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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM スタチン耐性脂質異常症への再挑戦/胃食道逆流症のメカニズム/重症患者の介護者の一年予後/乳児への早期アレルゲン導入

JAMA NEJM 論文 薬剤 内分泌 内視鏡 消化器 精神 集中治療 小児 アレルギー

■JAMA■

スタチン耐性脂質異常症への再挑戦 
Efficacy and tolerability of Evolocumab vs Ezetimibe in patients with muscle-related statin intolerance*1

 スタチンによる筋痛はスタチン使用の場合に注意すべきポイントです。ただ、結構眉唾的な副作用で、例えばCK上昇が起きないこともあったり、場合によってはプラセボ群にも発生したりしていてノセボ効果なのでは?なんて考察されたりしています。まあ、でもどちらにしてもスタチンが継続できない方が一定の割合でいます。ただ、これであきらめて良いのか!?ということで今回は再挑戦についてのRCTです。
 論文のPICOは、

P:2種類以上のスタチンで筋症状が出て内服継続ができなかった高LDL血症患者511人
I:アトルバスタチン20mg 10週+プラセボ10週 間に2週のwashout期間
C:プラセボ10週+アトルバスタチン 20mg 10週 間に2週のwashout期間
O:筋症状で薬剤を中止する患者
T:RCT/盲検/crossover
結果:
 平均60歳、男性50%、CHD 34.6%、スタチンが3種類以上ダメ 81.5%、LDL平均212
 スタチンのみで筋症状が出るのが42.6%、プラセボのみで筋症状が出るのが26.5%
 両方とも出るのは9.8%
 副作用による中止率はスタチン群で有意に多かった HR 1.34(1.05-1.71)

f:id:tyabu7973:20160625223510j:plain
(本文より引用)

 非常に興味深い結果ですね。プラセボのみで筋症状でてスタチンで出ない人が26.5%!ノセボ効果なんでしょうか・・・ちなみにこの研究では上記PhaseAに加えて、PhaseBとして、どちらでも症状が出てしまった人に、エゼチミブ(ゼチーアⓇ)を飲ませて、Evolocumab注射と比較してEvolocumabが良かった!としているのですが、なんとこの追加の2剤でも20.7-28.8%で筋症状の副作用が出ています。
 こうゆうのを見てしまうと、添付文章上の副作用って何なんだろうなあ・・・と思ってしまいますね。 

✓ スタチンとプラセボではスタチンの方が副作用としての筋症状が出やすいがプラセボでも4人に1人は筋症状がでる

 

 

胃食道逆流症のメカニズム 
Association of acute gastroesophageal reflux disease with esophageal histologic changes*2

 胃食道逆流症のメカニズムというのは実はあまりよく分かっていないのが現状なんだそうで。ネズミの実験では、胃酸による直接の上皮障害というよりはむしろサイトカインによる炎症性障害が関与しているのではないか?という仮説もあるそうです。そんな中逆流性食道炎患者の組織変化を前向きに評価した観察研究が出ていました。まあ実験的な研究ですが興味深かったので。
 論文のPECOは、

P:LA分類Grade Cの逆流性患者をPPIで1ヶ月治療し、Grade M-Aになった患者12人
E/C:PPI中止後に、day0・day9・day16にそれぞれECJ部分の非びらん部より生検
O:組織変化
T:前向き観察研究
結果:
 12人の自覚症状がゼロの人から強い人まで様々だった。
 中止1週および2週の生検結果では、上皮内のリンパ球増多が認められ、T細胞有意だった。
 好中球・好酸球はほとんどなく、基底細胞の過形成は表層よりも深部に認められていた
 中止2週間後には食道炎症状も所見も悪化傾向だった。

 というわけで、重度の胃食道逆流症の場合には、PPI中止後に症状・所見が悪化しやすいこと。
 非びらん部の所見では、表層上皮部よりも深部の基底細胞過形成が見られていることが分かったのだそうです。この所見を元にすると、酸の直接障害説よりもサイトカイン説が有力では?と。

✓ 胃食道逆流症の患者では非びらん部生検によると表層よりも深部のリンパ球浸潤・過形成が認められた

 

