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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 洞調律HFrEF患者へのβ拮抗薬効果の年齢影響/女性の偏頭痛と心血管リスク/プライマリケアへの抗菌薬適正介入/尿路結石へのジクロフェナクとアセトアミノフェン

Lancet BMJ 論文 高齢者 薬剤 循環器 救急 泌尿器 感染対策 感染症

論文のザックリまとめはマンスリーにします。
これ、昔はよくやってたなあ。ちょっと今はキャパオーバーなので、これくらいで。


■BMJ■

洞調律HFrEF患者へのβ拮抗薬効果の年齢影響 
Effect of age and sex on efficay and tolerability of β blockers in patients with heart failure with reduced ejection fraction: individual patient data meta-analysis*1

 HFrEF(EF低下した心不全)に対してはβ遮断薬の効果は当時はepoc makingでしたが、現在はだいぶ定着したと思います。今回はでは年齢によってその効果が異なるのではないか?という視点です。高齢者では確かに悩みますよね。それをうけて、過去にHFrEFを対象に行われた研究で全死亡を調査したRCT11個の結果を統合したメタ解析が行われました。

 論文のPICOは、

P:洞調律のHFrEF患者13833人(EF<45%、40-85歳の患者)
I:β遮断薬投与群
C:プラセボ投与群
O:全死亡
T:RCTのメタ解析
結果:
 上記の研究の患者層を4分割し更に性別でも層別化してサブルグープ毎の影響を評価した。
 4群の平均は、①平均50歳、②平均60歳、③平均68歳、④平均75歳だった。
  女性は全体の20-30%程度、虚血性心不全が54-81%程度で、全体の18-25%が血行再建術を受けていた。
 糖尿病は21-27%、平均EFが25-29%程度、NYHA Ⅲ〜Ⅳが61-68%をしめた
 プライマリアウトカムである全死亡は若干高齢になると効果が弱まる傾向はあるものの年齢による有意差はありませんでした
 ①群 HR 0.66(0.53-0.83)、②群 HR 0.71(0.58-0.87)、③群 0.65(0.53-0.78)、④群 HR 0.77(0.64-0.92)

 

f:id:tyabu7973:20160619232646j:plain(本文より引用)

 性別も影響せず。

 結果として洞調律HFrEF患者ではβ遮断薬は性別・年齢に関係なく有効であることが明らかになりました。ちなみに蛇足的ですが、心房細動合併HFrEFの場合にはβ遮断薬の効果は明らかになっていませんLancet. 2014; 384: 2235-43. )。この辺りも注意が必要ですね。まあ、高齢者で全死亡を見るってのもなかなか勇気がいりますが、それでも差がでないβ遮断薬はやはり優秀な薬剤だなと改めて思いました。 

✓ 洞調律HFrEF患者へのβ遮断薬効果は年齢・性別によらず有効である

 

 

女性の偏頭痛と心血管リスク 
Migrane and risk of cardiovascular disease n women:prospective cohort study*2

 これも有名な話題ではありますが、脳梗塞患者さんに偏頭痛既往歴を確認している臨床医がどのくらいいるんだろうかとふと思ったりします。偏頭痛の有病率は米国では5人に1人といわれ女性に多いことが知られています。特に前兆のある偏頭痛は脳卒中(梗塞・出血ともに)と関連している事が分かっています。一方で心血管疾患との関連については、関連があるかもしれませんが、一定の見解が得られていません。というわけで、偏頭痛と心血管疾患との関連を評価した前向き観察研究が行われました。これは、Nurse’s Health StudyⅡというコホートで1989年から2011年まで米国の女性ナースを評価したものです。

 論文のPECOは、

P:11万5541人の25-42歳の女性で心血管疾患のない患者
E:偏頭痛あり
C:偏頭痛なし
O:主要な心血管疾患の複合アウトカム(心筋梗塞・脳卒中・致死的な心血管疾患)T:前向き観察研究
結果:
 1万7531人が医師診断による片頭痛があると報告された。 
 20年間以上にわたるfollow upの結果、主要心血管イベントは223人に発症。
 交絡因子の調整を行われたが、片頭痛は主要心血管イベントの発症リスク(HR 1.50:1.33-1.69)だった
 心筋梗塞はHR 1.39:1.18-1.64、脳卒中はHR 1.62:1.37-1.92、狭心症や血行再建はHR 1.73:1.29-2.32だった。

f:id:tyabu7973:20160619233239j:plain
(本文より引用)

