栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & AIM インクレチン製剤と膵癌/DPP阻害薬と心不全/肥満患者への金銭サポート/週1回GLP-1製剤の利益と害

BMJ

インクレチン製剤と膵癌 
Incretin based drugs and the risk of pancreatic cancer:international multicentre cohort study*1

 インクレチン製剤は様々な疾患との関連が取りざたされては消えていきますが、今回は膵臓癌。実はこれまで過去に6つの観察研究が報告されていましたが、一定の見解を得ていませんでした。今回大規模観察研究で決着をつけようと3カ国で評価しています。
 論文のPECOは、

P:2型糖尿病で経口血糖降下薬処方からエントリー(カナダ・英国・米国)
E:インクレチン製剤使用
C:SU剤使用
O:膵臓癌入院
T:症例対照研究(膵臓癌1:コントロール20)
結果:
 97万2384人の人数で大規模検証。フォローアップは1.3-2.8年
 平均68歳、糖尿病歴 1.5年。膵癌患者1221人、コントロール22298人
 SU剤を1とするとインクレチン製剤の調整HR 1.02(0.84-1.23)
 DPP-4でもGLP-1でも変わらず。治療期間が長くても変わらなかった

f:id:tyabu7973:20160320233213j:plain(本文より引用)

 かなり大規模に検証されています。このあたりは協力体制の取り方が素晴らしいです。害を見つけるにはこのくらいやらなくては駄目ですが、問題は見ているのが癌の発症ということで、流石にフォローアップ3年未満で癌発症見ちゃだめでしょ?という単純な突っ込みをいれてみました。

✓ インクレチン製剤と膵癌は短期間では関連なさそう
 

DPP阻害薬と心不全 
Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and risk of heart failure in type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis of randomised and observational studies*2

 DPP4阻害薬は日本で最も使用頻度が高い血糖降下薬ですが、その臨床効果はHbA1cと非劣性、副作用については喧々がくがくです。特に心不全については現時点では一定の結論は出ていないのが現状です。例えばSAVOR-TIMI 53では心不全を増やすと言う結果でしたが、その後のTECOSやEXAMINE研究では心不全との関連は否定されています。
 今回は、システマティックレビューでDPP-4阻害薬と心不全の関係についてunpublished dataも含めて解析しています。論文のPICOは、

P:DPP-4阻害薬で治療された2型糖尿病患者で12週以上フォローアップされ心不全をアウトカムで評価されているRCT/観察研究/症例対照研究
I:DPP-4阻害薬群
C:プラセボ/生活習慣改善/他の経口血糖降下薬群
O:心不全
T:ステマティックレビュー・メタ解析
結果:
 43RCT/12観察研究が組み入れ。さらに38RCTが心不全アウトカムとしているために解析。
 RCTのみのメタ解析で見ると、DPP-4阻害薬群で心不全が42/15701人、コントロール群で33/12591人であり、OR 0.97(0.61-1.56)と有意差を認めなかった。ただしGRADE systemで評価すると risk of biasの部分とImprecisionの部分にlimitationがあり、low qualityとの評価でした。
 心不全入院で見ると、DPP-4阻害薬 622/18554人、コントロール 552/18474人でOR 1.13(1.00-1.26)と有意心不全入院が多かった

 心不全は増えないが、心不全入院は増えそう。異質性はあまり無いようですが、GRADE 評価ではlow qualityとなっています。まあ38RCTは全て企業からの資金提供があったという結果でしたし、なかなか難しいところですね。

✓ 2型糖尿病患者に対するDPP-4阻害薬は心不全入院を増やすかもしれない

 

■AIM■

肥満患者への金銭サポート 
Framing financial incentives to increase physical activity among overweight and obese adults*3

 最近はこの金銭インセンティブな介入があちこちで見られてきてますねえ。今回は肥満の方にお金を渡してみるという試み。FDAは運動不足による健康被害に重きを置いていて、企業に運動スペースを確保するように推奨しているものの、その効果は十分ではなく、企業が運動習慣推進のために金銭サポートをするという考え方があるんだそうです。過去には金銭サポートによる効果を検証した研究もあるんだとか。じゃあどんなサポートが良い?と。
 今回の論文のPICOは、

P:ペンシルベニア州BMI≧27の肥満非雇用者
I/C:
 ①ゴール達成した日毎に1.4$ゲット
 ②ゴール達成すると抽選で1.4$ゲット
 ③42$前払いしてゴール達成しないと1.4$ずつ没収
 ④コントロール群(達成したか否かをフィードバックするだけ)
O:介入期間中に7000歩/日を達成した日数
T:ランダム化比較試験
結果:
 今回はPhotoGeo Oyというスマホのアプリを用いて歩数を検証
 女性 53-55%、平均年齢 37-41歳、平均BMI 32-34、独身者 35-38%
 プライマリアウトカムは、コントロール群と比較して前払いして減収していく群のみが有意に達成日数が多かったが、平均歩数では有意差を認めなかった。

  お金のあげ方で結構違うんだなあと。やっぱり減らされたくないという思いが強いんでしょう。毎日1.4$ってまあジュース一本くらいと思うとやる気が出ない気持ちも分からないではない。行動変容を促す際に、行動経済学からの検討も必要かもねえと。


✓ 肥満患者への金銭サポートは前払いして減収する群が運動効果が高かった


週1回GLP-1製剤の利益と害 
Benefits and harms of once-weekly Glucagon-like peptide-1 receptor agonist treatments*4

 なんだか今回はひたすらDPP-4とGLP-1な感じですけど・・・こっちはGLP-1製剤の話題です。ほとんど使用してはいないんですが、先日講演会でも週1回製剤の話題が出ていました。第一選択にはならないものの、週1回で・・・というメリットが何かしら優位に働くこともあるかなと思っています。日本では最近、ビデュリオンⓇとトルリシティⓇがそれぞれ週1回製剤として認可されています。今回はその利益と害をシステマティックレビューで再検証しておこうというのが主題です。
 論文のPICOは、

P:2型糖尿病患者患者でGLP-1製剤を24週間以上フォローされたRCT
I/C:週1回GLP-1製剤・インスリン製剤・経口血糖降下薬・プラセボ
O:HbA1c値、②副作用・合併症
T:ステマティックレビュー・メタ解析
結果:
 35RCT/21126人が解析対象。
 平均年齢55歳、女性 45%、平均HbA1c 8%、糖尿病罹患歴 5-10年
 ①効果:
 GLP-1製剤の中で最もHbA1c改善効果が高いのは週1回のexenatideとdulaglutide 1.5mg
 プラセボよりはHb1cは低下し、シダグリプチンよりも低下
 メトホルミン・ピオグリタゾン・持効型インスリンと同等

f:id:tyabu7973:20160320234159j:plain

(本文より引用)
 ②副作用・合併症:
 低血糖頻度はGLP-1製剤での群間差はない。
 嘔気はAlbiglutideが最も少なく次が週一回のexenatide、これはメトホルミンとほぼ同等

  連日のGLP-1製剤よりも週1回製剤の方が副作用は少なく、効果もほぼ同等とのことでした。比較が多すぎて一定の見解は得られにくいですが、選択肢の一つにはなるのかもしれません。もちろん、費用対効果や長期使用による安全性などはまだまだこれからですが・・・


✓ 週1回のGLP-1製剤の効果は他の血糖降下薬とほぼ同等で低血糖は少ないが嘔気は多い