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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Procphort COPD基準を満たさない喫煙者の予後

COPD基準を満たさない喫煙者の予後
Clinical Significance of Symptoms in Smokers with Preserved Pulmonary Function*1

N Engl J Med 2016; 374:1811-1821

【背景】
 現在は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで努力肺活量(FVC)に対する1秒量(FEV1.0)の比が0.7未満の場合に診断される。しかし、この定義を満たさないが呼吸器症状を訴える喫煙者は多い。
【方法】
 現在および過去の喫煙者と喫煙歴のないコントロール群を合わせて2736人を対象とした観察研究を行い、COPD評価テスト(CAT:0-40点満点でスコアが高いほど重症)で症状を評価し、肺機能を評価した。肺機能検査で呼吸機能が維持されている(気管支拡張吸入後のFEV1.0/FVC≧0.7かつFVCが正常下限を上回る)現在および過去の喫煙者は、有症状の場合(CAT≧10)は、無症状の場合(CAT<10)と比較して、呼吸機能が悪化するリスクが高いかどうかを評価した。また、有症状例では、6分間歩行距離・肺機能・胸部HRCT画像所見が無症状例と異なるかを検討した。

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(本文より引用)
【結果】
 肺機能が維持されている現在および過去の喫煙者の50%が有症状だった。有症状の現在および過去の喫煙者での呼吸機能悪化率の平均は、無症状の現在および過去の喫煙者および喫煙歴のないコントロール群と比較して有意に高かった。有症状群 0.27±0.67 vs 無症状群 0.08±0.31 vs コントロール群 0.03±0.21

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(本文より引用)

 有症状の現在および過去の喫煙者は、喘息の有無によらず無症状の現在および過去の喫煙者と比較して活動制限が大きく、FEV1.0・FVC・吸気量がやや小さく、HRCTで肺気腫は認めなかったが、気管壁肥厚が多かった。有症状の現在および過去の喫煙者の42%が気管支拡張薬、23%が吸入ステロイドを使用していた。
【結論】
 肺機能が保たれている有症状の現在および過去の喫煙者は、現行のCOPD基準を満たしていなくても、肺機能の悪化・活動制限・気道疾患の所見が認められた。その様な患者群は、多様な呼吸器疾患治療薬を使用している。
【批判的吟味】
・結局全部で5群に分けています。
①未喫煙者、以下は現在もしくは過去の喫煙者で、②肺機能OK・CAT<10、③肺機能OK・CAT≧10、④肺機能低下・CAT<10、⑤肺機能低下・CAT≧10
・上記各群は、①9.9%、②21.1%、③21.1%、④16.8%、⑤31.1%だった。
・平均年齢は、56歳から68歳、男性 50%前後、BMI 28前後
・論文のPECOは、
P:40-80歳の健康な非喫煙者・現在および過去の喫煙者
E/C:①未喫煙者、以下は現在もしくは過去の喫煙者で、②肺機能OK・CAT<10、③肺機能OK・CAT≧10、④肺機能低下・CAT<10、⑤肺機能低下・CAT≧10
O:急性増悪:抗生剤/ステロイド使用が定義、重症は救急外来受診・入院
T:前向き観察研究
・COIあり、製薬会社の関与あり。
【個人的な意見】
 皆様そもそもCATきちんとつけてますでしょうか?肺機能だけで終わりにしていないでしょうか?後期研修医の出所が古巣以外になってきていますが、基本的なCOPDの評価方法なども教わっていないことも多い気がしますが・・・

 COPD基準を満たさなくて喫煙者の肺機能は落ちていたり、呼吸器症状を呈したりすることがあるということでしょうね。中間リスクの定義と同定という段階なのだと思いますが、問題はこれらの群に対してどのような対応をするのかはまだまだこれから・・・ということですね。こういった患者層を増やそうとする試みには若干の注意が必要であり、製薬会社のSeeding trialでないか確認する必要があります。ちなみにこの研究自体もCOIありです。

✓ COPD基準を満たさない過去の喫煙者で有症状患者もある程度急性増悪などのリスクがある