栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:透析の適応/PBC/脳梗塞の管理/ARDS

MKSAPまとめです。今週はオーソドックスな問題に苦戦しました。ではどうぞ。

透析の適応
Who needs hemodialysis

❶症例 
 26歳男性。自宅で倒れている所を友人が発見。数日間音信不通であった。

傾眠傾向で反応が鈍い。血圧92/54 脈拍118 呼吸数14 SpO2 97% BMI25

皮膚は湿潤、脛骨前面、臀部、背部は浮腫状。痛み刺激に手を引っ込める。対光反射はあり神経所見は正常。その他特記事項なし。

Blood urea nitrogen

174 mg/dL (62.1 mmol/L)

Calcium

7.8 mg/dL (2.0 mmol/L)

Creatine kinase

125,000 units/L

Serum creatinine

8.3 mg/dL (734 µmol/L)

Electrolytes

 

Sodium

151 meq/L (151 mmol/L)

Potassium

5.8 meq/L (5.8 mmol/L)

Chloride

121 meq/L (121 mmol/L)

Bicarbonate

19 meq/L (19 mmol/L)

Glucose

94 mg/dL (5.2 mmol/L)

Phosphorus

8.5 mg/dL (2.75 mmol/L)

Urinalysis

Specific gravity 1.012; pH 6.5; 3+ blood; 1+ protein; 0-5 erythrocytes/hpf; 1-3 leukocytes/hpf; dark granular casts

Toxicology screening

Pending

次の3時間で尿量が60ml
心電図は洞性頻脈で不整なし。ST変化なし。

 適切な治療は
A.  血液透析
B.  マンニトール静注
C.  生食塩水急速静注
D.  5%ブドウ糖急速静注

 ❷透析の適応
 横紋筋融解症の患者には生理食塩水投与が必要である。横紋筋融解症は筋の障害によりミオグロビンと細胞内の要素が血管内に漏出する。筋障害性の薬剤や感染症、過度の労作、長期臥床により生じる。診断にはCKの5000以上への上昇、尿検査で潜血陽性で赤血球陰性の場合に疑われる。合併症として、低Ca血症、高P血症、高尿酸血症、代謝性アシドーシス、コンパートメント症候群、四肢の虚血がある。

❸その他の選択肢

血液透析血液透析生理食塩水静注への反応が悪ければ、究極的に必要であるが、現時点では必要ない。高K血症ではあるが、心電図変化はなく、ナトリウム負荷によって、尿細管での排出が増加する。輸液後や負荷過多の状態でもカリウムが改善しなければ透析も考慮する。

マンニトール:腎血流は増えるかもしれないが、横紋筋融解症における輸液に勝るものではない。

5%ブドウ糖この患者の高Na血症は自由水欠乏によるものであり、身体所見でも循環血液量不足から来る高Na血症である。脱水は補正できるかもしれないが、ナトリウムが入っている方が効率がよい。

Key Point
✓ 横紋筋融解症による腎不全にはまず生食

Better OS, Abassi ZA. Early fluid resuscitation in patients with rhabdomyolysis. Nat Rev Nephrol. 2011;7(7):416-422. PMID: 21587227  

 

PBC
Primary bilialy cirrhosis

❶症例
 60歳女性。ここ6ヶ月で肝酵素が上昇してきた。そもそも協会の健康診断で見つかったものである。無症状であり、既往に脂質異常症甲状腺機能低下症、骨減少症がある。内服はレボチロキシン、アトルバスタチン、カルシウム、ビタミンD。身体所見は特記所見なし。

Platelet count

200,000/µL (200 × 109/L)

INR

0.9 (normal range, 0.8-1.2)

Alkaline phosphatase

450 units/L

Alanine aminotransferase

80 units/L

Aspartate aminotransferase

70 units/L

Total bilirubin

0.9 mg/dL (15.4 µmol/L)

Creatinine

0.9 mg/dL (79.6 µmol/L)

Serum antimitochondrial antibody

1:256

腹部USでは粗造な見た目である。脾腫や腹水はない。

 治療は
A.  アザチオプリン
B.  コルヒチン
C.  メトトレキサー
D.  ウルソデオキシコール酸(UDCA)

