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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:脳浮腫の治療/蕁麻疹様血管炎/鎌状赤血球貧血症の痛み/産後の脱毛

MKSAP始まりますよーでは張り切って!

脳浮腫の治療
Treatment of cerebral edema

❶症例 
 56歳男性。6時間前に発症した左片麻痺、右方向の共同偏視半側空間無視。意識清明で、高血圧の既往がありリシノプリルで治療されている。身体所見はバイタル含め特記所見なし。採血も正常範囲。

心電図は虚血性変化なし。頭部CTでは右大脳半球にearly CT signあり。ドップラー検査で右頭蓋内の血流はなかった。
12時間後、傾眠傾向となり、声かけには反応せず、痛み刺激でわずかに回避行動が見られる。右の瞳孔は散大し、左右差あり、反射は消失している。頭部CTを再検したところ、9mmのmidline shiftがあり、右MCA領域の境界明瞭な梗塞が見られた。

 次の一手は?
A.  アスピリン挿肛
B.  除圧術
C.  デキサメサゾン静注
D.  頭蓋内圧モニター

E. 腰椎穿刺

 ❷脳浮腫の治療
 この患者は除圧術を行うべきである。悪性の脳梗塞を発症しており、脳ヘルニアも起ころうとしている。初期治療としてマンニトールの投与で頭蓋内圧を下げ、脳浮腫緩和をするのもよいが、外科的手術までの姑息的手法である。欧州の3つの研究によると、除圧術によりMCA領域の悪性の脳梗塞の死亡率と機能予後を改善したとされる。脳梗塞発症後48時間以内で脳ヘルニアが起こる前だと除圧の奏功率が最も高い。

❸その他の選択肢
アスピリン脳梗塞の再発を予防するが、脳ヘルニアの経過を変えず、選択肢としては不適である。

デキサメサゾン:全身ステロイドは腫瘍や感染症などのmass effectには効果を発揮するが、脳出血脳梗塞による脳浮腫には効果はない。

頭蓋内圧モニター:術後に使用した方がよく、GCS8以下の場合は特にモニターの必要がある。

腰椎穿刺:脳ヘルニアの悪化を招く。

Key Point
✓ 悪性の脳浮腫には至急除圧術を

Huttner HB, Schwab S. Malignant middle cerebral artery infarction: clinical characteristics, treatment strategies, and future perspectives. Lancet Neurol. 2009;8(10):949-958. PMID: 19747656

  

蕁麻疹様血管炎
Urticarial vasculitis

❶症例

 28歳女性。4ヶ月前から掻痒感、熱感を伴う紅斑が体幹と四肢近位に多発している。個々の皮疹は24時間以内に消退する。痒みに対しロラタジンを飲んでいる。
 
体温36.9℃ 血圧110/70 脈拍70 呼吸数14
1㎝大の鱗状変化のない紅斑が数個。皮膚に瘢痕や着色はなく、口腔内病変や関節腫脹はない。

Complete blood count

Normal

Erythrocyte sedimentation rate

18 mm/h

C3

56 mg/dL (560 mg/L)

C4

11 mg/dL (110 mg/L) (normal range, 13-38 mg/dL [130-380 mg/L])

Serum creatinine

Normal

Antinuclear antibodies

Titer of 1:320 (speckled pattern)

Urinalysis

Normal

皮膚生検では血管周囲に全層性のリンパ球浸潤を認めた。
  適切な治療は?
A.  シクロホスファミド
B.  ヒドロキシクロロキン
C.  メトトレキサー
D.  ミコフェノール酸

 ❷蕁麻疹様血管炎

  この患者は微小血管型の血管炎である蕁麻疹様血管炎であり、ヒドロキシクロロキンによる治療を行う。24時間以上続く蕁麻疹は蕁麻疹様血管炎除外のため皮膚生検を行うべきである。蕁麻疹様血管炎の診断が確定したら、次にするべきは補体測定である。低補体血症があればSLEに代表される全身性血管炎の存在が示唆される。蕁麻疹様の皮疹は血管炎の最もよくある病変であり、SLEの全身症状に先行する場合もある。蕁麻疹様血管炎はほとんどが特発性で保存的に治癒するが、全身性の血管炎が背景にあると難治性となり再発しやすい。最適な治療は背景疾患の治療である。この患者は抗核抗体が陽性であり、蕁麻疹の重症化を減らす意味でもヒドロキシクロロキンによる治療が選ばれる。