 偏頭痛そのものが独立した因子になるのはほぼ確実で、脳卒中だけでなく心血管疾患も関与しそうです。交絡も年齢・喫煙・高血圧・閉経後ホルモン療法・ピル内服などの有無でも評価しているが同様の結果だった模様です。
 今後はリスクになるのは分かったとして、どうしたら良いのか?という部分でしょうか。きちんと偏頭痛発作を減らす介入をすることで脳卒中や心血管疾患のリスクが減るのか?それとも抗血小板薬などを予防的に飲むことのメリットがあるのか・・・今後の検証が待たれますね。

✓ 偏頭痛は脳卒中のみならず主要な心血管疾患の発症リスクになる

 

 

 

■Lancet■

プライマリケアへの抗菌薬適正介入 
Provinsion of social norm feedback to high prescribers of antibiotics in general practice: a pragmatic national randomized controlled trial*3*4

 抗菌薬使用の適正化に関する課題は未だ世界的にも大きな問題になっています。そして、どのような介入がより効果的かつ費用もlow costで済むかについて検証されています。今回は国家レベルでの介入でかつ低費用のものをもともとあるデータベースを元に検証しています。

 論文のPICOは、

P:1000人あたりの抗菌薬処方量が95%信頼区間内には入っているが,処方率上位20%に入っているプライマリケア施設1581施設
I:①「他施設より抗菌薬を出し過ぎてますよ」とFeedback + 患者用簡易パンフレット
  ②患者向けポスター2つ+ポスター2つ
C:通常ケア
O:1000人あたりの抗菌薬処方数(6ヶ月間)
T:cluster RCT、ITT解析あり、ファクトリアルデザイン
結果:
 1人のGP診療所におよそ6600人前後の患者が登録されている
 ①Feedback介入群では126.98処方(125.68-128.27)、コントロール群 131.25(130.33-132.16)で発症率はHR 0.967(0.957-0.977)と有意に減少した。
 ②患者対象の情報提供は有意な抗菌薬処方数減少には繋がらなかった。

  正直なところ、1000人あたり4処方減っただけですから、絶対値で見ればほとんど差がないとも言えますよね。なかなか解釈は難しいですが、特にお金がかかるようなもんでもないしやったらどうか?というスタンスの模様です。この辺りはまだまだ決定的なエビデンスは出てこないかもしれませんが、期待しています。

✓ プライマリケア医に抗菌薬処方率についてのフェイードバックを行うことで、処方抗菌薬数は少ないが有意に減る

  

尿路結石へのジクロフェナクとアセトアミノフェン 
Delivering safe and effective analgesia for management of renal colic in the emergency department: a double-blind, multi group,randomized controlled trial*5

 尿管結石への痛み止め。皆さんは何を使用していますか?一昔前は欧米では麻薬を使用しているなんて話も聞いてびっくりした記憶がありますが最近ではそうでもない模様ですね。最近だと最も使われているのが、NAIDS・オピオイド・アセトアミノフェンなんだそうです。そして、この選択についてまだ決定的なエビデンスはないのが現状です。例えば投与方法でも静注が良いのか筋注が良いのか、NSAIDsの種類はどうか、薬剤クラス毎の差はどうか・・・今回は、ジクロフェナク(ボルタレンⓇ)とアセトアミノフェンを比較しています。

 論文のPICOは、

P:18-65歳の尿管結石による疝痛発作疑いの患者1645人
※喘息や肝腎機能障害患者除外、痛みが4/10以上
I:①ジクロフェナク75mg筋注+プラセボ点滴
  ②アセトアミノフェン 1g点滴+プラセボ筋注
C:モルヒネ 0.1mg/kg点滴+プラセボ筋注
O:30分後の疼痛がベースラインより50%以上減った患者の割合
T:ランダム化比較試験、ITT解析
結果:
 平均35歳、男性 80%、疼痛 8/10程度、画像で結石同定 82%
 プライマリアウトカムは、ジクロフェナク群 68%、アセトアミノフェン群 66%、モルヒネ群 61%
 ジクロフェナクはモルヒネより有意に疼痛が50%以上減った患者の割合が高い(HR 1.35:1.05-1.73)

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(本文より引用)
 副作用が多いのはモルヒネ。ジクロフェナクとアセトアミノフェンは副作用の差なし

  というわけで、全体的にはジクロフェナク筋注が良さそうですが、アセトアミノフェン1g点滴もかなり良い結果です。

 本邦ではジクロフェナク筋注が使用できないことを考えると、アセトアミノフェン(アセリオⓇ)1g点滴でしょうか。モルヒネより良いというのは意外でした。

✓ 尿管結石の疝痛にはジクロフェナク筋注・アセトアミノフェン静注が効果的