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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:腋窩の紅斑/副腎不全/慢性発作性片側頭痛/IRIS

MKSAP 皮膚 内分泌 神経 感染症

MKSAP始めます。買ったばかりなのにPCの調子が悪い。

腋窩の紅斑 What the hell is it?

❶症例 
 50歳男性。無症状のピンク~褐色皮疹が腋窩に出現。3ヶ月前からあり、OTCステロイド外用薬に反応しない。内服薬はなくバイタルも正常。Wood灯で見ると、サンゴのようなピンク色の蛍光を示す。

 診断は?
A. 皮膚カンジダ
B. Erythrasma
C. インバース乾癬
D. 白癬

 ❷Erythrasma
  この患者はErythrasmaであり、グラム陽性菌であるCrynebacterium minutissimumによって引き起こされる表皮の局所感染症である。陰部、腋窩、股間、乳房の下などの湿った密閉空間を好む。時間が経つと、色が赤から褐色に変っていく。普通は無症状で、時折弱い掻痒感を伴うこともある。細菌が産生するポルフィリンによりWood灯で明るいピンク色に光る。エリスロマイシンやクリンダマイシンの外用薬で治療する。

❸その他の選択肢
皮膚カンジダ症:赤く、痒く、炎症性変化を伴うのが特徴である。皮膚と皮膚が擦れて、明るい、びらん性の病変となり、掻痒感より焼け付くような感覚がある。黄色く、液体で満たされており、辺縁がびらん状になっている環状病変が特徴である。

インバース乾癬:主に間擦部にできる乾癬であり、主に伸側にできる乾癬とは対照的である。外へ広がる鱗屑を伴わないため、しばしば真菌や細菌の感染と間違われる。インバース乾癬だと外用のステロイドで少しは改善するはずだがこの患者では改善が見られない。乾癬はErythrasmaより境界明瞭で炎症性である。

白癬:Erythrasmaと区別するのは臨床的に可能である。Erythrasmaの鱗屑は散在性であり、中心がきれいでない。白癬は辺縁から広がっていき中心はきれいである。KOH顕鏡では糸状菌の胞子を認める。皮疹の辺縁を擦過すると検出率が上がる。

Key Point
✓ Erythrasmaは皮膚の局所細菌感染症

Blaise G, Nikkels AF, Hermanns-Le T, Nikkels-Tassoudji N, Pierard GE. Corynebacterium-associated skin infections. Int J Dermatol. 2008;47(9):884-890. PMID: 18937649

 

副腎不全
Adrenal inssuficiency 

❶症例

 29歳女性。3ヶ月前からの倦怠感、嘔気、食欲不振、食塩渇望があり、6kgの体重減少を認める。5年前から甲状腺機能低下症をレボチロキシンで治療されており、甲状腺疾患、強皮症、若年白髪の家族歴がある。
 皮膚は日光に露出していない部位まで焼けている。
体温36.9℃ 血圧82/64 脈拍102 座位→ 血圧72/50 脈拍124 呼吸数16 BMI 23
身体所見は甲状腺含め正常。歯列に沿って着色がある。筋力低下はない。

Electrolytes

 

Sodium

126 meq/L (126 mmol/L)

Potassium

5.7 meq/L (5.7 mmol/L)

Chloride

101 meq/L (101 mmol/L)

Bicarbonate

22 meq/L (22 mmol/L)

Thyroid-stimulating hormone

6.2 µU/mL (6.2 mU/L)

Adrenocorticotropic hormone (ACTH) (1 PM)

234 pg/mL (51 pmol/L)

Cortisol, random (1 PM)

2.5 µg/dL (69 nmol/L) (normal, >3 µg/dL [83 nmol/L])

Dehydroepiandrosterone sulfate

0.2 µg/mL (0.54 µmol/L)

 次の一手は?
A. ヒドロコルゾン

B. レボチロキシン増量

C. 朝9時のコルチゾール、ACTH測定

D. 下垂体MRI

 原発性副腎不全
 この患者にはヒドロコルチゾンを投与すべきである。倦怠感、嘔気、体重減少、食塩渇望といった古典的な臨床症状と、低Na血症、高K血症、低コルチゾール、高ACTHといった血清学的特徴から原発性副腎不全の状態である。ミネラルコルチコイドやアンドロゲンの不足もデータからわかる。低血圧の状態でこのコルチゾールの値は不適切である。なぜなら低血圧はACTHを最もよく刺激する因子だからである。随時または朝8時のコルチゾールの値が3μg/dlを切っていたら、ACTH負荷試験なく診断できる。この状態でACTHが100pg/ml以上であれば原発性副腎不全となる。随時コルチゾールが17μg/dl以上であれば副腎不全はなく、この患者の低血圧ではそれくらいはあるのが普通である。同時に測定したACTHが高値だと副腎不全だとわかり、3つの副腎皮質ホルモンが下がっているため、原発性副腎不全である。原因は自己免疫性が多く、家族歴が重要で、ヒドロコルチゾンで治療すべきである。

