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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:水疱性疾患の診断/正常血圧性虚血性急性腎障害の診断/巨細胞性血管炎の診断/不整脈検査のための適切なモニター選択

MKSAP 皮膚 腎臓 膠原病 循環器 検査
MKSAPまとめ@C先生コーナー。
一週遅れ。すいません、まとめ遅くて・・・

水疱性疾患の診断
Diagnose blistering disorders

❶症例 
 79歳男性。3−4週間前から掻痒感を伴う水疱が胸・腹・下肢に広がっている。水疱は緊満し黄色の液体が流れ出し治癒する前に固まる。ここのところ体調が悪かったという事も無い。誘因となるような事は特に思い当たらない。新規の内服や外用剤もない。周囲に同様の症状も無い。橋本病でレボチロキシンを内服している。無熱。皮膚の写真は以下。

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(MKSAPより)

 最も適切な検査はどれか?
A.  細菌培養
B.  水疱液のPCR
C.  皮膚生検+免疫蛍光抗体法
D.  Tzanck試験

 ❷自己免疫性水疱性疾患
 本患者では、皮膚生検+免疫蛍光抗体法が望ましい。緊満した表皮下水疱は自己免疫性水疱疾患を示唆する。本症例の診断は尋常性類天疱瘡である。小胞水疱性の発疹が粘膜以外の部分に慢性的に多発する。硬く容易には破れない水疱が特徴。好発部は下腹部、大腿内側、股間、腋窩、四肢屈側。随伴疾患は乾癬、糖尿病、SLE、悪性貧血、向上遷延、多発性筋炎、関節リウマチ。
 診断には2カ所を生検するのが望ましい。 水疱の辺縁からパンチバイオプシーしHE染色を行うと炎症が認められる。病変から数mm離れた水疱の無い部位から免疫蛍光抗体法を行う。免疫反応の種類と分布が診断の一助になる。 血清自己抗体は尋常性天疱瘡など診断に役立つものもあるが水疱性類天疱瘡のように役立たないものもある。そのような場合は皮膚を直接調べる方法が好まれる。

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❸その他の選択肢
細菌培養:細菌培養は感染が疑われていれば良い適応だが、本症例では発赤、膿汁分泌、発熱等無く感染を疑わないため、診断には寄与しない。

PCR・Tzanck試験:PCRやTzankテストはヘルペスウィルス属の感染を証明するものであり本症例には適さない。ヘルペスウィルス属の感染は2−3mm大の小水疱が集簇するのが特徴で大型の水疱は典型的ではない。

Key Point
✓ 自己免疫性水疱性疾患には皮膚生検+免疫蛍光抗体法が望ましい。

Parker SR, MacKelfresh J. Autoimmune blistering diseases in the elderly. Clin Dermatol. 2011;29(1):69-79. PMID: 21146735  

 

 

正常血圧性虚血性急性腎障害の診断
Diagnose normotensive ischemic acute kidney injury

❶症例
 3日前に下肢の広範な蜂窩織炎で入院になった74歳男性が現在AKIと診断されている。既往に高血圧、脂質異常症、PAD。高血圧はコントロール不良で外来での最終血圧は165/92mmHg。内服:リシノプリル、メトプロロール、ヒドロクロロチアジド、入院時にCEZが開始されている。 入院後は血圧BP118/60以下で経過。四肢にうっ帯所見なし。

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(MKSAPより)
 腎臓超音波は正常だった。

 急性腎障害の原因として最も疑わしいのはどれか?
A.  急性間質性腎炎
B.  コレステロール塞栓症
C.  正常血圧性虚血性急性腎障害
D.  腎前性高窒素血症(腎前性腎不全)

 正常血圧性虚血性急性腎障害

  本患者では、正常血圧性虚血性急性腎障害であり、血管危険因子があり血圧が平常時以下に下がった時に発症する。血圧が患者の自己調節能の範囲を超え低下すると腎血流が低下し血清Crが上昇する。患者は背景にCKDと血管疾患があり本症のリスクになる。血圧が低値なのは感染、入院に伴いコンプライアンスが改善した事、食事が関与。診断の為には、FENa、FEUn、尿細胞診での円柱、超音波所見が有用である。

❸その他の選択肢
急性間質性腎炎:急性間質性腎炎は主に薬剤への過敏反応で発症。薬剤暴露後1週間程度が通常。発熱、皮膚症状、WBC/RBC円柱が無い事からも否定的。
コレステロール結晶塞栓症:コレステロール結晶塞栓症は動脈硬化を有する患者のAKIで鑑別に上げる。自然発生もあるが多くは冠動脈造影、腎動脈造影、大動脈手術後に起こり、ヘパリンやワーファリンなど抗凝固薬や抗血小板薬が引金になるとされる。皮膚症状や腎外症状、尿沈さ所見を伴う。本症例は血管病変はあるが侵襲的手技も抗凝固もなく皮膚、腎外症状がなく、本症例の可能性は低い。
腎前性腎不全:腎前性腎不全は水分の喪失や摂取不足が病歴上あり、身体所見でも細胞外液喪失を支持する身体所見がある時に診断する。FENa2%以下もFEUN50%以下もやはりらしくない。本症例は尿細管壊死を示唆している。

