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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:非典型的なOA/中毒性巨大結腸症/慢性浮腫/甲状腺緊急

MKSAPまとめ。

今週は苦戦を強いられeven。 

 

非典型的なOA
Atypical OA

❶症例 

 56歳男性。6年間持続している朝のこわばりを伴う手の痛み。ここ2年は両股関節の痛みもある。ナプロキセン内服で痛みのコントロールをしている。バイタルは正常。両手関節とMCP関節に圧痛。股関節は伸展と回内で痛む。手関節と股関節には可動域制限がある。レントゲンでは股関節、MCP関節、PIP関節に関節裂隙の狭小化を認め、MCPと股関節には骨棘を認める。

 診断的検査は?
A.  抗核抗体
B.  リウマチ因子 
C.  TSAT
D.  血清尿酸値


 ❷非典型的なOA
  ヘモクロマトーシスによる二次性OAが疑われたらTSATを測定すべきである。特に外傷歴のないMCPのOAを見たらヘモクロマトーシスを疑う。ヘモクロマトーシス患者の40-60%ではOAのような関節症を発症し、肩、股関節、膝、足首も罹患することがある。一次性とは違い、MCP関節のレントゲンでは鉤状の骨棘形成が見られる。軟骨石灰化も同様に見られる。ヘモクロマトーシスを疑ったらTSATを測定するのが最も感度が高い検査である。遺伝子検査も一助となるかもしれない。

❸その他の選択肢
抗核抗体:SLEを疑った時の検査である。典型的には関節リウマチのような関節所見でびらんがない。漿膜炎や皮疹など他のSLE所見がなくレントゲン変化も生じない。
リウマチ因子:関節リウマチ診断の有用であるが、この患者は対称性の関節変化があり、関節裂隙の狭小化、骨棘形成などが関節リウマチには非典型的。 
血清尿酸値:痛風性関節炎は関節リウマチの主たるmimicであるが、嚢胞形成や結節がないため否定的である。この時期に尿酸値を測る意味もない。

Key Point
✓ MCP関節のOAはヘモクロマトーシスで典型的

Carroll GJ, Breidahl WH, Bulsara MK, Olynyk JK. Hereditary hemochromatosis is characterized by a clinically definable arthropathy that correlates with iron load. Arthritis Rheum. 2011;63(1):286-294. PMID: 20954257 

 

中毒性巨大結腸症
Toxic megacolon

❶症例

 37歳女性。2週間の血便・下痢の後、突然の腹痛で救急外来を受診した。下痢は1日15回に増えている。2年前に潰瘍性大腸炎と診断されており、アザチオプリンを内服している。
 病的な印象で、補液後のバイタルは38.9℃、血圧70/40、脈拍148、呼吸数35。腹部は腸蠕動音減弱、膨満し、広範囲に軽度圧迫による圧痛を認める。WBC16800。Figure 34.
(MKSAPより)

 適切なアプローチは?
A. 
 CT
B.  手術
C.  インフリキシマブ
D.  ステロイド


 ❷中毒性巨大結腸症の治療

 中毒性巨大結腸症は潰瘍性大腸炎の最も重篤な合併症であり、血行動態不安定を伴う腹部膨満・圧痛は緊急手術の適応である。本症は1週間以上の薬物治療抵抗性の血便・下痢を呈する。患者は頻脈、発熱、低血圧を呈し、腹部は蠕動音減弱、下腹部の膨満・圧痛があり、しばしば腹膜刺激徴候を認める。単純レントゲンでは横行結腸が侵され、6㎝以上に腫大する。中毒性巨大結腸症は穿孔を起こすと40%と、穿孔しなかった場合の2%と比べると高い致死率を誇る。半数は腸管安静、ステロイド、抗菌薬、補液などの内科的治療に反応するが、この患者のように増悪すると手術の適応となる。

❸その他の選択肢
CT:膿瘍形成やマイクロパーフォレーション、腸管拡張、壁肥厚の精査にはなるがマネージメントを変えない。
インフリキシマブ:潰瘍性大腸炎のフレアに効果的であるが、中毒性巨大結腸症の患者には使用されない。
ステロイド中毒性巨大結腸症の治療に使用できるが、臨床的に安定している場合に限る。

Key Point
✓ 循環動態が不安定な中毒性巨大結腸症は手術の適応

Gan SI, Beck PL. A new look at toxic megacolon: an update and review of incidence, etiology, pathogenesis, and management. Am J Gastroenterol. 2003;98(11):2363-2371. PMID: 14638335

 

 

 

慢性浮腫
Chronic edema

❶症例
 68歳の女性、8ヶ月前からの両側下腿の発赤で来院。発赤は徐々に悪化しているが、痛みはさほどでもない。市販の抗菌薬の軟膏を試したが、改善なし。先行する外傷はなく、静脈血栓や発熱などなし。バイタルは正常で、両側の足背の浮腫を認める。皮膚所見は以下。

Figure 64.

