栃木県の総合内科医のブログ

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ACPJC:Clinical Prediction Guide 心房細動患者ではCHADS2やCHADS2-vascよりもATRIAスコアが良い?

ACPJC今月はちょっと不作。でもこれは興味深いです。

ATRIAスコアに要注目!

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Comparative performance of ATRIA, CHADS2, and CHA2DS2-VASc risk scores predicting stroke in patients with atrial fibrillation: results from a national primary care database. 

van den Ham HA, Klungel OH, Singer DE, Leufkens HG, van Staa TP.

J Am Coll Cardiol. 2015;66:1851-9.


臨床上の疑問:
 心房細動患者でワーファリンを内服していない患者では、3つのスコアのどれがより正確に心原性塞栓を予測するか?


方法:
①デザイン:国民データベースの観察研究で、Clinical Practice Research Datalink(CPRD)とHospital Episode Statistics(HES)データベースを利用。
セッティング:英国のプライマリケアのデータ
③患者:60594人の18歳以上の成人(平均74歳、51%が男性、平均フォローアップ 2年)で、1998年1月から2012年1月までに新規に心房細動と診断された患者を最初に脳梗塞を発症するまで、最初にワーファリンが処方されるまで、データフォロー終了までフォローアップした。
 除外基準はリウマチ性僧帽弁狭窄症や人工弁。
④予測スコア:ATRIAスコアとCHADS2スコア・CHA2DS2-vascスコアが検証された。ATRIAスコアは、Anticoagulation and Risk Factors in Atrial Fibrillationの略で、eGFR<45または末期腎不全、蛋白尿、高血圧、うっ血性心不全、糖尿病、女性、年齢が含まれる。
⑤アウトカム:CPRDまたはHESで脳梗塞と記録された患者。

結果:
 3751人(3%/年)に脳梗塞が起こった。ATRIAスコアは、CHADS2やCHA2DS2-vascスコアよりも正確に脳梗塞を予測した。再分類による予測能は、ATRIAとCHADS2スコアでは14%改善し、ATRIAとCHA2DS2-vascは23%改善する。

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(本文より引用)

結論:
 心房細動患者でワーファリンを内服していない患者では、3つのスコアの中でATRIAスコアがより正確に心原性塞栓を予測する。

 これはなかなか興味深いデータです。結果の部分を見るとATRIAスコアはリスク分類でlowになる割合が40%と高いことが分かります。一方、ガイドラインで推奨されているCHA2DS2-vascは、lowがわずかに6.6%。同じ患者群を見ていてもこれだけ変わってしまうと、過剰治療の問題が出てきます。
 見えてくるのは、CHA2DS2-vascでつけると処方することになる、ATRIAでつけると処方しないことになる・・・かもという現実でしょうか。
 
 一方、コメントでも実臨床で問題になるのはunderuseだよね、と指摘しています。これはSTART criteriaにも含まれているくらいですものね。まあ、現時点ではすぐにATRIAに飛びつくという感じでは内ですが、年齢・脳卒中が最も重要な予測因子であることはもう一度押さえておく必要がありそうです。

プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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