Key Point
✓ 正常血圧性虚血性急性腎障害は血管危険因子があり、血圧が平常時以下に下がった時に発症する。

Abuelo JG. Normotensive ischemic acute renal failure. N Engl J Med. 2007;357(8):797-805. PMID: 17715412 

 

 

巨細胞性血管炎の診断
Diagnose giant cell arthritis

❶症例

 58歳男性。6週間前から肩と股関節の痛みとこわばりが出現しその後発熱と2.2kgの体重減少あり。顎跛行、頭痛、呼吸器症状、腹痛、関節炎症状なし。内服薬なし。
 BT38.6度、BP 140/70mmHg、HR 100bpm、RR 16/分。胸部聴診は正常。皮膚症状、側頭部や毛髪部の圧痛なし。リンパ節腫脹なし。両側の肩と股関節に軽度の筋痛と可動域制限あり。神経所見は特記事項なし。

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(MKSAPより)

 末梢血スメア、血液培養は陰性。胸部レントゲン、心臓超音波は正常。両側側頭動脈生検は陰性

 この患者で次に行うべき検査は以下のどれか?
A.  骨髄生検
B.  頸胸部CT血管造影
C.  腎臓・腸間膜動脈造影検査
D.  肩・股関節MRI

 ❷巨細胞性血管炎
 頚胸部CT血管造影検査はGCAを疑った時に施行する。GCAは典型例では発熱、倦怠感を伴うため50歳以上の原因不明の発熱では鑑別に入れる必要がある。肩や股関節の痛みこわばりといったPMR症状が前面に出る事もある。多くの場合は跛行や頭部の圧痛など脳血管由来の症状を呈するが、大血管が病変部のときはそういった症状を欠く。PMRで原因不明の発熱を伴う時、GCAを疑うが側頭動脈生検が陰性の時は大動脈弓、総頚動脈、腕頭動脈、鎖骨下動脈などの大血管の画像検索の適応となる。  

❸その他の選択肢
骨髄生検:白血球、血小板末梢血スメアが正常の患者の発熱、関節痛を説明出来ず骨髄生検が有用とは言えない。
腎臓・腸間膜動脈造影検査:腎臓-腸間膜動脈造影結節性多発動脈炎の診断に有用。本症例では高血圧、腹痛、腎機能低下、多発性単神経炎など合致する所見に乏しい。
肩・股関節MRI既に肩や股間関節に症状がある症例に対してMRIは診断的付加価値は乏しい。

Key Point
✓ PMRで原因不明の発熱を伴う時、GCAを疑うが側頭動脈生検が陰性の時は頸部胸部のCTA・MRAを行う。

Marie I, Proux A, Duhaut P, et al. Long-term follow-up of aortic involvement in giant cell arteritis: a series of 48 patients. Medicine (Baltimore). 2009;88(3):182-192. PMID: 19440121   

 

 

不整脈検査のための適切なモニター選択
Select the optimal ambulatory monitoring device evaluating an arrhythmia

❶症例

 80歳女性。脈の不整が数分間続くため受診。ここのところ月に数回、失神前症状を自覚している。脈の不整と関連しているかどうかは分からない。CAD既往なし。高血圧でリシノプリル内服。BP 128/70mmHg、HR 50/整。頚静脈怒張なし、心音は清、2/6の収縮器駆出性雑音を心先部で聴取。放散なし。肺雑音なし、浮腫なし。
 心電図を下記に記す。

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(MKSAPより)

 本患者の診断検査で最も適切なのはどれか?
A.  24時間持続心電図モニター 
B.  電気生理学的検査
C.  ループレコーダー
D.  症状後イベントレコーダー

 ❷ループレコーダー

 本症例は、ループレコーダーが正解。患者は脈の不整と失神症状があり、安静時心電図では不整脈は認めない。不整脈の疑いが有る時の第一段階は不整脈を補足し、症状との関連性を証明する事。散発的な症状のときは安静心電図では補足しづらい。イベント心電図はもっと頻度が少ない時に使用するもので患者が作動させた時にしか記録されない。ループレコーダーはリズムは記録され続けているが症状を自覚した時に患者が作動させないと記録が保管されない。作動させるとその数秒前のリズムも一緒に記録が保管される。

 ❸その他の選択肢
24時間ホルター心電図ホルター心電図は24-48時間の記録をするもの。頻度の高い不整脈なら有用だが頻度が低いものには意義は乏しい。本症例のような頻度の不整膜の検出は困難だろう
電気生理学的検査:侵襲的な電気生理学的検査は不整脈を誘発させたりアブレーションの為に電気的なマッピングをしたりというのが目的。診断の段階で行うものではない。
症状後イベントレコーダー:症状後レコーダーは患者がデバイスを作動させた後に記録を開始する。電極リードが不要で持ち運びもし易いが、患者が作動させる前に症状が消失してしまう事がある。失神してしまうと作動させる事も出来ない。

Key Point
✓ ループレコーダーは症状前のリズムを数秒間記録出来るため失神症状があり散発的な不整脈との関連を疑う時に適応になる。

Subbiah R, Gula LJ, Klein GJ, Skanes AC, Yee R, Krahn AD. Syncope: review of monitoring modalities. Curr Cardiol Rev. 2008;4(1):41-48. PMID: 19924276 

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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