栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:痛風/SAS/coma cocktail/予防的抗菌薬

MKSAPまとめです。今週はbasicな問題でした。ではどうぞ。

痛風 Gout

❶症例 
 32歳男性。痛風の評価で来院。過去2年間で発作が3回あり、うち2回は第1MTP関節だった。1ヶ月前の発作は右膝を含んでおり、穿刺すると尿酸結晶が見られた。発作のリスクを減らしてほしいが、内服薬は使いたくないと言っている。食事は低脂肪食で緑黄色野菜を毎日摂取しており、フルーツも週に何回か食べる。週に2-3回ワインをグラス一杯飲む。腎結石の既往や痛風結節はない。父と祖父が痛風結節を伴う痛風に罹患していた。内服は高血圧に対するヒドロクロロチアジドのみである。

体温37℃ 血圧116/76 脈拍60 呼吸数12 BMI27
血算、生化学異常なし。血沈16 尿酸8.6

 次の一手は?
A. 食事量を減らす
B. 野菜摂取を減らす
C. ワインの量を減らす
D. フルーツをもっと食べる
E. 降圧薬をリシノプリルに変更

 痛風
  この患者はサイアザイドの中止を検討すべきである。患者は若年で尿酸高値の痛風と家族歴がある。近年のガイドラインでは2年で3回の発作では予防適応にはならない。彼は血中の尿酸値を上げる作用のあるサイアザイドを内服しており、尿酸に影響しないか排泄を促す降圧薬であるリシノプリルに変更することが推奨される。

❸その他の選択肢
食事量を減らす:この患者の食事は尿酸を下げるにはよく、今後も努力すべきである。

野菜摂取を減らす:一部の緑黄色野菜はプリン体を含むが尿酸を上昇させるほどではない。

ワインの量を減らす:飲酒は尿酸値を上げるが、ワインは最も影響が少なくビールは影響が大きい。ワイン1日1杯までは尿酸値は上昇しない。

フルーツをもっと食べる:フルーツはフルクトースを含み尿酸値を上げる。

Key Point
✓ サイアザイドは尿酸値を上げる

Palmer BF, Naderi AS. Metabolic complications associated with use of thiazide diuretics. J Am Soc Hypertens. 2007;1(6):381-392. PMID: 20409871

 

睡眠時無呼吸症候群
Sleep apnea syndrome 

❶症例

 24歳男性。日中の眠気の評価で来院。彼は大学院生で、レクチャーの最中やオンラインの教科書を読んでいると寝てしまうという。大学の本屋で夕方働いた後、交通事故を起こしそうになったことが最近あった。平日は1時に就寝し、朝8時の授業に間に合うように起きる。週末は12時近くまで寝ていることもある。カタプレキシーやむずむず足症候群を疑う病歴はない。一人暮らしでありいびきをかいているかどうかわからない。週末に飲酒することはあるが、非合法薬物は使用していない。季節性のアレルギー歴があり、父は睡眠時無呼吸症候群である。必要時はロラタジンを頓服している。
バイタルは問題なくBMI23。上気道閉塞や扁桃腫大はない。
 次の一手は?
A. 脳波検査

B. Multiple sleep latency testing
 
C. ポリソムノグラフィー

D. 睡眠日記

 睡眠時無呼吸症候群
 睡眠日記をつけるべきである。日中の眠気の評価には8時間くらいの十分な睡眠を取っていることを確認すべきである。バイトをしている大学院生は得てして睡眠が足りていない。最もシンプルな診断的検査は睡眠日記をつけることであり、慢性的な睡眠制限を見つけるために1-2週間行う。希望があればより客観的な指標として、手首の温度や動きから睡眠のリズムを測定するデバイスも使用する。

❸その他の選択肢
脳波検査:痙攣の同定に使えるが、この患者には不要である。

Multiple sleep latency testing:日中の眠気の評価やナルコレプシーの診断に有用であるが、費用がかかり、睡眠日記、ポリソムノグラフィーの後にすべきである。
ポリソムノグラフィー:OSAの診断には有用だが、この若者は比較的やせており、上気道の閉塞もない。OSAらしさがない。睡眠日記の評価が先である。

Key Point
✓ 睡眠障害にはまず睡眠日記を

Kushida CA, Chang A, Gadkary C, Guilleminault C, Carrillo O, Dement WC. Comparison of actigraphic, polysomnographic, and subjective assessment of sleep parameters in sleep-disordered patients. Sleep Med. 2001;2(5):389-396. PMID: 14592388

