栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RCT 高齢男性に対するテストステロン治療の効果

高齢男性に対するテストステロン治療の効果
Effects of testosterone treatment in older men*1

N Engl J Med 2016; 374:611-624

【背景】
 男性の血清テストステロン値は加齢に伴って低下するが、テストステロン値を上昇させることが有効かどうかはよく分かっていない
【方法】
 血清テストステロン値が275ng/dL未満で、アンドロゲン低下を示唆する症状がみられる65歳以上の高齢男性790人を、テストステロンゲル群とプラセボゲル群にランダムに割り付け1年間フォローした。被験者は、性機能検査・身体機能検査・バイタリティ検査の3検査のうち1つ以上を行った。それぞれの検査のプライマリアウトカムは、全ての患者で評価された。
【結果】
 テストステロン塗布により、血清テストステロン値は、19-40歳男性の正常値まで増加した。テストステロン値上昇は、日常性心理質問票で評価した性的行為を有意に増加させ、性的欲求と勃起機能も有意に増加させた。6分間歩行距離が50m以上延長した男性は、身体機能検査を受けた2群では有意差は認められなかったが、3試験全体では有意差が認められた(テストステロンゲル群 20.5% vs プラセボゲル群 12.6%)。テストステロンは、慢性疾患治療機能評価の疲労スケールでは、バイタリティには有意な効果はなかったが、テストステロンゲル群は、プラセボゲル群と比較して、わずかに気分が改善し、抑鬱症状の重症度が改善した。有害事象は両群で差を認めなかった。

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(本文より引用)

【結論】
 65歳以上のアンドロゲン低下症状がみられる男性では、中程度に低いテストステロン値を1年間で19-40歳男性の正常値まで上昇させることで、性機能には中等度の有用性・気分と抑鬱症状には若干効果があったが、活力と歩行距離に有用性は認められなかった。テストステロン治療のリスクについては、参加者数少ないため結論が出せなかった。


【批判的吟味】
・いつも通り論文のPICOから
P:65歳以上でアンドロゲン低下症状を認め、血清テストステロン値275ng/dL以下の高齢男性
I:テストステロンゲル塗布群
C:プラセボゲル塗布群
O:性機能検査・身体機能検査・バイタリティ検査の3検査(3/6/12ヶ月時点)
T:RCT/ITT解析
・デザインとしては、二重盲検、RCTでITT解析あり
・51085人にスクリーニングをかけて790人が組み入れられているので、かなり除外されています。
・テストステロンは2回測定されており、そもそもテストステロン値が低い人は全体の14.7%しかいませんでした。
・肥満 62.9%、高血圧 71.6%、心筋梗塞既往 14.7%
・過去の研究で心血管リスクが報告されていましたが今回は関連はっきりせず。本文にも書いてありますが、イベント発生は少なすぎます。
【個人的な意見】
 経皮的な吸収って結構しっかり効くんだなあとあらためてびっくりしました。症状もあってテストステロンも低いなら良いかもしれませんが、実際に最近よく言われているほどの頻度はないんだろうとも感じました。

✓ 高齢者で低アンドロゲン症状のあるテストステロン低値の男性にはテストステロンゲルが、12ヶ月後の性機能検査と身体機能検査がプラセボより良好である