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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:拍動性耳鳴の評価/化膿性蜂窩織炎の治療/肥満手術後の合併症である吻合部縫合不全の診断

MKSAP 耳鼻 感染症 皮膚 薬剤 肥満 消化器 外科
MKSAPまとめです〜
さて、レジ翻訳部隊登場!
J先生とM先生。良い感じです!

それにしても米国のCA-MRSAの頻度やばいっすねえ。

拍動性耳鳴の評価
Evaluate pulsatile tinnitus

❶症例 
 66歳女性。数ヶ月持続している笛の鳴るような右耳鳴。曰く、運動時に音は速く大きくなり、心拍に同期している。難聴、めまい、ふらつきなし。
 身体所見では、体温 37.4℃、血圧 138/84mmHg、脈拍 84bpm。聴力検査異常なし。神経学的所見正常。

 最も適切な次に行うべきことはどれか?
A.  オージオメトリー
B.  右耳・眼・頸部の聴診
C.  遮音デバイスを試す
D.  ステロイド点鼻を試す

 ❷拍動性耳鳴
 拍動性耳鳴を呈した患者は、頭蓋内血管奇形を精査しなければならない。狭窄や動静脈奇形、グロムス腫瘍などである。 滲出性中耳炎でも同様の症状を呈するかもしれない。しかし、頭蓋内血管奇形があれば耳、眼、頚部を聴診すればbruitの存在を見つけられる可能性がある。仮にbruitが存在するか、なくても血管が原因として疑わしければ、ドップラーエコーやMRAにより頭蓋内血管奇形を否定する。

❸その他の選択肢
オージオメトリー:聴力低下のある患者には有効だが、身体所見上難聴は認めていない。 

遮音デバイス:可逆的な原因が見つからなかった場合に有効であるかもしれないが、Evidenceはいまいちである。他には認知行動療法などが試される。 

局所エストロゲンユースタキー管機能障害の患者に有効である。しかし、伝音難聴を伴う耳鳴の原因としてuncommonな上、診察上、伝音難聴も中耳の滲出もない。よってステロイド点鼻は次の一手に相応しくない。

Key Point
✓ 拍動性耳鳴を呈した患者は、頭蓋内血管奇形を精査しなければならない。狭窄や動静脈奇形、グロムス腫瘍などである。

Liyanage SH, Singh A, Savundra P, Kalan A. Pulsatile tinnitus. J Laryngol Otol. 2006;120(2):93-97. PMID: 16359136 

 

 

化膿性蜂窩織炎の治療
Treat a patient with purulent cellulitis

❶症例
 35歳男性、左前腕の引っかき傷の発赤と化膿で救急外来を受診した。
 身体所見では、体温37.4℃、血圧140/80mmHg、脈拍80/分、呼吸数14/分であり、左前腕に進出物を伴う3×2cmの紅斑があり、膿性の浸出液は認めるも、波動はなく、ドレナージできる膿瘍やリンパ節腫脹は認めなかった。
 血液検査では、白血球数10000/μLであり、好中球70%、リンパ球30%であった。

 本患者で最も適切な外来治療はどれか?
A.  アモキシシリン
B.  セファレキシン
C.  ジクロキサシリン
D.  ST合剤

 ❷化膿性蜂窩織炎
  この患者は化膿性蜂窩織炎であり、外来患者に対してはST合剤の治療が初期治療である。この感染症は、CA-MRSAによるものが最も多い(米国では・・・編者注)。最近近CA-MRSAは米国では急速に増加しているCA-MRSAは医療関連MRSAとは異なる細菌学的特徴と抗生物学的特性を持つ。当初は、CA-MRSA蜂窩織炎や膿瘍は、小児・学生・プロの運動選手・受刑者・同性愛者・アメリカンインディアンなどで広まっていたが、最近では一般住民レベルまで拡がっており、今では多くの患者がリスク因子を持っていない。CA-MRSAの皮膚・軟部組織感染症の外来患者に対して推奨されるエンピリックな抗菌薬はST合剤、テトラサイクリン(ドキシサイクリンなど)、クリンダマイシン、リネゾリドである。

