多様であろうが、法的・倫理的観点からは生命維持の治療を中止する事と開始しない事に大きな違いはない。介入を中止出来ない事を恐れて差し止めるべきではない。

❸その他の選択肢
維持血液透析維持透析に伴う長期カテーテル留置は患者の腎機能の事を考えると合理的ではあるが、長期に機械に繋がれたくないという患者の希望に反する。
全ての延命治療を中止する:全ての治療を差し止める事は、患者の希望にも家族の希望に沿うものではないが、年齢・併存症、疾患重症度を元に予後を予測し、妻や家族に伝える必要がある。透析を含む医療介入を最大限に行ったとしても生存退院は困難であろう事を説明しなければならない。
透析を行わず内科治療を行う:透析を差し控えると機械に繋がれないという希望は叶えられるが、生存は不可能である。透析が必要になる期間が予想しづらいため、機械に「長期間に」繋がれたくはないという望みに反するかどうかは難しい問題である。癌の予後はかえられないが孫の卒業まで生きていたいという短期的希望を叶えうるため「無駄」とは言えない。

Key Point
✓ 法的、倫理的観点で考えると、治療を中止する事と開始しない事に大きな違いはない。中止出来ないこよを恐れて、介入自体を差し控えるべきではない。
※注意:米国の問題集の見解です

Snyder L; American College of Physicians Ethics, Professionalism, and Human Rights Committee. American College of Physicians Ethics Manual: sixth edition. Ann Intern Med. 2012;156(1 Pt 2):73-104. PMID: 22213573 

 

 

便秘患者の警告症状
Manage constipation in a patient with alarm features

❶症例

 42歳女性、3ヶ月前からの新規発症で悪化傾向のある便秘で受診。以前は排便習慣に問題なく、1日1回の排便があったが、現在は4-5日に1回程度になっており、便柱狭小化も見られる。痔核の既往は無いが1ヶ月前に便に血液が付着していた。排便時痛はない。食事の変化もなく新規に飲み始めた薬剤も無い。体重減少なし。甲状腺機能低下でレボチロキシンを飲んでいる。大腸の癌やポリープの家族歴はない。
 身体所見では、BP 110/70mmHg、HR 73bpm、腹部診察は特記所見なし。直腸診では弛緩/収縮時の筋緊張は正常。排便刺激時には恥骨直腸筋は正常に収縮する。腫瘤はない。診察した指に血液が付着。CBC、血糖、カルシウム、甲状腺機能は正常。

 この患者の管理で最も適切なのは以下のどれか?
A.  食物線維を摂取
B.  遊離T3測定
C.  肛門圧測定
D.  大腸内視鏡検査
E.  便潜血検査(グアヤック法)

 ❷便秘患者の警告症状
 本患者は、比較的急速に排便週間が変化しており、便に血液の付着もあるため、大腸内視鏡検査を行うべき警告症状である。他の警告症状としては、体重減少、大腸癌家族歴、50歳以上で発症する便秘などがある。  

❸その他の選択肢
食物線維:食物繊維は警告症状の無い便秘には推奨されるが、本症例では警告症状に対する更なる精査が推奨されるため不適切である。
遊離T3測定:甲状腺機能低下の既往はあるが治療を受けており、TSH正常なので甲状腺機能低下はないと判断する。また、甲状腺機能低下では血便はない。
肛門圧測定:肛門圧測定は骨盤底筋機能不全のある患者では適応になるが、本症例ではそういった臨床症状(排便時のdigitationや肛門周囲で通過が妨げられている感覚)や身体所見(恥骨直腸筋や外肛門括約筋の発作的な収縮)は無い。
便潜血検査:肉眼的な血便が既にあるためグアヤック法を今更行う適応は無い。陰性であっても偽陰性が多い。

Key Point
✓ 警告症状(50歳未満、体重減少、直腸出血、排便習慣の突然の変化、大腸癌家族歴)を伴う便秘患者では大腸内視鏡検査を行うべきである。

Spiller RC, Thompson WG. Bowel disorders. Am J Gastroenterol. 2010;105(4):775-785. PMID: 20372130 

 

 

CKD関連貧血
Manage anemia associated with chronic kidney disease

❶症例

  55歳女性が、定期外来を受診。3年前からCKDで定期通院している。1年前から倦怠感が増強。息切れや呼吸困難はなし。内服薬は、リシノプリル、フロセミド、酢酸カルシウム、硫酸第一鉄、マルチビタミンである。
 身体診察では、BP 100/70mmHg、HR 76bpm、RR 14/min、BMI 30。腹部診察は正常。便潜血は陰性だった。採血結果は以下。

f:id:tyabu7973:20160220225425p:plain(MKSAPより)

 本患者の対応で最も適切なのはどれか?
A.  アスコルビン酸
B.  ESA製剤
C.  輸血
D.  鉄剤注射

 ❷CKD関連貧血

 本症例は、CKDによる貧血でありESA製剤の適である。ステージ3/4のCKDではエリスロポエチン低下により貧血が進行する。放置するとQOL低下、左室肥大、冠動脈合併症と関連すると言われている。Hb10以下の場合はESA製剤を開始するが、治療前にIDA、ヘモグロビン症、VB12欠乏、葉酸欠乏、消化管出血の鑑別が必要である。Hbを正常値まで補正すると冠動脈疾患の発症リスクがあるため、Hbは12を超えないように調節する。FDAは透析導入前でHb<10の患者に10−11を目標に治療するよう推奨している。

 ❸その他の選択肢
アスコルビン酸アスコルビン酸は経口の鉄吸収を亢進させるが、費用対効果や消化管合併症を超える有効性があるかは不明。
輸血:輸血は胸痛や神経合併症等の重度の組織虚血がない限りは回避すべき。輸血でHLA抗原が感作され、腎臓移植を検討するために問題になることもあるため注意が必要である。
鉄剤注射:本患者の鉄は充足しているため、経口から点滴にスイッチしても貧血の改善には繋がらないうえに、アナフィラキシーのリスクがあるため控えるべきである。

Key Point
✓ CKD関連貧血では、Hb10以下の場合はESA製剤の適応になる。但し、IDA、ヘモグロビン異常症、VB12欠乏、葉酸欠乏、消化管出血を鑑別する。

U.S. Food and Drug Administration. FDA modifies dosing recommendations for erythropoiesis-stimulating agents. FDA News & Events Web site. Available at www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm260670.htm. Updated June 24, 2011. Accessed July 23, 2012.

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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