読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:カリブ海でのバカンス/慢性リンパ性白血病の治療/肺塞栓症の再発リスク評価/男性不妊の診断

MKSAPまとめです。

ゴールデンウィークカリブ海でバカンスでもどうですか?では張り切って!

 

カリブ海でのバカンス
Vacation in Caribbean

❶症例 

 35歳男性。4月に来院。24時間続く複視と嚥下障害(固形物、水分)を主訴に救急外来を受診。妻も同様の症状で外来を受診している。2人は2日前に7日間のカリブ海クルーズからコネチカット州の自宅へ帰って来ており、シュノーケリングやバーベキュー(豚肉)、森でのハイキングをした。その他、ROSは陰性。
 バイタル正常。見当識障害なし。発声障害、構音障害、両側眼球運動障害あり。嘔吐反射なし。両上肢に感覚障害を伴わない筋力低下あり。記銘力低下は明らかでない。 

 本患者の診断は?
A.  ボツリヌス
B.  ギラン・バレー症候群  
C.  麻痺を伴う貝・甲殻類中毒
D.  ダニ関連感染症


 ❷ボツリヌス
 最も考えられる診断はボツリヌスである。毒素に汚染された缶詰や食品摂取(乳児のハチミツ摂取)後の芽胞形成、創部からの侵入が一般的な感染経路であるが、これらを区別することは難しい。いずれにしても、毒素曝露後1-5日で発症し、著明な球麻痺症状を伴う下行性の弛緩性麻痺、発熱なし、感覚障害なし、が古典的な3徴である。球麻痺には複視(Diplopia)、構音障害(Disarthria)、発声障害(Disphonia)、嚥下障害(Disphagia)の4Dが含まれ、呼吸機能障害は上気道の閉塞と横隔膜の筋力低下によって起こりうる。診断は血清、便、胃液または食品からの毒素の同定で行われる。治療は対症療法、抗毒素血清、呼吸状態の観察によって成される。抗菌薬投与は院内感染などの合併症のある際考慮される。

❸その他の選択肢
ギラン・バレー症候群眼球運動障害を呈し、ボツリヌスとの鑑別が難しい。しかし、ギラン・バレー症候群ではカンピロバクターによる胃腸炎などの先行感染を伴い、麻痺は上行性で感覚障害を伴う。この患者ではそのような所見はない。
貝・甲殻類中毒:二枚貝やカキ、ホタテなどの貝類の摂取によって起こり、それらの中で微生物が産生した神経毒(saxitoxin)が蓄積する。特に気温の高い状況で起こりやすい。症状は摂取後、数分から数時間で起こり、唇や舌のしびれから始まり、手足の指に進展し、腕や足の制御が効かなくなる。毒素の量によっては、胸郭や腹部の麻痺により呼吸不全となることもある。 
ダニ関連感染症米国では北西部の太平洋沿岸に多く、近位筋優位の下行性麻痺をきたす。この患者は最近の同地域への渡航もなく、所見も合わない。

Key Point
✓ ボツリヌスの古典的3徴は球麻痺を伴う下行性の弛緩性麻痺、発熱なし、感覚障害なし

Cherington M. Botulism: update and review. Semin Neurol. 2004;24(2):155-163. PMID: 15257512

 

 

慢性リンパ性白血病の治療
Treatment of CLL

❶症例
 45歳男性。7ヶ月で徐々に増悪する倦怠感と蒼白。同時に発熱、体重減少、寝汗、痛みを認めていた。

 体温38℃、血圧140/70、脈拍110、呼吸数28。頚部、腋窩にリンパ節腫大、脾臓を肋骨弓下4㎝触れる。
 Hb 6.5 g/dl
 WBC165000(Neu30% Lym70%) /μl
 Plt 9000 /μl
 β2-Microglobulin 12.4 mg/l
末梢血スメアでは多数の小さなリンパ球様の細胞と異型細胞。 
末梢血フローサイトメトリーではCD20、CD52、CD10、CD5陽性のモノクローナルなB細胞、ζ鎖関連蛋白70あり。
遺伝子解析では17p欠損、大きな遺伝子変異はなかった。

 
 治療はどれか?

A.  同種造血幹細胞移植
B.  シクロホスファミド∔ビンクリスチン∔プレドニゾン
C.  フルダラビン
D.  リツキシマブ


 ❷CLLの治療 

 最も適切な治療はアレムツズマブをベースにした化学療法と同種造血幹細胞移植(HSCT)である。この患者は新規に診断されたリンパ節腫脹、脾腫、貧血、血小板減少を伴う、StageⅣのCLLである。また、β2-Microglobulin の上昇、重鎖の変異を伴わないζ鎖関連蛋白の存在、17p欠損などの予後不良因子が陽性である。治療しない場合の全死亡の中間値は3年以内である。治療開始基準はB症状を伴うCLL、リンパ節腫脹や肝脾腫による症状、増悪する血球減少が含まれる。好発年齢は70代であり、HSCTの適応頻度は少ない。GVHDなどの拒絶反応は高齢になるほど増える。この患者のように予後不良因子の多い若年者ではHSCTが良い適応である。

