栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:CNSのCRBSI治療期間/出血後の抗凝固再開タイミング/心血管攣縮と脳血管攣縮

さてさてまとめまとめ。
ニッチなところを攻めます!

CNSのCRBSI治療期間 Duration for CNS bacteremia

 ちょっとICTネタで恐縮ですが。カンファでは専門内科の先生方からはこの辺りの質問が多い様に思います。ちなみに、CRBSIとCLABSIの違いは大丈夫でしょうか?

 CRBSICatheter-Related Blood Stream Infection
 CLABSICentral Line-Associated Blood Stream Infection

 CNSの菌血症と言えば、まずは思い浮かべるべきは上記カテーテル関連の感染症でしょう。治療の本質はカテーテルマネージメント、そして②抗菌薬治療になります。多くの相談事項に適切なカテーテルマネージメントが無い場合も多く、まずはここからということもあります。

 カテーテルマネージメントの原則は抜去です。ただ、実は抜去せずに残す(=Salvage)という方策もあるにはあります。少なくとも抜去した方が良い状況としては、
・重症敗血症
・血行動態不安定
・心内膜炎の遠隔病変の出現
血栓性静脈炎による発赤や滲出がある
・原因微生物に対して感受性のある抗菌薬を使用しても72時間以上菌血症の状態が持続
 が挙げられています。

 逆に残せる状況の一つとしてCNS菌血症が挙げられています。抜去の有無は菌血症の改善に影響を与えなかったという驚異の研究がある一方、残存していると再発はRR 6.6と高いことが報告されています。もし、Salvageして治療する場合には、経静脈的抗菌薬+抗菌薬ロック療法が推奨されています。

 ようやく本題の治療期間ですが、一般的にカテーテル抜去もしくは交換後72時間時点で血液培養が陰性化している単純性CRBSIの場合、陰性化後10-14日が推奨されています。
 一方、CNSについては、質の高いRCTはありませんが、カテーテル抜去後5-7日後を推奨する専門家もいる模様です。また、そもそもカテ抜去のみで改善したという報告もあるようです。この辺りは実臨床の感覚に合致しますね。一応確認でした。

 ✓ CNSのCRBSIでは、経過が良ければ抜去±5-7日治療で良いかもしれない

 

感染症プラチナマニュアル2016

感染症プラチナマニュアル2016

 

 

 

出血後の抗凝固再開タイミング Restart of anticoagulant drugs after bleeding events

 これもまた微妙なテーマですが。出血性イベントを発症した抗凝固療法適応の患者さんの場合に、「いつ抗凝固療法を再開するか」は一つのトピックです。

 重要なのは、出血したことも踏まえて再度抗凝固の適応があるのかをリスク・ベネフィットで再評価・再考することです。というのも、もちろん抗凝固療法は出血イベント再発の高リスクになるからです。

 で、いつから再開するかは特に決まったものはありません。例えば脳出血であれば出血範囲の拡大は最初の数時間から数日がピークとなります。専門家によって大きく意見が分かれますが、大半が7-14日程度経過した後の再開を推奨しています。それよりも短い推奨も長井推奨もあります。

 この辺りのさじ加減は個別の血栓・出血リスクで勘案して検討する必要がありますし、血腫についてもその部位や量によって判断は異なるでしょう。もし、7日以内の超早期に再開する場合にはすぐに拮抗できるヘパリンで行うべきとされています。

✓ 出血後の抗凝固再開は一般的には1-2週間経過後。個別リスクで微調整を

 

 

心血管攣縮と脳血管攣縮 Cardiac and Cerebral vasospasm

 冠動脈のspasmはよく経験しますが、脳動脈も攣縮を起こすことがあると言われています。有名なのは、くも膜下出血治療後の合併症や可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)です。
 RCVSの診断基準は確定していませんが、主に下記の条件を満たします。

1.多数の脳動脈の部分的攣縮が血管撮影で認められる(カテーテルによる脳血管撮影、CT/MRによる血管撮影)
2.脳動脈瘤によるくも膜下出血ではない
3.髄液所見が(ほぼ)正常である(タンパク質 < 80 mg%, 細胞数 < 10 mm3, 糖レベル正常)
4.強い、急性の頭痛がある(神経症状を伴う時やそうでない時がある)
5.発症から12週以内に血管撮影上の異常が消える.(可逆性で、正常化する)

が提唱されています。RCVSを起こしやすい病態としては、妊娠・産褥、偏頭痛、 薬剤(ブロモクリプチン・エルゴタミン・コカイン・アンフェタミンエフェドリン等)、高カルシウム血症、頭部外傷、CAS、脳外科手術後などが報告されています。

 また、これ以外に冠攣縮と合併する頸部内頚動脈の攣縮を繰り返す症例の報告がweb上に報告されていました。

頚部内頚動脈の繰り返す攣縮 Repeated vasospasm of the cervical internal carotid artery

これを見ると、冠攣縮も含めて、全身性の攣縮が起こしやすい病態というのが隠れている可能性があるのかもしれません。

  ✓ 冠攣縮と脳血管攣縮を合併する症例があるかもしれない