栃木県の総合内科医のブログ

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ACPJC:Etiology 高血圧患者で非心臓手術を予定している患者では、長期間のβ遮断薬治療が周術期の主要心血管イベント(MACE)や死亡を増やす

ACPJCです。

β遮断薬と周術期という話題です。

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β-blocker-associated risks in patients with uncomplicated hypertension undergoing noncardiac surgery.

Jørgensen ME, Hlatky MA, Køber L, et al.

JAMA Intern Med. 2015;175:1923-31.


臨床上の疑問:
 高血圧患者で非心臓手術を予定している患者では、長期間のβ遮断薬治療が周術期の主要心血管イベント(MACE)や死亡と関連するか?


方法:
①デザイン:国民データベースと連動した観察研究。
セッティング:デンマーク
③患者:55320人の20歳以上の成人(平均66歳、59%が女性)で高血圧がある患者(ベースに2種類以上の降圧薬:β遮断薬・RAS系阻害薬・カルシウム拮抗薬・利尿剤)で、非心臓手術を受ける患者が組み入れられた。
 除外基準は、肝疾患・腎障害・心血管疾患合併・ソタロール内服中・降圧薬を4種類全て内服している患者。
④危険因子:手術120日以上前から、β遮断薬・RAS系阻害薬・カルシウム拮抗薬・サイアザイド系利尿薬投与を比較。
⑤アウトカム:術後30日以内のMACE(心血管死亡・非致死的脳卒中・非致死的心筋梗塞)と死亡率。

結果:
 RAS系阻害薬+サイアザイドと比較して、β遮断薬に加えたRAS系阻害薬・カルシウム拮抗薬・サイアザイド利尿薬それぞれの併用は、MACEと死亡率と正の相関を示した

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(本文より引用)

結論:
 高血圧患者で非心臓手術を予定している患者では、120日以上前からのβ遮断薬治療が周術期の主要心血管イベント(MACE)や死亡を増やした

 これは結構びっくりな結果。コメントを読んでみると、最近非心臓手術時にβ遮断薬を開始することはcontroversyで、周術期にβ遮断薬を開始することは全死亡や心血管イベントを増やすことが知られていて、これは低血圧や徐脈による影響では?と考えられてきています。β遮断薬によって心筋梗塞や上室性頻拍は減る模様ですが。

 現行のガイドラインでは周術期にもβ遮断薬の継続を勧めていますが、長時間内服中の患者さんにどうしたら良いかは良く分かっていませんでした。今回、他の降圧薬と比較してβ遮断薬を長期に内服している患者の全死亡とMACEが増えるという結果になりました。これは、そもそもは観察研究の限界で、β遮断薬を長期に飲むような患者さんは、心疾患罹患リスクが高く、周術期死亡も高いというバイアスがあるとも言えます。まあ一応ベースラインは変わらないのですが・・・                                   

 まあそもそも高血圧の第一選択ではないですしね。ますます周術期どうしたら良いかは分かりませんが、現時点でプラクティスを変えることにはならないでしょう。

極論で語る循環器内科 第2版

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