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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:甲状腺クリーゼ診断基準/鉄吸収に影響する因子/塩酸モルヒネ開始量

カンファ 内分泌 診断 薬剤 血液 緩和

今週のカンファ。中身盛り沢山でした!

甲状腺クリーゼ診断基準 Diagnostic criteria for thyroid storm

 甲状線機能亢進症で症状ばりばりの方が来た時にふとよぎるのが甲状腺クリーゼですよね。診断基準は実は様々です。この辺りはいつも思うのですが、日本の基準と海外の基準が独立して存在することがありますね。せっかくなので、見比べてみようと思います。
 まずは、本邦の日本甲状腺学会のガイドラインから。これは以下のHPから無料でダウンロード可能です。http://www.japanthyroid.jp/doctor/img/crisis2.pdf

 甲状腺クリーゼの診断基準(第2版) 2008年

①必須項目
甲状腺中毒症の存在(遊離T3および遊離T4の少なくともいずれか一方が髙値)
②症状
 1.中枢神経症状(不穏・せん妄・精神異常・傾眠・けいれん・昏睡・ JCS 1以上またはGCS14以下)

 2.発熱(38℃以上)
 3.頻脈(130回/分以上)※心房細動では心拍数で評価
 4.心不全症状(肺水腫・肺野の50%以上の湿性ラ音・心原性ショック・NYHA ⅣまたはKillip Ⅲ以上)
 5.消化器症状(嘔気・嘔吐・下痢・黄疸:T-Bil>3mg/dL)

確実例:必須項目および以下を満たす
 a.中枢神経症状+他の症状項目1つ以上
 b.中枢神経症状以外の症状項目3つ以上
疑い例:
 a.必須項目+中枢神経症状以外の症状項目2つ
 b.必須項目を確認できないが、甲状腺疾患の既往・眼球突出・甲状腺腫の存在があって、確実例症例のaまたはbを満たす場合
※高齢者は高熱・多動などは起こさない可能性があることに注意。

 これ見ると、JCS1と判断した甲状線機能亢進症は実はもうリーチかかってます!
 さて、お次はちょっと古いですが、1993年にBurch and Wartofskyが提唱したスコアリングシステムです。

 Diagnostic criteria for thyroid storm(Burch & Wartofsky)

①体温調節障害
体温:
 37.2-37.7℃            5点
 37.8-38.2℃            10点
 38.3-38.8℃            15点
 38.9-39.4℃            20点
 39.4-39.9℃            25点
 ≧40,0℃               30点 
②中枢神経症状
 軽症(興奮)           10点
 中等症(せん妄・精神病・高度傾眠)20点
 重度(痙攣・昏睡)        30点
③胃腸・肝機能異常
 中等症(下痢・嘔気・嘔吐・腹痛) 10点
 重度(黄疸)           20点
心・血管異常
頻脈:
 99-109回/分             5点
 110-119回/分           10点
 120-129回/分           15点
 130-139回/分           20点
 ≧140回/分              25点 
心房細動               10点
心不全
 軽症(下腿浮腫のみ)        5点
 中等症(両肺雑音)         10点
 重症(肺水腫)           15点
⑥誘因の存在
 あり               10点
 なし               0点

45点以上が甲状腺クリーゼ。
225-44点は疑い例

Endocrinol Metab Clin North Am 1993; 22:263.

 実はどちらも未だ十分Validationされていないです。まあ数が少ないんだろうなあ、とりあえず。計算を考えると日本の基準を使うのが良いかなとは思いますね。


 ✓ 甲状腺クリーゼの診断基準の内外の違いを抑えておこう。

 

 

鉄吸収に影響する因子  Decreased iron absorption

 鉄欠乏ってなると、上部・下部!ってなりますが、高齢者では大変だし、そもそも意外と頑張っても空振りってあるよねえという話題。Uptodateには比較的稀だとは言われていますが、鉄欠乏の原因として、blood lossだけでなく吸収不良も鑑別に考えましょう!

 吸収不良の原因には主に消化管異常と食事・薬剤が挙げられます。消化器異常としては、萎縮性胃炎・Helicobacter pyroli関連胃炎・Celiac病などが有名であり、原因不明の鉄欠乏性貧血では考える必要があります。特に経口鉄剤補充に抵抗性の場合がこの病態が隠れている可能性が高いです。
 食事・薬剤で言うと、鉄剤吸収に影響を与えるものは非常に多く報告されています。吸収を増やすものとして、アスコルビン酸(ビタミンC)や肉・魚吸収を障害するものとして、フィチン酸(大麦・ライ麦などの食物線維)・ポリフェノール・食事中のカルシウム・大豆タンパクなど。また、PPIも鉄剤吸収を阻害。

 ✓ 鉄欠乏の原因として吸収不良も鑑別に

 

 

塩酸モルヒネ開始量 Starting dose of Morphine

 癌・非癌によらず終末期の疼痛・呼吸困難改善目的に塩酸モルヒネが使用されます。特に経口摂取出来ない場合には、皮下注射や静注の塩酸モルヒネを使用することが多いのではないでしょうか?この場合の用量・開始量はどの程度が良いか?というのが話題になりました。
 
 この辺りは欧米の差もありそうですが、まずはUptodateから。「Camcer pain management with opioids:optimizing analgesia」からですね。まず、原則として皮下注射を用いる場合には5ml/hrを越えてはだめですね。不快感が増すとされています。実際の用量では、推奨されていたのは,持続ではなく頻回使用でした。
 例えば
①静注:2-5mg/回を2-4時間毎
②皮下注射:2-10mg/回を3-4時間毎

 日本では様々なマニュアルがありますが、聖隷三方原病院の症状緩和ガイドが有名かつよくまとまっています。

www.seirei.or.jp

 では、12mg/日の持続静注を通常量とし、高齢者・全身状態不良な場合には、6mg/日程度を推奨しています。この用量は実臨床の感覚でも頷けて、10mg/日で初めても効き過ぎてしまう方はいますよね。

 そもそも海外の様に回数を決めてその度にフラッシュというのもありだなと改めて再確認しました。

緩和治療薬の考え方、使い方

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 ✓ 高齢者・虚弱者の塩酸モルヒネ開始量は少なめ。場合によっては間欠投与も。