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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:高齢者の失神/神経性潰瘍の診断/QRS幅広頻拍の診断/オピオイド誘発性便秘の管理

MKSAP 高齢者 診断 薬剤 緩和 消化器 循環器 皮膚
MKSAPまとめです〜
さらっとですね。今回4問目はさらにゲストエディターでした。
Y君お疲れ様。

高齢者の失神
Manage syncope in an elderly patient

❶症例 
 78歳男性。失神を目撃され救急搬送。食事中に脈の飛ぶ感じがあり倒れたと。妻によると30秒ほど気を失っていた。頭部外傷なし。覚醒と共に意識清明になった。同様の失神の既往は無いが脈が飛ぶ感じは今までにもあった。既往歴:高血圧、COPD骨粗鬆症、BPH。
内服薬:サイアザイド、リシノプリル、セレコキシブ、イプラトロピウム吸入、タムスロシン。転倒でぶつけた大腿以外は自覚症状なし。
 バイタルサインでは、BP 138/88mmHg、HR 82bpm(OD症状なし) RR 16。酸素飽和度は正常。頸動脈拍動は2+で頸動脈雑音なし。JVDなし。胸部聴診は期外収縮以外は正常。他特記所見なし。心電図では虚血の関与していないPVC。

 最も適切な検査はどれか?
A.  頸動脈超音波
B.  心臓超音波
C.  入院し心臓モニター
D.  頭部単純CT

 ❷心原性失神
 本患者では、前駆症状、時間経過、イベント直後に意識が回復している事から心原性失神が最も疑わしい。心原性失神は死亡率が高く疑いがある場合は年齢に拘らず入院し精査を行うべき。特にリスクが高いのは労作時や臥位での失神、動悸が先行する失神、突然死の家族歴、非持続性のVT、心電図で異常所見を伴う失神。入院しモニター管理を要する。

❸その他の選択肢
頸動脈超音波・頭部CT:中枢神経疾患が失神の原因となるのはまれ。新規の神経学的症状が無い場合には頭蓋内、頸動脈の精査をする見返りは少ない。 頸動脈エコー、頭部CTは役に立たないという事になる。頭部外傷を伴う失神がある時は頭部CTを行うが失神全例で必要な訳ではない。

心臓超音波:心臓超音波は心臓の構造的疾患を評価するのに役立つので、それ以外の疾患では診断価値は薄い。

Key Point
✓ 心原性失神は死亡率が高く、疑いがある場合は入院し精査を行う。

Mendu ML, McAvay G, Lampert R, Stoehr J, Tinetti ME. Yield of diagnostic tests in evaluating syncopal episodes in older patients. Arch Intern Med. 2009;169(14):1299-1305. PMID: 19636031  

 

 

神経性潰瘍の診断
Diagnose neuropathic ulcers

❶症例
 68歳男性。6ヶ月続く足の無痛性の潰瘍。1型糖尿病と高血圧でインスリングラルギン。メトホルミン、リシノプリルを内服中。BMI32、末梢の足背と踵の拍動が消失しているが末梢は暖かい。中足骨頭でモノフィラメント触圧覚腱検査をしたが感覚消失。両膝の振動覚も消失。反射は踵で消失、膝で陽性。写真は以下。

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(MKSAPより)

 本患者の診断はどれか?
A.  動脈性潰瘍
B.  神経性潰瘍
C.  血管炎性潰瘍
D.  静脈うっ滞性潰瘍

 神経性潰瘍

  本患者では、神経性潰瘍が正解。神経性潰瘍は足や中足骨など外傷や摩擦を受け易い部分に好発し感覚低下を伴う。潰瘍は無痛性で周囲に厚く侵軟した辺縁の角化を認める。辺縁の下に潰瘍が広がっている事があり早期に広範囲にデブリをする必要がある。治療には難渋しデブリの他に圧迫部位の除圧が必要。感染は骨髄炎の所見を積極的に探し治療する事を勧める。

❸その他の選択肢
動脈性潰瘍:動脈性潰瘍は重症のPAD(CLI)で起こり、有痛性で辺縁明瞭な潰瘍で四肢のどこにも発生し、骨突出部にも起こりえる。動脈触知が困難、蒼白で冷感著明。
血管炎性潰瘍:触知可能な紫斑は小血管炎を疑わせる。皮膚潰瘍は比較的大きな血管の血管炎で見られる.有通性で不定形の打ち抜いた様な潰瘍。周囲には紅斑や紫斑が見られるが角化過形成は起こらない
静脈うっ滞性潰瘍:静脈うっ滞性皮膚炎は、下肢近位部から大腿付近に好発し、周囲の皮膚は色素が沈着し硬くなっており、lipodermatosclerosisとも呼ばれる。

Key Point
✓ 神経性潰瘍は足や中足骨など外傷や摩擦を受け易い部分に好発し感覚低下を伴う。潰瘍は無痛性で周囲に厚く侵軟した辺縁の角化を認める。

Boulton AJ. What you can't feel can hurt you. J Vasc Surg. 2010;52(3 suppl):28S-30S. PMID: 20804930 

 

 