 PBC

  PBCの治療はUDCAである。PBCは25歳以上の女性に好発する緩徐進行性の自己免疫疾患である。疾患の認識が増えるにつれ、無症状の状態で見つかることが多くなった。症状はあっても倦怠感、掻痒感、黄疸程度である。ALPの正常上限の1.5倍以上への上昇、ALT、ASTは正常上限の5倍未満である。ミトコンドリア抗体は40倍以上。臨床像が典型的であれば生検は不要である。ただ、ステージングに生検が使われることがある。UDCAはFDAが推奨する唯一の治療である。プラセボに比べ、移植をしない生存率を伸ばし、門脈圧亢進による合併症も減らす。最近の研究では早期発見が長期生存率を上げ、一般人口と変わらず生活できる。治療への反応性の指標はALPが元の値から40%以上減少することである。高用量のUDCAは治療奏功率と関係していない。コレスチラミンや他の胆汁酸に結合する薬剤はUDCAとは別に処方し吸収阻害を防がなければならない。副作用は少ないが、体重増加や軟便、脱毛は起こりうる。

❸その他の選択肢
アザチオプリン:コルチコステロイドとの併用でも臨床的、予後的利益はない。、骨突出部にも起こりえる。
コルヒチン・メトトレキサート:症状を和らげ、肝酵素を改善し、組織学的にも改善を認めるが、生存率には寄与しない。

Key Point
✓ PBCにはUDCA

Lindor KD, Gershwin ME, Poupon R, Kaplan M, Bergasa NV, Heathcote EJ; American Association for the Study of Liver Diseases. Primary biliary cirrhosis. Hepatology. 2009;50(1):291-308. PMID: 19554543

 

脳梗塞の管理
Management of stroke

❶症例

 73歳女性、36時間前からの左側の脱力で来院。高血圧症と心血管疾患の既往あり。アスピリンとロサルタンとメトプロロール、アトルバスタチン内服中。血圧160/78 mmHg, 脈拍78/分,整,呼吸16/分。左顔面・腕・脚の麻痺あり。

血液検査は正常、頭部CTでは、右内包後脚に梗塞像あり。心電図正常。

 行き先は?
A.  stroke unit
B.  リハビリ病棟
C.  一般病棟
D.  ICU

❷QRS幅広頻拍
Stroke unitsは、看護やリハビリといった多領域でのケアに優れている。

❸その他の選択肢
リハビリ:この時点では、血行力学的な安定や原因検索が必要であり、現時点では時期尚早。

ICU現段階では血圧を下げる必要性がないため、ICUに入室する理由がない。

Key Point
✓ 発症早期の脳梗塞はstroke unitへ

Stroke Unit Trialists' Collaboration. Organised inpatient (stroke unit) care for stroke [update of Cochrane Database Syst Rev. 2002;(1):CD000197]. Cochrane Database Syst Rev. 2007;(4):CD000197. PMID: 17943737 

 

ARDS
Acute respiratory distress syndrome

❶症例

 50歳男性、重症市中肺炎によるARDSでICU入室、人工呼吸器装着している。既往歴や薬剤歴のない、健康な人であった。体温38.3 °C、血圧120/60 mm Hg、脈拍110/分、体温60.0 kgで理想体重である。鎮静中、CVP 8 cm H2O、頻脈以外は心臓所見異常なし。両肺でラ音を聴取。

人工呼吸器の初期設定は、呼吸数18/min、tidal volume 360 mL、PEEP 10 cm H2O、FIO2 of 0.8、 peak pressure 34 cm H2O、plateau pressure 32 cm H2OでSpO2 96%。

 次に行う適切な管理は?
A.  呼吸数を減らす
B.  1回換気量を減らす
C.  FiO2を上げる
D.  PEEPを上げる

 ❷ARDS

 plateau pressureは肺の過膨張を防ぐために下げる必要がある。Tidal volumeは、standard (12 mL/kg predicted weight)よりもlow (6 mL/kg ) の方が、致死率を30〜40%減らす。理想体重で6 mL/kgのtidal volumeで始め、もしplateau pressureを30 cm H2O未満で維持したければ、徐々に1 mL/kgずつ下げる。

 ❸その他の選択肢

 呼吸数を減らしたり、FIO2を上げることは、plateau pressureに影響しない。PEEPを上げるとplateau pressureがさらに上がる。

Key Point
✓ ARDSはlow tidal high PEEP

Petrucci N, Iacovelli W. Lung protective ventilation strategy for the acute respiratory distress syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2007;18;(3):CD003844. PMID: 17636739

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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