読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 糖尿病スクリーニング/成人肺炎入院患者の抗菌薬治療/中心性橋融解/帝王切開時の皮膚切開前消毒にクロルヘキシジン

JAMA NEJM 論文 内分泌 検診 薬剤 呼吸器 感染症 感染対策 外科 産婦 神経

■JAMA■

糖尿病スクリーニング 
Screening for prediabetes and type 2 diabetes mellitus*1

 久々にJAMAのClinicalguideline synopsis。今回はUSPSTFの2型糖尿病および糖尿病型患者のスクリーニングに対するガイドラインが2015年に改訂されており、その紹介です。
 対象となっているのは40-70歳の成人で過体重もしくは肥満の患者。主な推奨として、3年毎に糖代謝異常を評価することを推奨しています。この場合、HbA1cもしくは空腹時血糖、糖負荷試験が推奨されます。スクリーニング陽性者には生活習慣改善を推奨すべきです。
 
 2014年の時点で米国では成人の9.3%が糖尿病と診断されています。また、糖尿病の未診断率は36.4%で診断に4-8年の遅れが見られると報告されています。糖尿病スクリーニングが臨床アウトカムを改善したという報告は残念ながらなく、過去に2件のRCTはありますが死亡に影響しなかったとされています。そもそも境界型患者での治療効果はどうなのかというと、過去に16のRCTがあり、生活習慣介入や薬剤による糖尿病発症率減少効果は認められていますが、死亡に関しては明らかにはなっていません。スクリーニングの害は、不安や早期開始薬剤による副作用あたりでしょうか。

 現時点ではスクリーニングが臨床的な効果があるかどうかは実はよく分かっていません。まあ、長期フォローアップしないと死亡や冠動脈疾患などのアウトカム評価は出来ませんが、そもそもスクリーニングの効果はその後の治療や食生活など多くの影響を受けるため、時間が経てば経つほど効果が薄まってしまいますよね。

✓ USPSTFは過体重・肥満の40歳以上の成人に3年毎の糖代謝異常スクリーニングを推奨している


成人肺炎入院患者の抗菌薬治療 
Antibiotic therapy for adults hospitalized with community-acquired pneumonia*2

 かなりコモンな話題の一つです。肺炎については様々な切り口がありますが、今回は入院した成人での抗菌薬投与でICU入室患者は除外されています。1995-2015年のMEDLINE/EMBASE/Cochraneが検索され、画像で確認された市中肺炎および成人かつICU除外で20研究が組み入れられています。今回のシステマティックレビューでは、以下の3点がポイントです。
①抗菌薬初回投与のタイミングは?
②初回抗菌薬で非定型をカバーすべきか?
③点滴から内服への変更タイミングは?

 
①抗菌薬初回投与のタイミングは?
 8つの観察研究(6つ後ろ向き、2つ前向き)をもとに評価。ただしどの研究もGRADEの評価ではlow qualityになっています。カットオフはそれぞれ4時間未満、6時間未満、8時間未満で評価されていますが、結果はconflictです。30日もしくは院内死亡を増やすことは無く、減らすとすれば最大で8時間未満、OR 0.57(0.44-0.74)という結果でした。

②初回抗菌薬で非定型をカバーすべきか?
 初回抗菌薬の評価が為された研究は11研究で、2RCT、3前向き観察研究、4後ろ向き観察研究、2二次解析でした。これもRCT以外は全てlow quality。βラクタム単剤 vs βラクタム+マクロライドの比較は2RCTがあり結果はconflicting。他の観察研究は併用群の方が効果が高い結果。最新の2015年のRCTが単剤でもOKという結果でしたが、単剤群の20-30%がマクロライドを使用しているという問題点もあります。

tyabu7973.hatenablog.com

 なおニューキノロン単剤との比較もありますが、RCTではキノロン単剤に劣らないという結果でした。

③点滴から内服への変更タイミングは?
 これについてはまだまだ研究が不足しており、1つのRCTが評価していますが、結構力学的に安定し、臨床的に改善し、内服が可能で消化管機能が正常であればswitch可能とされています。

 
ということでまとめです。
①中等症〜重症成人入院肺炎患者では、4-8時間以内に抗菌薬を。
②初期抗菌薬投与は「βラクタム+マクロライド」か「ニューキノロン単剤」
③3日目の時点で特定の基準をみたせば経口抗菌薬への変更可能


✓ 成人市中肺炎入院患者の行うべき抗菌薬の原則を押さえておこう


 

■NEJM■

中心性橋融解 
Central pontine myelinolysis*3

 NEJMの症例報告。ちゃんと補正したのに・・・という話。

 35歳男性が急性アルコール性肝炎と脳症で入院。来院時にはNa 119mEq/Lと低ナトリウム血症を認めた。ラクツロースやビタミン製剤、脱水に対する生理食塩水などの支持療法を5日ほど行い、彼のNa値は3mEq/Lずつ、135mEq/Lまで上昇した。第6病日に意識レベルがGCS 6まで低下。非造影の頭部CTでは特記すべき所見を認めなかった。その2日後には神経所見は筋緊張はあるが四肢麻痺の状態だった。大腿四頭筋腱反射と上腕二頭筋腱反射は良好で、足底反射は陽性だったが他の反射は正常だった。頭部MRIでは橋にT2高信号、T1低信号を認め、拡散強調画像では高信号だった。これらの所見は中心性橋融解では特徴的な所見であり、一般的にはナトリウムの急な補正(通常は1日で9mEq/L以上の上昇)による浸透圧性脱髄を起こしているものと考えられた。

f:id:tyabu7973:20160321105458j:plain

(本文より引用)

 臨床症状は昏睡から傾眠、嚥下傷害、構音障害、様々な程度の麻痺、閉じこめ症候群など様々です。アルコール依存症と肝障害は中心性橋融解の誘因になります。本患者はその後ゆっくりと改善し、翌年には手足の麻痺は改善したが、球麻痺状態は改善せず、胃瘻留置がなされ経管栄養投与となった。

✓ 正常な補正を行っても起こる中心性橋融解がある


帝王切開時の皮膚切開前消毒にクロルヘキシジン 
A randomized trial comparing skin antiseptic agents at cesarean delivery*4

 クロルヘキシジンによる消毒効果は様々検証されていますが、今回は帝王切開の時はどうか?という話題です。論文のPICOは、

P:帝王切開予定の妊婦1147人

I:2%クロルヘキシジン+70%アルコールで皮膚消毒
C:8.3%ポピドンヨード+72.5%アルコール
O:術後30日以内のSSI
T:RCT/ITT解析 1施設
結果:
 平均28歳、女性37週、DM 10%、緊急帝王切開 42%、手術時間 55分
 プライマリアウトカムは、クロルヘキシジン群 23/572人(4.0%)、ポピドンヨード群 42/575人(7.3%)でRR 0.55(0.34-0.90)とクロルヘキシジン群が有意に少なかった

f:id:tyabu7973:20160321105657j:plain
(本文より引用)

  クロルヘキシジンすごいっすね。あとは濃度の問題でしょうか。本邦では0.05%なのでだいぶ濃度が違いますね。皮膚過敏反応はやはり高濃度の方が多く出る様です。


✓ 帝王切開時の皮膚消毒もクロルヘキシジンがポピドンヨードよりも効果的