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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:閉経後の血管運動症状の治療/炎症性腸疾患とCDI/夜間低血糖を認知する/食道胃接合部腺癌の治療

MKSAP 産婦 薬剤 消化器 感染症 内分泌 悪性腫瘍
MKSAPまとめです〜
だいぶ遅くなりました〜。次からは新人さんにお願いできるか!?

閉経後の血管運動症状の治療
Treatment menopausal vasomoter symptoms

❶症例 
 61歳女性。10年以上続く顔面紅潮。1日7回以上、1回60秒以上。発汗や動悸が著明で嘔気も時折。夜に数回起きる。漢方薬は効果なし。高血圧、2型糖尿病、脂質異常症の既往あり。5年前に大腿骨頸部骨折の術後にDVTを発症。内服はラミプリル、メトホルミン、アトルバスタチン、Ca、VitD。
 診察ではバイタル正常、BMI29、身体所見では特記所見なし。

 最も適切な治療はどれか?
A.  シタロプラム(レクサプロⓇ)
B.  経口エストロゲン
C.  経口エストロゲン/プロゲステロン
D.  局所エストロゲン
E.  ベンラファキシン(イフェクサーⓇ)

 ❷閉経後の血管運動症状
 本症例では冠動脈疾患リスクとDVTの既往もあり非ホルモン性の治療を行う必要がある。Venlafaxine(ベンラファキシン)のようなSNRIは閉経後血管運動症状の非ホルモン治療として有効性が証明されている。 閉経後7-10%が閉経7-10年後に発症。症状が重度かつ姑息的治療に抵抗性で、QOLも下がるため薬物治療が望ましい。

❸その他の選択肢
経口エストロゲンエストロゲン/プロゲステロンエストロゲン全身投与が望ましく、子宮への影響を考慮しプロゲステロンを併用する事が原則だが、本症例の場合は冠動脈疾患、癌、脳卒中、静脈血栓症などの有害事象があるため禁忌となる。The North American Menopause Society guidelineでは60歳以上の閉経女性でホルモン治療を行った事が無い場合は上記疾患のリスクを上げてしまうためリスクを勘案し相談の上決めるべき。本症例ではDVT既往があるため絶対禁忌といえる。 

シタロプラム非ホルモン療法として有効なものもある。顔面紅潮は1/3の症例がプラセボによる治療でも症状が改善する。Venlafaxine(ベンラファキシン)(37.5-150mg)は症状の重症度、頻度共に改善する。効果はベンラファキシンで60%軽減に対してプラセボは30%軽減。Paroxetine(パロキセチン)も同様に有効。Fluoxetine(フルオキセチン)やCitropram(シタロプラム)は研究による有効性の実証がない。GabaepentinとClinidineは効果もあるが副作用も大きく使用を控えたい。 

局所エストロゲン局所エストロゲンの局所治療は膣の乾燥、掻痒感、性交時疼痛などの治療で使われる。局所症状の緩和には有効だが血管運動症状の緩和は困難

Key Point
✓ 冠動脈と血栓症リスクを勘案すると全身性のホルモン療法は閉経後血管運動症状の治療には推奨されない。

Nelson HD, Vesco KK, Haney E, et al. Nonhormonal therapies for menopausal hot flashes: systematic review and meta-analysis. JAMA. 2006;295(17):2057-2071. PMID: 16670414 

 

 

炎症性腸疾患とCDI
Clostridium difficile and inflammatory bowel disease

❶症例
 45歳男性、1週間前から非血性の下痢が10回/日。腹痛を随伴。5年前から潰瘍性大腸炎の診断でメサラジンを内服。
 体温 37.9度、BP 110/80mmHg(起立性低血圧なし)、HR 100bpm、腸雑音が亢進し腹部全体の圧痛があるが腹膜刺激症状なし。採血は以下。腹部レントゲンは正常。

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(MKSAPより)

 本患者で次に行うべき診断的検査はどれか?
A.  腹部CT
B.  大腸内視鏡検査
C.  右上腹部超音波
D.  便検査でのCD確認

 炎症性腸疾患とCDI
  CDIは炎症性腸疾患に合併することが比較的多いうえに、合併例では合併症や死亡率が多いことが知られている。かつては入院歴、抗生剤使用歴のある高齢者の問題であったが、近年の外来のCDIは若年で細菌の抗生剤使用歴がなくとも起こりうる。罹病中の免疫抑制を防ぐ為にも早期認識、早期治療が望まれる。典型例ではWBCが著増しレントゲンで中毒性巨大結腸症を呈する。標準的治療は経口メトロニダゾールだが炎症性腸疾患既往者は臨床的効果が良かったという理由から経口バンコマイシン内服も推奨されている。炎症性腸疾患と類似の症状を呈したり増悪の因子になったりするので細菌と寄生虫もルーチンで検索するべき。

❸その他の選択肢
腹部CT:CTは腹痛が増悪する、腹部膨満、腸蠕動音低下、反跳痛など時に中毒性巨大結腸症や穿孔を考慮し撮影するのが妥当。本患者には該当する症状が無い。
大腸内視鏡検査:大腸内視鏡検査は患者がCDIの治療や他の感染症潰瘍性大腸炎の再燃を起こした時、第二選択の治療を十分に行っても改善しない時の評価法として行われる。侵襲的な検査であるため第一選択にしづらく、生検結果が帰ってくるまでにも時間がかかり、CD感染なのに偽膜形成を欠く事も多い。長期にステロイド治療を行った場合はCMV感染を併発する事があり、その場合は生検検体を得る為に有用。
超音波検査IBD患者は胆汁うっ滞を起こし胆石症の発症リスクが上がるが今回の症状の中には右腹部痛が無く臨床的に疑わないためエコーは不要。

