栃木県の総合内科医のブログ

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論文:RCT 脳卒中かTIA既往のある患者に対するピオグリタゾンの効果

脳卒中TIA既往のある患者に対するピオグリタゾンの効果
Pioglitazone after ischemic stroke or transient ischemic attack
n engl j med 374;14 nejm.org April 7, 2016

【背景】
 虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の患者は、現状の予防的治療を行っても将来的に心血管イベントを起こすリスクが高い。インスリン抵抗性は脳卒中心筋梗塞のリスクであり、インスリン感受性を改善するピオグリタゾンが、脳血管疾患患者に利益をもたらす可能性がある。

【方法】
 多施設共同二重盲検ランダム化比較試験が行われ、最近虚血性脳卒中またはTIAに罹患した3876人をピオグリタゾン群(45mg/日まで増量)とプラセボ群に割り付けされた。組み入れ基準として、糖尿病ではないがインスリン抵抗性がある患者とし、インスリン抵抗性の定義は、HOMA-R≧3.0とした。プライマリアウトカムは、致死的・非致死的な脳卒中または心筋梗塞とした。

【結果】
 4.8年のフォローアップでプライマリアウトカムは、ピオグリタゾン群 175/1939人(9.0%)、プラセボ群 228/1937人(11.8%)で発生し、HR 0.76(0.62-0.93)だった。糖尿病を発症したのは、ピオグリタゾン群73人(3.8%)、プラセボ群149人(7.7%)で、HR 0.48(0.33-0.69)だった。全死亡は両群間で有意差は認められなかった。HR 0.93(0.73-1.17)。

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(本文より引用)

 ピオグリタゾン群はプラセボ群と比較して、4.5kg以上の体重増加が多く(ピオ群 52.2%、プラセボ群 33.7%)、浮腫の頻度が高く(ピオ群 35.6%、プラセボ群 24.9%)、手術や入院を必要とする骨折の頻度が高かった(ピオ群 5.1%、プラセボ群 3.2%)

【結論】
 最近の虚血性脳卒中またはTIA患者で、糖尿病ではないがインスリン抵抗性が高い患者を対象としたRCTでは、ピオグリタゾン投与群はプラセボ投与群よりも、脳卒中または心筋梗塞リスクが低かった。ピオグリタゾンはプラセボと比較して、糖尿病発症リスクは低いが、体重増加・浮腫・骨折リスクを高めた。
 
【批判的吟味】
・論文のPICOは、
P:最近6か月以内に虚血性脳卒中TIAを発症した糖尿病ではない3876人
  HOMA-R≧3.0
I:アクトス群(15mgから開始し徐々に45mgまで増量)
C:プラセボ
O:複合アウトカム(致死的・非致死的心筋梗塞または脳卒中
T:RCT/ITT解析
アドヒアランス率が低く、ピオグリタゾン群 60%、プラセボ群 67%。
脳卒中TIA発症から平均81日、平均63歳、脳梗塞が87%、BMI 30
ピオグリタゾンで100人5年間治療すると、脳卒中心筋梗塞を3人減らし、骨折による入院を2人増やす

【個人的な意見】
 さあ、ここに来てまたまた悩ましいstudy。副作用報告もだいぶ出揃ったところで、この効果です。興味深いなあ。糖尿病発症は予防しているものの、これも血糖を下げた効果というわけではなく、薬剤固有の効果なんでしょうね。追加検証を待ってみますが、症例を選べば可能性ありかもしれません。

✓ 糖尿病ではない虚血性脳卒中またはTIAを最近起こした患者では、ピオグリタゾンが脳卒中心筋梗塞有意に減らす