QRS幅広頻拍の診断
Diagnose an irregular wide-complex tachycardia

❶症例

 31歳女性、30分続く呼吸困難、動悸、眩暈で救急受診。既往に喘息。薬剤はアルブテロール頓服。 無熱、BP110/65 HR174 意識清明で末梢温か。頻脈で脈拍不整。頚静脈度怒張、cracklesなし。 心電図は下記。

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(MKSAPより)

 この患者で診断はどれか?
A.  心房細動
B.  心房粗動
C.  多源性心房頻拍
D.  多形性心室頻拍

 ❷QRS幅広頻拍
 心電図では、不整でQRS幅広の頻脈でQRSの形に僅かに変化がある。P波はなくδ波がV2−5に認められる。側副路のある心房細動に特徴的で早期興奮性心房細動として知られる。バイパス経路があると逆行性に伝導する経路のみでも心房細動のリスクになる。  

❸その他の選択肢
心房粗動:心房粗動は早く規則的な脱分極で300/分の陰性鋸歯状波をⅡ/Ⅲ/aVfに、陽性鋸歯状波がV1に認める。時に2:1AVブロックを認め心室レートは半分の150/分になる事も。
多源性心房頻拍多源性心房細動は心室レートが90-100/分で、形の異なるP波が3つありそれぞれPR時間とPP間隔が異なる。P波が無いので心房粗動と心房性頻拍は否定。
多形心室頻拍多形性心室頻脈は不整だがQRSが特徴的なtorsade de pointes (多型性の心室頻脈で持続的に軸が変わりQRSの形が変わる)を呈さない事もある。

 早期興奮性心房細動では房室をブロックする薬剤は回避すべき。側複路を通って心室に伝わり調律の変性から心室細動になる事があるため。そのような場合は静脈のプロカインアミドやアミオダロンを使用。心房細動が止まらない場合や血行動態が不安定な場合は電気的除細動を行う。バイパス経路を同定する為には電気生理学的マッピングが必要。カテーテルアブレーションにより再発性心房細動のリスクを軽減できるため長期的治療に用いられる。

Key Point
✓ 不整な幅広QRSの頻拍で、QRSの形が複数あり、δ波を認めれば側副血行路のある心房細動である。

Fox DJ, Tischenko A, Krahn AD, et al. Supraventricular tachycardia: diagnosis and management. Mayo Clin Proc. 2008;83(12):1400-1411. PMID: 19046562  

 

 

オピオイド誘発性便秘の管理
Manage opioid-induced constipation with methylnartrexon

❶症例

 67歳男性、3カ月前に膵臓癌の転移と診断された方が、痛みのコントロールのため入院となった。がんは偶然発見されたものであったが、最近数週間にわたって経口鎮痛薬の増量に反応しない痛みが増大してきていた。ここ数日、病院で点滴モルヒネ(短時間作用型と徐放型)に鎮痛効果が得られ、それに相当する経口投与用量に移行した。患者は鎮痛薬による便秘を訴えた。浸透圧下剤やセンナを使っても便秘は解消されなかった。ポリエチレングリコールには耐えられず、食物繊維は腹部膨満を起こした。排ガスは不定期だが見られ、小腸運動も問題なし。
 身体所見では、るいそうあり、悪液質だった。血圧115/80mmHg、脈拍76/分、呼吸数14回、BMIは20だった。腹部所見として、上腹部に軽度の圧痛があった。有意な膨隆はなかった。筋性防御や反跳痛はなかった。直腸診では直腸に硬い便をふれる。検査では、血算、グルコース、カルシウム、TSHは正常範囲内。腹部X線ではニボー形成は認めず、大腸全域に便塊がみられた。

 本患者で最も適切な管理はどれか?
A.  メチルナルトレキソン投与
B.  ナロキソン投与
C.  ジアトリゾ酸エネマ
D.  モルヒネ減量

 オピオイド誘発性便秘

 本症例で、最も適切な対処はメチルナルトレキソンの投与である。このような進行膵臓癌患者では適切に鎮痛する理由がある。オピオイド鎮痛薬の欠点は便秘であり、食事や水分の接種不良につながることがある。メチルナルトレキソンはμオピオイド受容体のアンタゴニストで、オピオイドの鎮痛効果を邪魔することなくオピオイド誘発性の便秘に効果があることが分かってきている。

 ❸その他の選択肢
ナロキソン:ナロキソンはオピオイド過剰摂取による呼吸抑制、中枢抑制に対する中和薬として用いられるものであり、メチルナルトレキソンと間違ってはいけない。ナロキソンは血液脳関門を通過しオピオイド離脱を引き起こすため、この患者では望ましくない。
ジアトリゾ酸エネマ:ジアトリゾ酸エネマは、他の保存的な便秘治療で改善しなければ検討するが、現時点では便通は得られており適切では無い。
モルヒネ減量:モルヒネ減量は便秘を緩和するかもしれないが、疼痛コントロールが不十分となる可能性があり適切ではない。

Key Point
✓ メチルナルトレキソンはオピオイド誘発性便秘患者でオピオイドのメリットを減弱せずに使用可能である。

Thomas, J, Karver S, Cooney GA, et al. Methylnaltrexone for opioid-induced constipation in advanced illness. N Engl J Med. 2008;358(22):2332-2343. PMID: 18509120

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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