栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Procohort ARDSの発症率と治療内容 

ARDSの発症率と治療内容 
Epidemiology,patterns of care, and mortality for patients with acute respiratory distress syndrome in intensive care units in 50 countries*1

【背景】
 呼吸窮迫症候群(ARDS)の疫学・認知・管理・患者アウトカムの情報はまだまだ限られている
【目的】
 ICUでのARDSの頻度とアウトカム、臨床医の認知、人工呼吸管理・治療法(腹臥位など)を評価した。ARDSはベルリン基準をみたす患者と定義した。
【デザイン・セッティング・患者】
 Large Observational Study to Understand the Global Impact of Severe Acute Respiratory Failure(LUNG SAFE)研究と名付けられ、国際多施設前向き観察研究で、侵襲的もしくは非侵襲的な人工呼吸管理を受けた患者を対象に行われた。全世界5大陸、50ヵ国、459ICUで、2014年冬から4週間の間にICUに入室した患者を連続的に評価した。
【曝露】 ARDS
【メインアウトカム】
 プライマリアウトカムは、ARDSのICUでの頻度
 セカンダリアウトカムは、ARDSの臨床医の認知・呼吸器管理の内容・補助療法・臨床アウトカム
【結果】
 29144人の患者が調査施設のICUに入室し、3022人(10.4%)がARDS基準を満たしていた。この中で2377人が最初の48時間でARDSと診断され侵襲的な人工呼吸器管理を受けた。軽症ARDSが30.0%(28.2-31.9%)、中等症ARDSが46.6%(44.5-48.6%)、重症ARDSが23.4%(21.7-25.2%)だった。

 ARDS頻度は4週間で0.42症例/ICUベッドであり、ICU入室患者の10.4%(10.0-10.7%)、人工呼吸器患者の23.4%を占めていた。

 ARDSの認知は、軽症例では51.3%(47.5-55.0%)から重症例では78.5%(74.8-81.8%)と幅があった。

 2/3の患者がtidal Volume 8ml/kg以下での呼吸器管理を受けたが、プラトー圧が測定されていたのは40.1%(38.2-42.1%)、一方で全体の82.6%(81.0-84.1%)がPEEP<12cmH2Oだった。腹臥位の実施率は重症ARDS患者の16.3%(13.7-19.2%)だった。

 ARDSの認知は高いPEEP・筋弛緩薬使用・腹臥位と関連した。院内死亡は軽症で34.9%(31.4-38.5%)、中等症で 40.3%(37.4-43.3%)、重症で46.1%(41.9-50.4%)だった。

f:id:tyabu7973:20160321005454j:plain
(本文より引用)

【結論】
 50ヵ国のICUでは、ARDSはICU入院の10.4%を占めていた。ARDSの認知はまだ低く、認知が低いことは高い死亡率と関連していた。これらの結果は、ARDS患者の管理向上に役立つと考えられた。

【批判的吟味】
・論文のPICOは、
P:2014年冬4週間の世界50ヵ国のICU入室患者
E/C:ARDS重症度(軽症・中等症・重症)
O:ARDSの頻度・認知度・ケアの内容等
・平均年齢61.5歳、BW 78kg、COPD 21.7%、生存率 60%だった。
・腹臥位は全体では7.9%で、ステロイド使用は17.9%とまだまだ根強い模様。
・日本からは28ICUが参加し患者数も643人と比較的多く参加していました。
【個人的な意見】
 こういった現場での医療を反映するデータは重要ですね。一方でやはり小規模なICUがそれぞれ見てクオリティを上げるというよりは、国策として大規模施設に集約するような英国的なやり方が望ましいかなと思います。

✓ ARDSの現状がこのデータに集約されている。認知度はまだまだ