栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RCT プライマリケア医の安全な処方のために 薬剤教育介入

プライマリケア医の安全な処方のために 薬剤教育介入
Safer Prescribing — A Trial of Education, Informatics, and Financial Incentives 

N Engl J Med 2016;374:1053-64.

【背景】
 プライマリケアにおいて、リスクの高い処方と予防可能な薬剤関連合併症はよくみられるプライマリケア医による高リスク処方の頻度と、複雑な介入によってどの程度臨床アウトカムが改善するかを評価した。
【方法】
 スコットランドのテイサイド州で行われたクラスターRCTでステップウェッジ研究。対象としたプライマリケア医に48週間の介入を施行。介入内容は、教育・金銭的インセンティブ・情報科学による自助システムからなるものだった。開始日の異なる10群に無作為に割り付けられた。
 プライマリアウトカムは、NSAIDsまたは抗血小板薬の高リスク処方に関する9つの指標(たとえばCKDに対するNSAIDsの処方や、胃粘膜保護薬なしでのNSAIDsと抗凝固薬の同時処方)が患者に起こることとした。セカンダリアウトカムは、それに関連する入院とした。ITT解析あり。
【結果】
 34施設がランダム化され、そのうち33施設が研究を完了した。介入期間前に1つ以上の危険因子を有していた33,334例のデータと、介入期間中に1つ以上の危険因子を有していた33,060例についてデータ解析した。標的とした高リスク処方は、介入直前の3.7%(危険因子を有する患者 1102/29537人)から,介入終了時には2.2%(674 /30187人)へと有意に低下した(調整OR 0.63: 0.57-0.68)。セカンダリである消化管潰瘍・出血による入院率は、介入前の期間から介入期間中にかけて有意に低下し(55.7件から37.0件に減少、RR 0.66:0.51-0.86)、心不全による入院率も有意に低下したが(707.7件から 513.5 件に減少、RR  0.73:0.56-0.95)。急性腎障害による入院率のは減らなかった(101.9件から86.0件に減少、RR 0.84:0.68-1.09)

f:id:tyabu7973:20160411005510j:plain

(本文より引用)
【結論】
 専門家による教育・情報科学・金銭的インセンティブを組み合わせた複合的介入によって、抗血小板薬およびNSAIDsの高リスク処方の発生率が低下し、プライマリアウトカムが改善された可能性がある。
【批判的吟味】
・いつも通り論文のPICOから
P:スコットランドの33プライマリケアに通院する患者でハイリスク患者
  33施設を10群に割り付け、Stepped wedgedでランダム割り付け
I:介入群(教育・情報科学・金銭インセンティブ)
C:非介入群
O:介入前後での高リスク処方の頻度
T:RCT?ITT解析あり
・ちなみに、9つのNSAIDs関連の有害事象は、
①消化性潰瘍患者での消化器保護薬なしのNSAIDs・アスピリン
②75歳以上の患者で消化器保護薬なしのNSAIDs
③65歳以上でアスピリン内服中の患者での消化器保護薬なしのNSAIDs
④65歳以上でクロピドグレル内服中の患者での消化器保護薬なしのNSAIDs
⑤経口抗凝固療法中で消化器保護薬なしのNSAIDs
⑥経口抗凝固療法中で消化器保護薬なしのアスピリン・クロピドグレル
⑦RAS系阻害薬もしくは利尿剤を内服中の患者でNSAIDs
⑧CKD患者でのNSAIDs
心不全既往患者でのNSAIDs
・①ー⑥が消化器系、⑦、⑧が腎臓系、⑨は心臓系です
【個人的な意見】
 やっぱり処方行動の変化のためにはかなり準備が必要ということですよね。いつもの金銭インセンティブ効果とは異なり、介入後も効果が続くというのは重要ですね。何にせよ、まずは気にしなくてはいけない組み合わせやポイントを確り押さえておこう

✓ プライマリケア医の処方が変わるためには、教育・情報科学・金銭インセンティブどれも必要である