栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:特発性高カルシウム尿症/免疫正常者のHBV感染/汗疹の診断と治療/無症状の患者の左房粘液腫

MKSAPまとめです。
まったく同じフォーマットで別人が書いてますよー笑

 

特発性高カルシウム尿症
Idiopathic hypercalciuria

❶症例 
 36歳女性。昨年1年で3回の尿路結石を発症し、その評価目的に来院。各々は鎮痛薬で治療され、尿路閉塞には至らなかった。結石の解析も行われていない。父と兄弟に尿路結石の既往があり、内服薬はビタミン製剤のみである。
 血圧126/78、脈拍96、BMI27。CVA叩打痛なし。
 血清:BUN15㎎/dl、Ca8.9㎎/dl、Cre0.8㎎/dl、PTH normal
 尿:Ca379㎎/24hクエン酸521㎎/24h、シュウ酸26㎎/24h、尿酸359㎎/24h
 尿量:1500ml/24h KUB:右腎下極に6mm大の石灰化

 

 水分摂取励行の指導はした。次の一手はどれか?
A.  カルシウム制限食
B.  クロルタリドン(サイアザイド)  
C.  塩化カリウムのサプリ
D.  クエン酸ナトリウム


 ❷特発性高カルシウム尿症の治療
 高カルシウム尿症やシュウ酸カルシウム結石の患者は十分な水分摂取励行とサイアザイドで治療する。高カルシウム尿症は300㎎/24h以上と定義され、シュウ酸カルシウム結石の最も一般的な原因である。この患者は尿量が少なく、特発性高カルシウム尿症では血清カルシウムは正常で他の要因が見つからない。また尿路結石の家族歴を認める。治療前に画像評価を行うことが重要で、治療前後の経過を見て、結石の存在や再発などを評価する。サイアザイドは遠位尿細管でのカルシウム再吸収を促進する。

❸その他の選択肢
カルシウム制限食:カルシウム制限食は逆に尿路結石を増やし、長期に制限すると、骨密度が下がり骨折のリスクになる。
塩化カリウムカリウムはサイアザイドにより引き起こされるカリウム排泄に対し使用されるが初期治療で用いることはない。使うならクエン酸カリウムが塩化カリウムよりよく、結晶化を防ぐ作用がある。 
クエン酸ナトリウム:尿のアルカリ化はシュウ酸カルシウムを溶解度を上げるが、クエン酸ナトリウムよりクエン酸カリウムの方がよく、ナトリウムはカルシウムの尿中排泄を増やし結石を生じやすくする。また、尿のアルカリ化によって、リン酸カルシウム結石は起こりやすくなる。

Key Point
✓ 特発性高カルシウム尿症にはサイアザイド系利尿薬

Worcester EM, Coe FL. Clinical practice. Calcium kidney stones. N Engl J Med. 2010;363(10):954-963. PMID: 20818905

 

 

免疫正常者のB型肝炎
Immune-tolerant hepatitis B virus infection

❶症例
 26歳女性。健康診断で肝炎の検査を受けた。自覚症状はない。ラテン系アメリカ人で2つ上の兄弟がB型肝炎である。悪性腫瘍の家族歴はなく、内服薬もない。
 INR0.9、ALP90U/l、ALT18U/l、AST14U/l、Alb4.2g/dl、T-Bil2.2mg/dl、D-Bil0.2mg/dl
 HBs抗原陽性、HBs抗体陰性、HBc抗体陽性、HBe抗原陽性、HBe抗体陰性
 HBV DNA>200000U/ml

 
 次の一手はどれか?

A.  B型肝炎ワクチン
B.  肝生検
C.  AST/ALTのモニタリング
D.  テノホビル


 ❷免疫正常者のB型肝炎の治療 

 最も適切なマネージメントは3-6ヶ月毎にAST/ALTをモニタリングすることである。HBVの免疫正常者での自然経過は、自身の免疫により活動性のないキャリアに落ち着く。AST/ALTが正常であることから、この患者は免疫正常者の慢性HBV感染症である。これはHBVが蔓延している東南アジアのような地域で産道感染を起こしている際に典型的である。AST/ALTが正常である限り、肝疾患増悪の危険性は少ない。AST/ALTの上昇があり、活動性の肝炎が疑われれば、肝生検を考慮してもよく治療が開始される。

❸その他の選択肢
B型肝炎ワクチン:すでにHBVに暴露しておりワクチンによってセロコンバージョンは起こさないだろう。
肝生検:AST/ALT上昇があれば施行し、炎症や線維化の所見があれば抗ウィルス薬を投与する。
テノホビル:免疫正常者では増悪が予測されないため勧められない。抗ウィルス薬は生涯飲まないといけなくなる可能性がある。

Key Point
✓ 免疫正常者のHBV感染では3-6ヶ月毎のモニタリングを行う。

Lok AS, McMahon BJ. Chronic hepatitis B [erratum in Hepatology. 2007;45(6):1347]. Hepatology. 2007;45(2):507-539. PMID: 17256718

 

 