Key Point
✓ Clostridium difficileは炎症性腸疾患によく合併し、潰瘍性大腸炎の再燃が疑われる場合には、便細菌培養、虫卵、虫体、CD確認を行う。

Ananthakrishnan AN, Issa M, Binion DG. Clostridium difficile and inflammatory bowel disease. Gastroenterol Clin North Am. 2009;38(4):711-728. PMID: 19913210 

 

 

夜間低血糖を認知する
Identify nocturnal hypoglycemia

❶症例
 33歳女性、3週間前からの倦怠感と多汗、起床時の頭痛。18歳時から1型糖尿病。過去2週間の空腹時血糖は125-146程度。(平均135、夕食前176)。夕食時以外には血糖を計っていないが、昼食時、特に食事量が少なかった後に低血糖症状が出現する。一人暮らしで夕食前に1時間運動する。中間型/速効型70/30の混合型インスリンを朝食前・夕食前に打っている。
 身体所見では、全身状態良好。体温 36.6度、HR 66bpm、BP 104/63mmHg、RR 14/min、BMI 18。身体所見に特記事項なし。HbA1C 5.7%、平均血糖 120

 この患者の症状の原因として疑わしいのはどれか?
A.  暁現象
B.  夜間低血糖
C.  睡眠時無呼吸
D.  ソモジー現象

 ❷夜間低血糖
 本症例では、夜間低血糖が最も疑わしい。HbA1Cが血糖から推定される値より低い。夜間に数時間の低血糖があるとするとこの不一致も説明可能である。患者の使用している混合型インスリン製剤だと食後6−8時間でピークを迎える。患者は夕方に運動をしており、その後数時間に渡って筋肉での糖消費とグリコゲンの分解が起こっている事になる。このため就寝時には血糖がかなり低くなってしまう。さらに罹患期間からするとアドレナリン作動性神経の働きによって、夜間に低血糖症状で起きることはないが、朝起きた時に倦怠感、多汗、頭痛を認めている。

❸その他の選択肢
暁現象:暁現象はコルチゾルと成長ホルモンの分泌が増えるため早朝(4−8時)で高血糖になる現象。朝に高血糖になっている事が本態であり本症例では合致しない。 
睡眠時無呼吸睡眠時無呼吸では早朝の頭痛を来す事はあるが、HbA1cの高い2型糖尿病患者(BMIも高い)である事が一般的。
ソモジー現象:ソモジー現象は夜間に血糖値が低ければ低いほど早朝の血糖が高くなるという事を示す論理的概念。空腹時高血糖を説明する概念であり本症例にはやはり合わない。

Key Point
✓ 1型糖尿病で夜間低血糖が頻回に起こると早朝の頭痛や多汗が出現する。

Juvenile Diabetes Research Foundation Continuous Glucose Monitoring Study Group. Prolonged nocturnal hypoglycemia is common during 12 months of continuous glucose monitoring in children and adults with type 1 diabetes. Diabetes Care. 2010;33(5):1004-1008. PMID: 20200306 

 

 

食道胃接合部腺癌の治療
Treat locally advanced gastroesophageal junction adenocarcinoma

❶症例
 55歳男性、2ヶ月前からの経口摂取困難。逆流性食道炎と思われる胸焼け症状がある。液体の嚥下は問題ないが固形物を摂取すると詰まるような違和感がある。体重は変化無く、胸焼け症状に対しOTCのオメプラゾールと制酸剤を内服している。
 身体所見では、T 36.9℃、HR 78bpm、BP 130/85mmHg、RR 12/min。身体診察は特記所見なし。腹部は膨満や肝脾腫なく、腸雑音は正常。鎖骨上リンパ節を触れない。上部消化管内視鏡検査で接合部に腫瘤があり病理adenocarcinoma。周辺の粘膜は生検の結果Barret食道。食道超音波ではリンパ節1つに病変が及んでおりステージⅢ(T3N1)。造影CTでは胃食道接合部の肥厚があるが遠隔転移は認めない。

 本患者で最も適切な治療はどれか?
A.  化学療法
B.  ステント留置し放射線治療
C.  放射線治療
D.  外科的切除
E.  外科的切除+周術期化学療法

 ❷食道胃接合部腺癌
 本症例はステージⅢの食道胃接合部腺癌であり、外科手術+周術期化学療法で治療する。腺癌リスクは男性、バレット食道、GERDである。バレット食道は正常の扁平上皮が円柱上皮や腺上皮に置き換わる異型性の状態を指し、健常人に比すると腺癌のリスクが格段に上がる。本症例は合併症もなく治療の禁忌もなく、根治的治療の適応である。外科手術単独群と外科手術に加えエピルビシン、シスプラチン、5FU(ECFレジメン)を手術前後の3ヶ月に追加する群とで比較した大規模RCTであるMAGIC試験では、5年生存率が単独群23%に対して併用群36%であった。これにより併用治療が行われる様になった。

 ❸その他の選択肢
放射線と化学療法単独は緩和治療で使われる。本症例は再発リスクは高いかもしれないが根治的治療を勧めるべきであろう。

Key Point
✓ 胃食道接合部腺癌は外科手術+周術期化学療法で治療する。

Cunningham D, Allum WH, Stenning SP, et al; MAGIC Trial Participants. Perioperative chemotherapy versus surgery alone for resectable gastroesophageal cancer. N Engl J Med. 2006;355(1):11-20. PMID: 16822992

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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