❸その他の選択肢
その他の薬剤は予後不良因子の多い患者の第一選択とはならない。

Key Point
✓ Stageの進行した予後不良因子の多い若年者のCLLでは同種造血幹細胞移植の適応である

Dreger P, Montserrat E. Autologous and allogeneic stem cell transplantation for chronic lymphocytic leukemia. Leukemia. 2002;16(6):985-992. PMID: 12040430

 

 

肺塞栓症の再発リスク評価
Assess risk for recurrent pulmonary embolism

❶症例
 45歳男性、CT血管造影で見つかった急性肺塞栓症治療後、16週間のフォローアップで来院。過去の静脈ドップラーエコーでは、DVTを示唆する所見はなかった。当初の抗凝固療法は、低分子ヘパリンとワーファリンで開始し、その後ワーファリン単独へ切り替えた。INRは2.5〜3.0で安定していたため、受診1ヶ月前にワーファリンを終了した。患者の状態は悪くなく、長距離トラック運転手の仕事に復帰し、現在、内服している薬剤はない。
 身体所見では、体温36.9℃、血圧132/82mmHg、脈拍82/min、呼吸数16/min、BMI 31。心肺の診察は異常なく、足に圧痛や腫脹は無い。血液検査所見は以下 

f:id:tyabu7973:20160508191528p:plain

(MKSAPより)

 次のうち最も適切な管理方法はどれか?
A.  BNPを測定する
B.  下肢の超音波Doppler検査を行う
C.  1ヶ月後にd-dimerを催促呈する
D.  抗凝固療法を再開する

 肺塞栓症の再発リスク
 肺塞栓症の再発リスクを評価すべきである。 DVTやPEを示唆する所見がなければ、3ヶ月の抗凝固療法を施行し、抗凝固療法を中止することのリスクとベネフィットを評価しなければならない。本患者は比較的若く、健康であり、特発性PEのエピソードでの抗凝固療法を行った3ヶ月間は特に問題なく経過していた。しかし、その後、再びほとんど動かない座りがちな仕事に戻り、再診時にD-dimerが上昇していた。高感度のD-dimerは再発リスクが上がったことを示唆しており、ワーファリン治療後3〜4週間後に測定すべきである。D-dimer陽性であれば、抗凝固を続けるべきであり、正常であれば抗凝固療法を中止する一助となる。

❸その他の選択肢
BNP測定:急性PEや慢性塞栓症による肺高血圧症を考えるのであれば、BNPを測定しても良いが、正常値であっても、抗凝固療法を再開しないという選択にはならない。
下肢の超音波Dopplaer検査:
DVTを考慮するなら下肢静脈ドップラーエコーは有用であるが、この検査が陰性であっても抗凝固療法を開始することが適切である。
d-dimer再検:1ヶ月月後にD-dimerが正常化していても、抗凝固療法を先延ばしにしても、現時点ではPEやDVTのリスクは高いままで経過を見ることになってしまう

Key Point
✓ 抗凝固療法後のD-dimerの結果は、血栓再発の予測に役立つ。

Guyatt GH, Akl EA, Crowther M, Gutterman DD, Schu?nemann HJ; American College of Chest Physicians Antithrombotic Therapy and Prevention of Thrombosis Panel. Executive summary: Antithrombotic Therapy and Prevention of Thrombosis, 9th ed: American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines. Chest. 2012;141(2 suppl):7S-47S. PMID: 22315257

 

 

男性不妊の診断
Diagnose male infertility

❶症例
 29歳男性が不妊を主訴に来院した。2年間は子作りに励み、妻は解剖学的に異常はないと判断された。患者本人は性欲はあるし、勃起機能不全もなく、思春期異常もなかった。家族歴に特記事項はなく、薬剤歴なし。
 身体所見では、バイタルは正常で、BMI 22、生殖器視診で異常はなく、精巣の大きさも正常であった。その他、身体所見上特記事項はなし。

 本患者で次に行うべき診断のための検査はどれか?
A.  LH・FSH測定
B.  精液分析
C.  精巣超音波
D.  総テストステロン測定

 ❷男性不妊
 精液検査は男性不妊の診断のための唯一有用な検査である。48〜72時間性行為を控え、その後、十分な精液を採取する。結果が異常であれば、その再検査で確認する。 精巣ゴナドトロピンやテストステロンの値を調べることは、初期の検査としては不適当である。もし精液の分析が異常であれば、LHやFSHを測定し、ライディッヒ細胞やセルトリ細胞の機能を調べる。 精巣超音波検査は、たとえ異常があったとしても、不妊の評価はできない。

Key Point
✓ 精液の分析が、男性不妊の唯一の最も有用な検査である。

Cooper TG, Noonan E, von Eckardstein S, et al. World Health Organization reference values for human semen characteristics. Hum Reprod Update. 2010;16(3):231-245. PMID: 19934213

 

MKSAP for Students 5

MKSAP for Students 5

 
MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)