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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:糖尿病発症/oncologic emergency/アスピリン万能説/心房細動治療

MKSAPまとめです。果たしてアスピリンは万能なんでしょうか。

 

糖尿病発症
Onset of DM

❶症例 

 15歳女児。頻尿と尿意切迫感で来院。ここ2ヶ月の間、毎日5リットルの水分を摂取している。母親は2型糖尿病バイタル正常で身体所見は特記所見なし。BMI35。脱水所見なく、呼気ケトン体は陰性。HbA1c8.7% 随時血糖324mg/dl 電解質正常 尿ケトン陰性

 血糖管理の上、次にすべき検査は?
A.  空腹時Cペプチド
B.  空腹時インスリン  
C.  糖負荷Cペプチド
D.  抗GAD抗体


 ❷1型と2型の鑑別
 この患者は、ICAや抗GAD抗体のような抗体を測定すべきである。肥満があり2型糖尿病の家族歴があるが、インスリン分泌が保たれた1型の初期を見ている可能性もある。若年では1型と2型の鑑別をできる限り早く行う必要がある。ICAや抗GAD抗体が陽性であれば、すぐにインスリンを導入すべきである。そうすることで長期的にインスリン分泌機能が保たれ、低血糖を起こさない良好な血糖管理が可能となる。仮に抗体が陰性であれば、2型糖尿病として生活習慣の改善やメトホルミンの内服を開始できる。

❸その他の選択肢
空腹時Cペプチド・空腹時インスリン ・糖負荷Cペプチド:Cペプチドやインスリンを測ることは1型と2型を鑑別する上で重要ではない。肥満、高血糖があり、ケトン体がなくアシドーシスもない患者はインスリン分泌が保たれている。したがって、Cペプチドとインスリンは高値であり型はわからない。

Key Point
✓ 若年者の糖尿病ではできる限り早く病型診断を

Effect of intensive therapy on residual beta-cell function in patients with type 1 diabetes in the diabetes control and complications trial. A randomized, controlled trial. The Diabetes Control and Complications Trial Research Group. Ann Intern Med. 1998;128(7):517-523. PMID: 9518395

  

悪性腫瘍の救急
Oncologic emergency

❶症例
 63歳男性が救急外来を受診。2日前から若干の腰痛、下肢筋力低下、排尿困難感を自覚している。1年前に前立腺癌の外科的切除を行っている。他に既往はない。T36.8℃ BP138/60 脈拍94 両下肢筋力低下、Th9以下の痛覚障害、肛門括約筋は軽度弛緩。PSA34ng/ml。胸椎MRIでは造影効果を伴う硬膜外病変が脊髄を圧迫している。

 コルチコステロイド投与の上、歩行予後に最も寄与するものは?
A. 
 抗アンドロゲン療法
B.  化学療法
C.  除圧術
D.  放射線療法


 ❷悪性腫瘍による脊髄圧迫 

 この患者は除圧術をした後、放射線療法をすべきである。脊髄圧迫の最もcommonな要因は転移であり、直接浸潤や病的骨折がある。脊髄圧迫の初発症状は痛みであり、神経症状は後から出てくる。筋力低下や感覚障害が起こる前に診断すべきであり、神経学的予後は多くの患者で不良である。コルチコステロイドは、痛みの改善や神経学的予後を考えて投与すべきである。デキサメサゾンがよく使われる。可能であれば除圧術を行い、その後放射線療法を行う。歩行改善を考えると、放射線療法単独よりも効果を期待できる。

❸その他の選択肢
抗アンドロゲン療法:GnRHアナログや外科的去勢を併用した抗アンドロゲン療法は治療後再発例や転移症例にアジュバント療法として用いられる。脊髄圧迫には無効である。
化学療法
リンパ腫のような感受性が極めて高い腫瘍でもない限り、脊髄圧迫に効果は期待できない。
放射線療法:除圧術の後に放射線療法をすることは、放射線療法単独と比較した研究で長期的な利益が証明されている。