 

■NEJM■

重症患者の介護者の一年予後 
One-year outcomes in caregivers of critically ill patients*3

 重症患者を持った家族や介護者に関する研究は過去にもいくつかあるのだそうですが、どれも小規模なのだそうです。そこで、今回前向きかつ多施設で重症の集中治療を行う様な患者さんのご家族について、主にうつスコアをアウトカムに評価した前向き観察研究が発表されていました。
 論文のPECOは、

P:2007-2014年ICU入室して少なくとも7日以上挿管されICUを生存退室した患者の主介護者280人
E/C:ICU退室後、7日・3か月・6か月・12か月
O:12ヶ月後のCES-D>16点
T:前向き観察研究/カナダ/多施設共同
結果:
 平均53歳、女性70%、配偶者 61%、仕事あり 59%
 評価したスコアはPANAS Positive Affect Scale・SF-36 mental・SF-36 physical・Mastery scale・Caregiver assistance scale・MOS Social Support survey・Caregiver Impact Scale ・・・
 プライマリアウトカムのCES-Dスコア(うつスコア)は、初期評価時 67%、1年後 43%がうつ症状もしくはうつリスクが高い状態だった 

 まあ、そうだねえ。結構うつ多いよねえ・・・そして一年経っても半数はうつかあ・・・
 ・・・!!じゃなくて。これ正直倫理的にどうかと思います。ただでさえ大変な思いをしている患者さん家族にこんだけたくさん質問紙かかせるか、普通?しかも7日・3か月・6ヶ月。正直あんたらの質問紙介入の方が良くないのでは?と思う勢い。盲目的になり過ぎてマッドサイエンティスト感がぷんぷんする研究だなあ。すいません、やや言い過ぎかもしれませんが・・・

✓ 重症患者の介護者は1年後も半数はうつ症状が残っている

 

 

乳児への早期アレルゲン導入 
Randomized trial of introduction of allergenic foods in breast-fed infants*4

 某連載でも少し取り上げた(まだ発行されてませんが・・・)EAT研究のご紹介です。アレルギーについては、リスク高い場合に除去するのが良いのか、早期から曝露させたら良いのかよく分かっていません。早期曝露の理論背景は”衛生仮説”というものですね。実は、先日ピーナッツアレルギーについて、乳児に対するピーナッツの早期曝露が劇的にピーナッツアレルギーを減らすという衝撃の研究が出ました。

tyabu7973.hatenablog.com

 さて、今回はピーナッツ以外のアレルゲンも評価した研究が報告されており紹介します。論文のPICOは、

P:3ヶ月まで完全母乳の1303人の乳児
I:6つのアレルゲン(ヨーグルト/ピーナッツ/卵/ゴマ/白魚/小麦)の早期導入
  プリックテストを行い、−なら食物負荷(2g)、+ならそのアレルゲンのみ除去 6ヶ月まで
C:6か月まで6つのアレルゲンを回避
O:1−3歳時の6つのアレルゲン負荷で1つ以上の陽性率
T:RCT/ITT
結果:
 ITT解析の結果では、早期導入群が5.6%、通常導入群が7.1%アレルギーを発症していた。有意差なし。
 per-protocol解析では、早期導入群が2.4%、通常導入群が7.3%と有意差あり
 ピーナッツ:早期導入0%、通常導入 2.5%、卵:早期導入1.4%、通常導入 5.5%
 他のものは有意差なし

f:id:tyabu7973:20160625224615j:plain(本文より引用)

  うーむ、微妙な結果ですな。ITTとper protocolが違うのもfollow up率の問題が一因としてあげられます。早期介入群のアドヒアランスが40%しかなくて、最終フォローアップも全体の90%。じゃあ、per protcolで有意差でたからOKかというと、もともとのランダム化割り付けの差が保たれていないのは微妙なところですね。
 やはり、3−6か月の児にアレルゲン負荷は色々大変なのかもしれませんね。あとは、食品毎に異なる可能性があるというのはなかなか興味深い結果でした。

✓ 乳児に対するアレルゲン早期導入(3−6か月)が、アレルギーを減らすかどうかはまだ結論出ず