汗疹の診断と治療
Diagnose and treat miliaria

❶症例
 新規に出現した皮疹を訴える37歳男性。 もともとホジキンリンパ腫の化学療法で外来フォローされており、2日前に血圧低下、頻脈、発熱性好中球減少症で入院した。入院前までは全身状態は良く、入院時の身体所見や画像検査では熱源は不明であり、セフタジジムで加療が始まった。
 身体所見では、体温37.9℃、血圧138/78 mm Hg、脈拍87/min、呼吸数12/min、BMI:28。状態は良くなっているようである。身体所見は特記事項なく、本日の好中球数は490/µLである。血液培養と尿培養は陰性であり、皮膚所見は以下に示す。 

f:id:tyabu7973:20120927104028j:plain(MKSAPより)

 この患者に対する最も適切な介入は?
A.  冷却
B.  セフタシジムの中止
C.  低アレルギーのシーツを使用
D.  経口ステロイド投与

 ❷汗疹
 本症例の診断は汗疹である。最も良い治療法としては、エアコンや扇風機などでクーリングすることである。皮膚を乾燥させるためにタルカムパウダーやコーンスターチパウダーを使用することもある。汗疹はエックリン汗腺の閉鎖や破裂が原因であるため、皮膚がほてったり詰まっている時に生じる。 汗疹は、臨床所見に基づいて診断され、入院中の患者で体の弛緩した部分に限局した丘疹を認めた場合は疑うべきである。汗疹は炎症の程度によって水疱、丘疹、膿疱など様々な形態をとる。症状は、掻痒感や熱感、ちくちくした感じなど様々で、薬剤による副作用と誤診されることも多いが、薬疹は体表全面だけで無く後面も含めた全体にびまん性に生じる。薬疹は丘疹が多いが、結節、局面などを来す。

❸その他の選択肢
セフタシジムの中止:セフタジジムは好中球が完全に回復するまでは、継続すべきである。 
低アレルギーのシーツ:
汗疹は限局したアレルギーではないため、低アレルギーのシーツに変えることは適切ではない。
経口ステロイド投与:ステロイド内服は代謝や感染の合併症をもたらすため、汗疹には使用しない。掻痒感がある場合は、低力価コルチコステロイド軟膏を局所に使用することもある

Key Point
✓ 掻痒感や熱感やチクチク感と関連のある紅斑性丘疹や丘疹小水疱として存在する汗疹は、クーリングで対応するのが最も良い。

Feng E, Janniger CK. Miliaria. Cutis. 1995;55(4):213-216. PMID: 7796612 

 

 

無症状の患者の左房粘液腫
Manage left arterial myxoma in an asymptomatic patient

❶症例
 大学入学前の健康診断で異常を指摘された19歳女性。 無症状で、既往歴や家族歴も特記事項なし。内服薬もなし。
 身体所見では、体温は正常、血圧110/50 mm Hg、脈拍60/min、呼吸数1 2/min. 触知するリンパ節はなく、心尖部にLevine2/6の拡張期雑音を聴取する。心エコーでは、3.5cmの可動性のある腫瘤が心房中隔の中央に接しており、拡張期に僧帽弁の開口部に脱出している。心房・心室の大きさは正常であり、中隔欠損はない。

 本患者で最も適切な治療はどれか?
A.  心房腫瘍のカテーテルによる生検
B.  第ⅤLeiden因子測定
C.  心房腫瘍の外科的切除
D.  ワーファリン

 ❷左房粘液腫
 本症例で最も適切な管理は心房腫瘍の外科的切除である。拡張期雑音精査のために施行された心臓超音波で無症候性の若年女性の心房腫瘍が発見された。本症例で見られるような左房腫瘍は粘液腫である。これは僧帽弁の血流を阻害することで拡張期雑音の原因となる。左房粘液腫は全身性塞栓や脳卒中の原因となる。粘液腫は無症候性患者でも、全身性の塞栓イベントを回避するために手術を行うべきである。

 ❸その他の選択肢
カテーテルでの生検:経皮的にカテーテルによる生検を行うことは、組織診断を行う上では重要である。右心系に腫瘤が止まっている場合や悪性が疑われる場合には、カテーテルによる生検はより侵襲的な手技を回避し診断のために考慮すべきである。この患者の場合は、左心房の腫瘤であり、生検により脳梗塞の危険性があるため、カテーテル生検は推奨できない。 
第Ⅴライデン因子測定:
左房内腫瘍がある場合は、多くは粘液腫であり血栓であることは稀であるため、過凝固状態の検査は不要である。第Ⅴライデン因子の測定は不要である。
ワーファリンワーファリンは、心房の粘液腫を持つ患者に対して脳梗塞予防として使用されているが、その効果ははっきりしたものではない。外科的切除を安全に施行できる患者には適切な治療ではない

 心臓に腫瘤を持つ若い患者では、カーニー複合を考えなければならない。この疾患は、常染色体優性で内分泌腫瘍であり、腫瘍は神経鞘腫である。このような腫瘍の家族歴は、心房の粘液腫を持つ若い患者の診断には有用である。

Key Point
✓ たとえ無症状でも全身性塞栓イベントを避けるために、粘液腫は外科的切除すべきである。

Elbardissi AW, Dearani JA, Daly RC, et al. Embolic potential of cardiac tumors and outcome after resection: a case-control study. Stroke. 2009;40(1):156-162. PMID: 18948602

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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