栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:甲状腺機能は正常範囲でも注意/味覚障害の原因薬剤/慢性胆嚢炎

今週のカンファまとめ。
色々勉強になりますなあ。毎回毎回。

甲状腺機能は正常範囲でも注意 Normal range of thyroid functions

 今回も改めて実感したわけですが、甲状腺機能はたとえ正常範囲内でも要注意」という原則です。そういえば後期研修中のオーベンも「甲状腺はつるべの動きをしている」とよく言ってましたねえ。

 ここまで聞いてピンと来る人はまあ良いのですが、分かりにくい人のためにちょっと詳しく説明したいと思います。たとえば、こんな検査結果だったらどう解釈しますか?
 
 fT4 0.85(0.88-1.67ng/ml)
 TSH 1.12(0.34-4.04μIU/ml)

「あ、ごく軽度の甲状腺機能低下症ですね」って方。よくよく見てみましょう。通常fT4値が低下するような甲状腺機能低下症の場合、普通はTSHは必ず上昇するはずです。いわゆる”つるべの動き”ですね。fT4が下がったらTSHは上がるはず。
 
 今回の検査結果の場合、TSHは正常ではありますが、通常上昇すべきところが上昇していないという時点で中枢性甲状腺機能低下症が疑われるわけです。この原則について知っておくと、一歩進んだ甲状腺機能評価に繋がると思います。やはり緻密に評価する重要性を感じますよね。

 ✓ 甲状腺機能の判断は正常範囲内でも要注意

 

 

味覚障害の原因薬剤 Dysgeusia induced by drugs 

 味覚障害の鑑別。実はかなり多くの薬剤が味覚障害の原因になることが知られています。いくつかのパターンがあるので、症状毎に原因薬剤を列挙してみようと思います。まあ、備忘録代わりですね。

①味覚消失(Ageusia)
 ブレオマイシン・ジサイクロミン(コランチルⓇ)・ジルチアゼム(ヘルベッサーⓇ)・ジピリダモール(ペルサンチンⓇ)・エナラプリル(レニベースⓇ)・エチドロネート(ダイドロネルⓇ)・グリコピロレート(シーブリⓇ)・ヒドロクロロチアジド(ニュートライドⓇ)・ロメフロキサシン(ロメフロンⓇ)・ロバスタチン(本邦未発売)・メチマゾール(メルカゾールⓇ)・ヒドロコルチゾン・メトトレキサート(リウマトレックスⓇ)・ニフェジピン(アダラートⓇ)・オフロキサシン(タリビットⓇ)・スピロノラクトン(アルダクトンⓇ)・テルビナフィン(ラミシールⓇ)・トリアゾラムハルシオンⓇ)

②味覚低下(hypogeusia) 
 アンホテリシンB(ファンギゾンⓇ)・アムリノン(本邦未発売)・カルバマゼピンテグレトールⓇ)・カルボプラチン(カルボプラチンⓇ)・シスプラチン(シスプラチンⓇ)・ジルチアゼム(ヘルベッサーⓇ)・レボドパ(メネシットⓇ)・メトロニダゾール(フラジールⓇ)・ニフェジピン(アダラートⓇ)・スルファサラジン(アザルフィジンⓇ)
 塩:アミロリド(本邦未発売)・ブレチリウム(本邦未発売)・クロルヘキシジン嗽含薬・

味覚障害(Dysgeusia)
 カプトプリル(カプトリルⓇ)・ジルチアゼム(ヘルベッサーⓇ)・EDTA・エナラプリル(レニベースⓇ)・フルニソリド(点鼻:本邦発売中止)・リシノプリル(ロンゲスⓇ)・ニフェジピン(アダラートⓇ)・ニトログリセリン・セレギー(FPⓇ)・バンテタニブ・ビスモデギブ
 苦み:アセタゾラミド(ダイアモックスⓇ)
 金属:アロプリノール(アロシトールⓇ)・βラクタム系抗菌薬・オーラノフィン(リドーラⓇ)・エタンブトール(エサンブトールⓇ)・エチオナミド(ツベルミンⓇ)・フルラゼパム(ダルメートⓇ)・インターフェロンγ・ヨード・レバミゾール・リチウム(リーマスⓇ)・メトロニダゾール(フラジールⓇ)・テトラサイクリン・トカイニド(本邦未発売)
 甘み:5-FU

味覚障害診療の手引き

味覚障害診療の手引き

 

✓ 味覚障害の原因薬剤を整理

 

 

慢性胆嚢炎 Chronic cholangitis

 慢性胆嚢炎の話題が出ておりました。慢性胆嚢炎は、黄色肉芽腫性胆嚢炎や壁肥厚型胆嚢癌との鑑別が重要になります。

 慢性胆嚢炎の多くは胆石を有しており、胆嚢に何かしらの慢性的刺激が生じることによって発症します。また、病理学的的には胆嚢に慢性炎症細胞浸潤が認められるもので、胆石の機械的刺激や急性胆嚢炎の発作を繰り返したりして、胆嚢壁の肥厚と繊維化が進んだものを指す様です。胆嚢壁が進展不良となり、絶食後でも十分な拡張が得られなかったりし、場合によっては高度な石灰化を伴う”陶器様胆嚢”を来すこともあり、こうなると胆嚢癌のリスクになります。また、胆嚢腺筋腫症の合併が多いのも特徴です。

 鑑別点である黄色肉芽腫性胆嚢炎は、慢性胆嚢炎の亜型と言われ、60-70歳の女性に多く、症状は急性胆嚢炎症状で発症し数年間症状がくすぶったりすることが特徴です。病理学的にはRASが壁内で破裂したものを指し、糖尿病や免疫不全がリスクになります。病態生理として胆嚢内圧の上昇によるRAS内に貯留した胆汁が胆嚢壁内に漏れ、泡沫細胞を主体とした肉芽腫が形成されるのだそうです。肉眼的には黄灰色調の結節や層状構造を呈すること、炎症が強いと結腸や十二指腸に及ぶこともあるのだとか。なかなか難しいですね。

 黄色肉芽腫性胆嚢炎と胆嚢癌を鑑別する画像の特徴は、
①びまん性胆嚢壁肥厚
②粘膜面の連続例
③肥厚した壁内の低濃度結節
④肝内胆管拡張を認めない
⑤リンパ節腫大がない
といわれています。詳しくはこちら(肝胆膵64巻4号・2012年4月)。

http://www.qqct.jp/images/seminar/768/a_25_1.jpg

  ✓ 慢性胆嚢炎/黄色肉芽腫性胆嚢炎の所見に注意しよう