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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Procohort 多くの潜在的な薬剤関連有害事象はSTOPP/STARTと関連しない

論文 薬剤 ポリファーマシー 高齢者

多くの潜在的な薬剤関連有害事象はSTOPP/STARTと関連しない
Majority of drug-related problems identified during medication review are not associated with STOPP/START criteria*1

Eur J Clin Pharmacol (2015) 71:1255–1262

【目的】
 STOPPとSTARTのクライテリアは潜在的な不適切薬剤と潜在的な未処方を検出できる。STOPP/STARTクライテリアが全ての薬剤関連プロブレムを同定できるかは分かっていない。全ての薬剤をレビューする方法で見つかった薬剤関連プロブレム(Drug-related problem:DRP)をSTOPP/STARTクライテリアがどの程度同定できるかを目的としている。
【方法】
 オランダの13の市中の薬局で、457人の65歳以上の地域住民で、5種類以上の薬剤を内服している患者が全ての薬剤のレビューを受けた。地域の薬剤師は、implicit criteriaの推奨を元に潜在的な薬剤関連プロブレム(DRP)を検出した。検出されたDRPと推奨は調査者によってSTOPP/STARTクライテリアと比較された。
【結果】
 地域薬剤師によって検出された潜在的なDRPは457人の患者において1656件(平均3.6件/人)だった。81%のDRPがSTOPP/STARTクライテリアと関連していなかった。STARTクライテリアの方がSTOPPクライテリアよりも検出頻度が高かった(13% vs 5.7%)。クライテリア推奨内容に対する実施率は、STOPPクライテリアの方がSTARTクライテリアよりも高かった(56% vs 39%)。STOPPもSTARTの推奨はともにSTOPP/STARTクライテリアとは関連しない推奨よりも実施率が低かった。
【結論】
 この研究結果からは、高齢住民における多くの薬剤関連有害事象はSTOPP/STARTクライテリアと関連しなかったとしいている。この結果はSTOPP/STARTクライテリアはimplicit criteriaと組み合わせて使うべきではないか?と示唆している。

【批判的吟味】
・syuichiaoさんのブログで見つけて興味深くて私も読んでみました。

syuichiao.hatenadiary.com

・論文のPICOは、
P:オランダの13箇所の地域薬局を受診しタ65歳以上で5種類異常の薬剤を内服している地域住民457人
I:全ての薬剤を網羅的にレビューして検出された潜在的な薬剤有害事象
C:STOPP/STARTクライテリアを上記患者に適応して検出された潜在的な薬剤有害事象
O:両群クライテリアによる有害事象の違い
T:前向き観察研究/全例別解析がされています。
・女性 60%、平均年齢77歳、平均処方薬剤 8.7種類、最も多いのが抗血小板薬 69%、RAS系阻害薬 68%
・そもそもimplicit criteriaとexplicit criteriaを押さえておく必要があります。Implicit criteriaはMAI scoreなど、一つ一つの薬剤の適応や用量などを薬剤毎にチェックしていく方法で具体性に欠けます。一方でExplicit criteriaはSTOPP/STARTやBeersなど具体的な薬剤と患者コンディションを明記して適応する基準です。当然後者の方が具体的になります。

f:id:tyabu7973:20160321150550j:plain
(MAI score:http://scielo.isciii.es/img/revistas/pharmacin/v10n4/original1_01.gifより引用)


【個人的な意見】
 個人的にはまさに我が意を得たりという感じでした。というのも介入をする時には、STOPP/STARTクライテリアは意識はするものの、実際には一つ一つの薬剤の適応やデメリットなどを一つ一つチェックする作業を行っているからです。クライテリアを使用していての違和感はここにあったなと感じています。

 今回何よりすごいなと思ったのはオランダの薬剤師さんの実力です。この介入は主に薬剤師さんの介入ですが,自宅もしくは薬局で、薬剤効果・副作用歴・アドヒアランスOTC使用の有無などを確認し、GPと相談しながら調整を行います。調整後のフォローも薬剤師。そして過去に薬剤レビュー経験のある薬剤師ばかりです。介入前に受けるトレーニングコースにはガイドライン教育・コミュニケーションスキル・薬剤有害事象の見つけ方・薬剤調整プランの建て方などの項目が含まれ、更に月1回のwebカンファでの事例検討やフィードバックもあるんだそうです。すげー。うちも頑張ろう。

✓ 潜在的な薬剤関連有害事象はSTOPP/STARTクライテリアで引っかけるというよりも全薬剤レビューによるimplicit criteriaも用いるのが重要