(MKSAPより)

 診断は?
A.  皮脂欠乏性湿疹
B.  蜂窩織炎
C.  深部静脈血栓症
D.  うっ滞性皮膚炎

 ❷うっ滞性皮膚炎
 静脈の血圧高値、慢性炎症、微小血管炎が静脈うっ滞性皮膚炎と深い関連があり、発赤と足首正中の温かい皮膚の他にも、色素沈着、ヘモジデリン沈着と拡張蛇行静脈は診断の一助となる。

❸その他の選択肢
皮脂欠乏性皮膚炎:乾燥肌の高齢者の前脛部にでき、赤く、乾燥し、陶器にヒビが入った様な所見を呈する。
蜂窩織炎両側で、熱や白血球増加がなく、痛みも軽度であればうっ滞性皮膚炎と考えられる。また、蜂窩織炎は、急性の経過であり、うっ滞性皮膚炎は二次性感染がなければ、数週間から数ヶ月同じ症状が続く。

深部静脈血栓症大腿や腓腹の腫脹や疼痛がなければ、DVTの可能性は低くなる

Key Point
✓ うっ滞性皮膚炎は、発赤と足首正中の温かい皮膚が典型的であり、湿疹の変化と関連がある

Wolinsky CD, Waldorf H. Chronic venous disease. Med Clin North Am. 2009;93(6):1333-1346. PMID: 19932334

 

 

甲状腺緊急
Thyroid emergency

❶症例
 62歳の男性が発熱と割と急性の重篤な腹痛で来院。不快感と動悸、呼吸困難、下痢、嘔気嘔吐、数ヶ月での9.1kgの体重減少もある。後部硬直なし、最初に腹痛を自覚した数週間前のCTでは異常なし。

 6ヶ月前にGraves病と診断され、メチマゾールで加療開始されたが、他に薬剤歴なし。Physical examination shows an anxious and agitated man.体温38.9℃、血圧160/90 mm Hg、脈拍130/分 整、 呼吸数22/分、Levine 2/6の全収縮期雑音とラ音を聴取、目の診察では、急性感染症を示唆する所見はなく、咽頭所見異常なし。甲状腺は硬く、両側とも腫れていたが、限局した腫瘤なく、甲状腺の血管雑音を聴取。頚部リンパ節腫脹なし。皮膚は暖かく湿潤。右肋骨弓下に肝臓を2cm触知。下腿浮腫あり。

 TSH は0.01 µU/mL (0.01 mU/L)、fT4は8.2 ng/dL (106 pmol/L)、T3は650 ng/dL (10 nmol/L)

 診断は?
A.  euthyroid sick syndrome
B.  粘液水腫昏睡
C.  亜急性甲状腺
D.  甲状腺クリーゼ

甲状腺クリーゼ
 甲状腺クリーゼの診断。甲状腺中毒でもクリーゼでもT4とT3は上昇するが、クリーゼの方が高値である。甲状腺中毒は、無治療の甲状腺機能亢進症患者や薬剤を内服できていない人によく起こるが、外科手術や外傷、ヨードを含む造影剤にさらされた場合にも起こりうる。

❸その他の選択肢
euthyroid sick syndrome:このような症状はなく、甲状腺機能亢進症やT4 とT3の上昇はないし、Graves病の既往がある時点で、ありえない。
粘液水腫昏睡:
甲状腺機能低下症が基礎にあり、精神的な変化や低体温、低喚起、低Na血症を呈する緊急疾患である。本患者ではT3とT4は著明に上昇しており、甲状腺機能は低下していない。
亜急性甲状腺炎:甲状腺組織が破壊され、甲状腺ホルモンが放出され、甲状腺機能亢進状態を引き起こし、甲状腺の圧痛がある。その点でこの患者には合致せず、また、本患者はもともと慢性的に甲状腺機能異常があり、亜急性甲状腺炎の臨床像とは合わない。

Key Point
✓ 小甲状腺クリーゼは発熱や頻脈、心不全、腹部の違和感、下痢、嘔気、嘔吐、黄疸といった症状が出る点で甲状腺中毒と区別される

Nayak B, Burman K. Thyrotoxicosis and thyroid storm. Endocrinol Metab Clin North Am. 2006;35(4):663-686. PMID: 17127140

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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