Key Point
✓ 除圧術は悪性腫瘍による歩行予後を改善する

George R, Jeba J, Ramkumar G, Chacko AG, Leng M, Tharyan P. Interventions for the treatment of metastatic extradural spinal cord compression in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2008(4):CD006716. PMID: 18843728

  

アスピリン万能説
He can do everything

❶症例
 52歳の女性が、定期受診。母親が72歳で大腸癌と診断されたが、彼女自身は精査されたことがない。食事や薬剤で大腸癌のリスクを下げたいとのことである。閉経前で健康で、薬剤歴なし。身体所見も特記事項なし。

 大腸内視鏡以外で推奨される治療は?
A.  アスピリン
B.  セレコキシブ
C.  エストロゲン補充
D.  薬剤なし

 ❷大腸癌の予防
 大腸癌のリスクを下げる特別な薬剤はない。最新のデータでは、大腸癌のハイリスクではない人に対する大腸癌のリスクを下げる薬剤のリスク&ベネフィットは明らかではない。アスピリンやNSAIDsの使用は大腸癌のリスクを下げるというデータはあるが、消化管出血や出血性梗塞、高血圧症、腎不全などを引き起こしうる。

❸その他の選択肢
アスピリン・セレコキシブ:ポリープをできにくくする作用があるが、無症候性の家族歴のある患者の発がんのリスクを抑えるために使用した場合の効果は未知である。

エストロゲン補充:閉経前の女性に対するエストロゲン補充療法は、大腸癌のリスクを下げるというデータはあるが、乳癌や子宮内膜癌のリスクと関係があるため、現在は推奨されない。

Key Point
✓ 薬剤による予防はリスク>ベネフィット

Dubé C, Rostom A, Lewin G, et al; U.S. Preventive Services Task Force. The use of aspirin for primary prevention of colorectal cancer: a systematic review prepared for the U.S. Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2007;146(5):365-375. PMID: 17339622

  

心房細動治療
Treatment of Af

❶症例
 56歳の男性、発作性心房細動で受診。徐々に呼吸が短くなってきており、5年前に、急性心筋梗塞で心原性ショックとなり、左前下行枝に薬剤漏出性ステントを入れた。リシノプリル、ジゴキシン、フロセミド、アスピリン、クロピドグレル、エプレレノン、シンバスタチン、未分画ヘパリン内服中。

 熱はなく、血圧は92/65mmHg、脈拍75/分、SpO2 95%(鼻カヌラ3 L)、心臓の検査では、中心静脈圧が12 cm H2Oであることがわかった。心音は整で、Levine 2/6の全収縮期雑音を心尖部で聴取。ギャロプリズムも聴取した。両側下肺野でラ音を聴取。経胸壁心エコーでEF32%

 適切なAfの治療は?
A.  アミオダロン
B.  ジソピラミド
C.  ドロネダロン
D.  フレカイニド

E.  ソタロール

 ❷EF低下したAf
 アミオダロンは、副作用もあるが、Afの予防には最も効果的な薬剤であり、心不全や左室肥大、心血管疾患、過去の心筋梗塞患者にも安全に使用できる。

また、β遮断作用があり、 レートコントロールの効果がある。心不全が安定したところでβブロッカーを始めるべきである。

❸その他の選択肢
ジソピラミド:陰性変力作用があり、左室機能の低下した人や心不全患者には有害である。
ドロネダロン:
NYHAのclass IVの心不全や、class II or IIIで代償不全がある患者には、使用すべきではない。
フレカイニド:多形性心室頻拍のリスクを上げるため、心筋梗塞後の患者には禁忌である。

ソタロール:class IIIの薬剤であるが、アミオダロンよりもβ遮断作用が強いため、急性心不全患者には使用すべきではない。

Key Point
✓ アミオダロンは心不全のある症候性Afに最も良い治療選択である

Deedwania PC, Lardizabal JA. Atrial fibrillation in heart failure: a comprehensive review. Am J Med. 2010;123(3):198-204. PMID: 20193823

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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