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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

デスカンファ:施設看取りも繊細です

Tです。
カンファレンスは月に3回以上はやっていますが、まとめが間に合っていません。
記者求む!

今回は高齢者施設で旅立たれた方を取り上げました。

1)経過
アルツハイマー認知症との診断がされていた方でしたが、亡くなる3ヶ月程前から飲み込みの力が弱くなり何度かの誤嚥性肺炎ののち、施設で旅立たれました。

もやもやしそうなポイントをまとめると

・いわゆる認知症の周辺症状により、自宅での介護困難の結果の入所で本人の希望ではなかった
・家族は最初は入院での治療を希望。
・家族とのコミュニケーションは意識して行ったが、ケアへの家族の参加という点では不十分さもあった。
・嚥下機能は極端に低下したが「食べる」事への意欲があった。
・動きも比較的保たれたままでの看取り期だった。
・診察時の表情からは心地よさや安楽さが読み取りにくかった。

 さて、皆さんはどこにもやもやしますか?この方は最初の入院の際の本人の混乱がひどく、その後は施設で過ごされていました。

 印象的だったことをあげてみます。

 家庭が破綻しかけての緊急避難的な入所となってしまいましたが、その事で家族には後悔の思いがありました。最初は騙されるような形で入所したご本人さんでしたが、徐々に施設に馴染み役割ができ楽しんで過ごしていらっしゃるようにみえました。引っ越しも少しずつやってだんだん居室に物が増えていくようにするなど施設側の細かい配慮がありました。
 状態が悪化した最初の頃はご家族も入院加療を希望していました。「本人の望んだかたちではない入所だったからこそ、精一杯の医療を受けさせたい。」と言った気持ちもあったのかもしれません。また、食べたがってはいるけれど食べさせる事が難しくなっていったことが介護スタッフのジレンマになっていました。ここも難しさがありました。
 呼吸停止の時にご家族が間に合わなかったこともスタッフにはもやもやした事として受けとめられていました。終末期にはコミュニケーションが難しくなり、ご本人の心地よさがどこにあるのかが分かりにくく、このままのケアで良いのか悩む場面もありました。
 一方、そんな中でも歌を口ずさむと、一緒に歌ってくれるなど不快に感じていればとりえないであろうと思える行動もあり、それらが施設療養継続を後押ししました。


 色々と示唆に富む事例でした。施設での看取りはご自宅での看取りよりも関わる人が増えることが一般的だと思います。家族がケアに関わる機会が少なくなってしまうことや訪問時にお会いできないことも、医療者側からの家族へのアプローチが難しくなる要因です。
 また、介護スタッフも看取りの経験や教育を受ける機会は少なく、医療者からのケアの対象となります。施設側のスタッフに信頼してもらえる医療チームであることが、施設看取り達成の前提の一つなのだと思います。
 最後に、施設入所を決めたご家族の中には、その決定を負い目に感じている方々がいることを忘れないでいたいと思います。

 

では、また。