栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:cluster RCT 気道感染への抗菌薬不適切使用への介入

気道感染への抗菌薬不適切使用への介入
Effect of behavioral interventions on inappropriate antibiotic prescribing among primary care practices

JAMA. 2016;315(6):562-570.  

【背景】
 行動科学に基づいた介入が不適切な抗菌薬処方を減らすかもしれない
【目的】
 行動科学的手法の効果と急性呼吸器感染症で臨時受診した患者さんに対する不適切な抗菌薬処方の頻度を評価する
【デザイン/セッティング/患者】
 ボストンとロサンゼルスの47箇所のプライマリケア医でクラスターRCTが施行された。248人の医師が組み入れられ、18ヶ月間0、1、2、3の介入にランダムに割り付けられた。組み入れ時に全ての医師に抗菌薬処方のガイドラインが教育された。介入は2011年11月1日から2012年10月1日まで。フォローアップは2014年4月1日まで続いた。合併症や感染症併存成人は除外された
【介入】
 3つの行動科学的介入が行われた。
1つめは「代替法の提案」で抗菌薬を処方しようとすると、抗菌薬以外の治療法が提案される方法
2つめは「処方理由の確認」
で抗菌薬を処方しようとすると処方理由をフリーテキストで記載しないと処方できないようにする方法
3つめは、「他者との比較」
で医者に抗菌薬の不適切処方ワースト3を月に1回メールするという方法である。
 介入はオーバーラップすることもあり。

【アウトカム】
 メインアウトカムは、介入前18ヶ月と介入後18ヶ月の抗菌薬適応でない疾患(非特異的上気道炎、急性気管支炎、インフルエンザ)に対する抗菌薬処方率である。
【結果】
 14753人の患者(平均年齢47歳、女性 69%)が介入前に来院され、16959人(平均年齢48歳、女性 67%)が介入期間に来院された。コントロール群では、介入前の不適切抗菌薬処方率が24.1%で介入期間は13.1%に減少した。「代替法の提案」群では、22.1%から6.1%に減少し、コントロール群との差は-5.0%(-7.8 to 0.1%)だった。「処方理由の確認」群では、23.2%から5.2%に減少し、コントロール群との差は-7.0%(-9.1 to -2.9%)だった。「他者との比較」群では、19.9%から3.7%に減少し、コントロール群との差は-5.2%(-6.9 to -1.6%)だった。それぞれの介入毎の有意差は認めなかった。

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(本文より引用)
【結論】
 プライマリケア領域では、行動科学として「処方理由の確認」と「他者との比較」の手法が急性気道感染症に対する不適切抗菌薬処方を減らす効果があった。

【批判的吟味】
・いつもの通り論文のPICOから
P:47プライマリケア施設の248人の医師が診療した急性呼吸器感染症の外来患者さん
I/C:①コントロール群、②「代替法の提案」群、③「処方理由の確認」群、④「他者との比較」群の4群にランダムに割り付け。
※全例に抗菌薬処方のガイドライン教育あり
O:急性呼吸器感染症に対する不適切処方率
T:クラスターRCT
医者の平均年齢 48歳、男性37%で医者になってから18年くらい経っているベテラン対象の研究。専門は内科60%、家庭医 13%、NPさんが19%含まれています。結構ベテラン対象!
・患者さん平均年齢も48歳、男性33%、保険がPrivateが59%でMedicareが14%でした。
・実際に本当に抗菌薬が不要だったかを確認するために、抗菌薬が処方されなかった症例の20%をランダムにピックアップし、細菌感染が隠れていなかったかを検証し、細菌感染が疑われる症例は約0.3-0.4%程度
・筆者らは介入医師の数がまだまだ少ないこと、データがカルテデータのみなので不完全なこと、介入がオーバーラップしている部分がありそれぞれの効果のみを十分検証できていないこと、この介入によって害が出ないかの検証が不十分、抗菌薬の中身(ペニシリンなのかニューキノロンなのか)は評価していない、深い意味での行動変容につながったか、長期持続効果はどうかなどは検証されていません。
【個人的な意見】
 それにしてもなかなか興味深いです。少なくとも個々の臨床医へのフィードバックだけでは行動変容に繋がらないのは今までの経験からも納得できます。少なくとも何かしらの仕組みは作る必要がありますね。もちろん恐怖政治はいけませんが。しかしまあよく平均48歳の医師にこれやったなあ。ちょっと怖いです(笑)。

✓ 抗菌薬処方を適正化するために行動変容的仕組みが重要で、処方理由を確認することと他者と比較することが有用だった