 

意識障害の初期対応
Coma cocktail

❶症例

 34歳男性が錯乱で来院。3週間前に病的肥満でRoux-en-Y術施行し、その後から悪心のため食事摂取量低下していた。ビタミンB12 は処方されていたが、内服していなかった。痛みのため、ヒドロコドン内服していたが、数日飲むほど必要ではなく、鉄を含めたマルチビタミンのみ内服していた。身体所見では、貧血あり、血圧115/80 mm Hg (起立性変化なし)、脈拍 85/分、皮膚は湿潤、失調性歩行あり、眼振あり、非共同性注視あり、他の神経学的所見は正常であった。

血液検査では、血算、グルコース電解質は正常であった。

 次の一手は?
A. 
 頭部CT
B.  グルコース静注
C.  ナロキソン静注
D.  チアミン静注
E.  ビタミンB12皮下注

意識障害の初期対応
 本患者は、眼振、眼球運動障害、運動失調、錯乱があり、臨床的にはウェルニッケ脳症の診断である。肥満手術を受けた人でその後食事ができない人では、チアミンはすぐ枯渇する。非可逆性の神経異常や認知変化をきたす前に補充すべきである。

❸その他の選択肢
頭部CT:症状は新規出現ではあるが、チアミン欠乏で説明がつくため、頭部CTはチアミン投与を開始してからで良いであろう。
グルコース静注:グルコース代謝においてチアミン補酵素として必要であり、チアミン欠乏患者では、グルコース投与は状態を悪化させる。
ナロキソン静注:オピオイドの拮抗薬としては使用するが、本患者は数日も使用しておらず、オピオイド離脱などは本患者には関連はなさそう。

ビタミンB12皮下注:ビタミンB12欠乏は、位置覚・振動覚異常の感覚異常や失調性歩行に始まる神経障害をもたらすが、ビタミン不足から数ヶ月から数年後に発症することが多い。

Key Point 

✓ 肥満手術を受けた人は錯乱、運動失調、眼振、眼筋麻痺に注意

Aasheim ET. Wernicke encephalopathy after bariatric surgery: a systematic review. Ann Surg. 2008;248(5):714-720. PMID: 18948797

 

歯科治療前の抗菌薬
Prophylactic antibiotics

❶症例

 46歳の女性、歯石除去を含めた歯の治療前の評価で来院。逆流のない僧帽弁逸脱症の既往があり、10年前に抗生剤治療が奏功したMRSAによる大動脈弁の心内膜炎があった。血圧低下、蕁麻疹、喘鳴に特徴付けられるペニシリンに対するアレルギ反応があった。バイタルは正常、収縮後期クリックを聴取し、その他は異常なし。

 歯科治療前の予防的抗菌薬の選択は?
A. アモキシシリン
B. セファレキシン
C. クリンダマイシン
D. バンコマイシン
E. 予防投薬なし

❷予防的抗菌薬
 AHAの感染性心内膜炎のガイドライン2007では、心内膜炎のリスクが高い患者のみ歯科治療前に抗菌薬の予防投与が推奨される。viridans group streptococciをターゲットとした抗菌薬を処置前の30〜60分前に単回投与する。ペニシリンアナフィラキシーの既往がある人には、クリンダマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシンが良く、アモキシシリンやセファレキシンのようなセファロスポリンは使用すべきではない。

❸その他の選択肢
バンコマイシン過去にMRSAによる心内膜炎であっても、今回の予防投与には影響ないため不要。

Key Point

✓ IEの既往があってもMRSAカバーは不要

 Wilson W, Taubert KA, Gewitz M, et al. American Heart Association Rheumatic Fever, Endocarditis, and Kawasaki Disease Committee; American Heart Association Council on Cardiovascular Disease in the Young; American Heart Association Council on Clinical Cardiology; American Heart Association Council on Cardiovascular Surgery and Anesthesia; Quality of Care and Outcomes Research Interdisciplinary Working Group. Prevention of infective endocarditis. Guidelines from the American Heart Association. A guideline from the American Heart Association Rheumatic Cardiovascular Disease in the Young, and the Council on Clinical Cardiology, Council on Cardiovascular Surgery and Anesthesia, and the Quality of Care and Outcomes Research Interdisciplinary Working Group. Circulation. 2007;116(15):1736-1754. PMID: 17446442

 

 

 

MKSAP for Students 5

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