❸その他の選択肢
シクロホスファミド:潰瘍や多臓器不全を伴う重症の皮膚血管炎に使用され、ヒドロキシクロロキンやダプソンが無効の症例に使用すべきである。

メトトレキサート:マラリア薬や少量のステロイドに抵抗性のループス性皮膚症状に使用されるが、SLE悪化のない現時点では使用されない。

ミコフェノール酸:steroid-sparing therapyとして使用すべきであり、その前にヒドロキシクロロキンやダプソン、メトトレキサートを試すべきである。

Key Point
✓ 24時間以上続く蕁麻疹を見たら皮膚生検、補体測定を

Stigall LE, Sigmon JR, Leicht SS. Urticarial vasculitis: a unique presentation. South Med J. 2009;102(5):531-533. PMID: 19373142

 

鎌状赤血球貧血症の痛み
Pain with sickle cell anemia

❶症例

 22歳の女性が、2日前からの腕、足、背中の痛みで救急外来受診。発熱、息切れ、悪寒なし。患者は、鎌状赤血球貧血症があり、妊娠29週、1年に2回くらいしか疼痛のあるクリーゼは起こさないし、家で何とか治っていた。葉酸のみ内服中。体温37.0℃、血圧110/63 mm Hg、脈拍96/分、呼吸数16/min、BMI 22、患者は頭痛で苦しんでおり、The patient is in obvious distress from pain and is diffusely tender to touch. She has a gravid uterus. 心臓、腹部、神経所見は正常。Hb7.4 g/dL 、WBC 6800/µL、尿所見正常、胸部レントゲン正常。

適切な治療は?
A.  ヒドロキシウレア
B.  ケトロラク
C.  メペリジン
D.  モルヒネ

 ❷鎌状赤血球貧血症による痛み
 鎌状赤血球貧血症の妊娠関連の死亡率は、0.5〜2%である。鎌状赤血球貧血症の疼痛クリーゼは、妊娠で増悪する。腕、足、胸部、腹部、背部、ハイドレーションや酸素供給、モルヒネといった鎮痛剤で対応する。モルヒネには催奇形性ないと言われている。

❸その他の選択肢
ヒドロキシウレア:妊娠初期1/3に使用すると催奇形性があるため禁忌であり、受胎3ヶ月前には中止すべきである。

ケトロラク:NSAIDsは基本的に妊婦には使用しないし、動物実験においては、ケトロラックはpregnancy class Cの薬剤である。
メペリジン:
けいれんを引き起こす傾向があり、妊婦には禁忌。

Key Point
✓ 妊娠中の痛みにモルヒネは比較的安全

Rogers DT, Molokie R. Sickle cell disease in pregnancy. Obstet Gynecol Clin North Am. 2010;37:223-237. PMID: 20685550

 

出産後の脱毛
Postpertum haie loss

❶症例

 33歳女性が2ヶ月前からのびまん性の脱毛で来院。5ヶ月前に健康児を出産し、お産前後で異常はなかった。マルチビタミン以外は内服薬なし、健康体で、脱毛の既往や自己免疫疾患もない。バイタルは正常、頭部は全体的に髪が少なく、限局はしていない。眉毛やまつ毛は正常に見え、頭皮、四肢に発疹はない。

 診断は?
A.  円形脱毛
B.  アンドロゲン脱毛症
C.  扁平毛孔性苔癬
D.  ループス

E. 休止期脱毛

 ❷出産後の脱毛

 ストレスの約3ヶ月後に髪が抜け始め、びまん性の脱毛である。数ヶ月経つと、元の細胞周期に戻り、治療は必要ない。脂漏性皮膚炎、乾癬、鉄欠乏、甲状腺疾患は休止期脱毛の原因となる。

❸その他の選択肢
円形脱毛症:限局性の卵形の脱毛である。

アンドロゲン脱毛症:緩徐に進行し、頭頂部や側頭部にできる。

扁平毛孔性苔癬:毛包周囲の炎症が特徴的である。

ループス:炎症や鱗屑、色素沈着異常があり、限局的である。

Key Point
✓ 産後の脱毛に休止期脱毛あり

Mounsey AL, Reed SW. Diagnosing and treating hair loss. Am Fam Physician. 2009;80(4):356-362. PMID: 19678603

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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