❸その他の選択肢
 アモキシシリン、セファレキシン、ジクロキサシリンは、CA-MRSA以外のβ溶血レンサ球菌属に活性を持つβラクタム系抗菌薬である。これらの薬剤は非化膿性蜂窩織炎患者の治療薬である。

Key Point
✓ 外来のCA-MRSAによる化膿性蜂窩織炎の経験的治療の推奨は、ST合剤・テトラサイクリン・クリンダマイシン・リネゾリドである。

Liu C, Bayer A, Cosgrove SE, et al; Infectious Diseases Society of America. Clinical practice guidelines by the Infectious Diseases Society of America for the treatment of methicillin-resistant Staphylococcus aureus infections in adults and children. Clin Infect Dis. 2011;52(3):e18-55. Epub 2011 Jan 4. PMID: 21208910

 

 

肥満手術後の合併症である吻合部縫合不全の診断
Diagnose an anastomatic leak that is a complication of bariastric surgery

❶症例
 37歳女性。1日前からの腹痛で救急外来を受診した。悪心嘔吐、下痢、下血、血便はない。呼吸困難や咳はない。1週間前に肥満のためにRoux-en-Y胃バイパス術を腹腔鏡で施行され、2年前に胆のう摘出術を施行されていた。ビタミンB12と鉄と葉酸を含む複数のビタミンを内服補充している。
 身体所見では、発熱なし、血圧 110/75mmHg (起立性変化なし)、脈拍130/min、呼吸数12/minで、BMIは46である。
 血液検査では、血算、肝機能、膵酵素など異常なし。心電図は、洞性頻脈。単純腹部レントゲンは正常である。

 この患者で次に行うべき検査はどれか?
A.  胸部のCT血管造影
B.  緊急開腹術
C.  上部消化管内視鏡検査
D.  経口造影剤を使用した上部消化管造影

 ❷肥満手術後の縫合不全
 本症例で、最も適切なアプローチは、経口造影剤を使用した上部消化管のレントゲン撮影である。 この患者は、吻合部縫合不全を示唆する所見があるため、水溶性経口造影剤が存在診断と縫合不全部位の同定に役立ち、外科的手術の補助となる。縫合不全を疑う臨床症状はわずかで、熱や、腹痛、頻脈が見られる場合は、縫合不全を考えてもよいかもしれない。本患者の血液検査やレントゲンには特記する所見はなかったが、説明のつかない頻脈があり、これが唯一の特徴であり、見逃してはならない所見であった。脈拍120/分以上の持続的な頻脈は、消化管出血が無ければ肥満手術後の縫合不全によるリークを示唆する。腹部CTは、経口造影剤を使用したレントゲンに変わる吻合部リークを見つける方法である。

❸その他の選択肢
胸部CT血管造影:胸部CT血管造影は、手術後肺血栓塞栓症を見つけるのに役立つが、腹痛があり、胸痛や咳、呼吸困難、頻呼吸がないという臨床症状からは適切な選択肢ではない。 
緊急開腹術もしリークが見つかれば、外科的開腹術が必要となるが、患者は、血行力学的には安定しているため、現段階では不要。しかし、レントゲンで、リークや他の術後の合併症(ヘルニアなど)の所見がはっきりしなければ、外科的開腹による検索が必要になる。
上部消化管内視鏡検査:穿孔やリークの可能性があれば、上部内視鏡は禁忌である。

Key Point
✓ HR>120/分の持続的な頻脈は、消化管出血が無ければ肥満手術の縫合不全の予測因子である。

Bellorin O, Abdemur A, Sucandy I, Szomstein S, Rosenthal RJ. Understanding the significance, reasons and patterns of abnormal vital signs after gastric bypass for morbid obesity. Obes Surg. 2011;21(6):707-713. PMID: 20582574

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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