❸その他の選択肢
レボチロキシン増量:TSHは若干上がっているが、新規に診断した副腎不全でレボチロキシンの量を増やすと、副腎不全が悪化する。

朝9時の採血:患者でのデータは診断が明確であり、朝9時に改めて測る必要はない。
下垂体MRIACTHはコルチゾールの低下に反応しており、下垂体を調べる必要はない。

Key Point
✓ 原発性副腎不全は採血だけでわかる

Chakera AJ, Vaidya B. Addison disease in adults: diagnosis and management. Am J Med. 2010;123(5):409-413. PMID: 20399314

 

慢性発作性片側頭痛
Chronic paroxysmal hemicrania

❶症例

 56歳女性が救急外来を受診。3週間前から頻度、痛みともに増悪する頭痛。1時間に1-2回、10-15分持続する。右の眼窩周囲に強く焼けるような痛みがあり、瞼は下がり、腫脹、充血、流涙、嘔気を伴っている。NSAIDsとオピオイドは効果なし。血圧136/92 脈拍76 右眼は軽度下垂と縮瞳を認めている。他の身体所見は正常。ESR延長なし。MRIも正常。

 治療は?
A. 
 カルバマゼピン
B.  インドメタシン
C.  プレドニゾン
D.  トピラマート
E.  ベラパミル

❷慢性発作性片側頭痛
 慢性発作性片側頭痛は頻度と持続時間で分類される群発頭痛の類似疾患であり、インドメタシンで治療すべきである。TACsとして知られ片側に流涙や眼瞼下垂、充血や鼻汁などを伴う三叉神経痛が特徴的である。典型的には強く、鋭く、焼けるような、貫くような痛みであり、三叉神経第1枝が侵される。TACsは頻度、持続時間により治療反応性が異なり、群発頭痛は15-180分持続し、1日に1-8回の発作がある。発作性片側頭痛は15分持続し、1日に8-40回発作があり、インドメタシンが劇的に効く。その1/3よりもっと頻度が低いものにSUNCTがあり、1日数十回‐数百回、数秒‐数分の発作が起こり、信頼のおける治療はない。

❸その他の選択肢
カルバマゼピン抗痙攣薬は三叉神経痛の第一選択薬であり、三叉神経領域の強い痛みを伴う。針で刺されたような痛みが2-3秒起こることを繰り返す。発作はしばしば痛みのない時期を数分伴い、口の周りをトリガーゾーンとしている。TACsとの鑑別点は、三叉神経第2-3枝が侵されることと、交感神経刺激症状が出ないところである。
プレドニゾン側頭部の痛みであるが血沈は亢進しておらず、側頭動脈炎らしさはない。よってプレドニンは推奨されない。
トピラマート・ベラパミル:片頭痛に対してはトピラマ-トの確かなエビデンスがあるが、群発頭痛には限られたエビデンスしかなく、発作性片側頭痛に関しては皆無である。同様にベラパミルは群発頭痛の予防に使うが、発作性片側頭痛には効果がない。

Key Point 

✓ TACsは頻度・持続時間で分類

AGoadsby PJ, Cittadini E, Cohen AS. Trigeminal autonomic cephalalgias: paroxysmal hemicrania, SUNCT/SUNA, and hemicrania continua. Semin Neurol. 2010;30(2):186-191. PMID: 20352588

 

免疫再構築症候群
Immune reconstitution inflammatory syndrome

❶症例

 40歳女性。3週間、頭痛、発熱、発汗が続き、昨日から複視と傾眠傾向が出てきた。2ヶ月前にHIV感染の診断を受けており、CD4は166でHIVRNAが69923であったため即日ART療法を開始された。今回の症状が出るまで薬剤の忍容性は良かった。テノホビル、エントリシタビン、エファビレンス、ST合剤を内服している。

体温38.2 血圧154/96 脈拍64 呼吸数18
覚醒しているが眠そうで、名前と場所は言えるが日時は言えなかった。眼球は左注視ができない。他の神経学的所見はない。
CT、MRIではわずかな脳室拡大と脳萎縮を認めた。
髄液所見:細胞数122(mono82%) Glu62 蛋白433
CD4 251 HIV-RNA 675

 原因微生物は?
A. クリプトコッカス
B. サイトメガロウィルス
C. ヒストプラズマ
D. トキソプラズマ

❷IRIS
 診断はクリプトコッカス感染症である。この患者はART療法開始後に髄膜炎の症状を呈しており、免疫再構築症候群(IRIS)に伴うクリプトコッカス感染症が最も考えられる。ART療法を始めると、HIV量は減少し、CD4細胞は増加し、免疫状態は改善する。日和見感染があると、臨床的に気づかれなかったものが、免疫状態改善に伴って過剰な免疫反応を引き起こす。IRISはART療法開始後、数週から数ヶ月で起こり、抗酸菌や播種性の真菌感染が起きやすくなる。髄液所見は炎症を反映しており、持続する頭痛、精神症状、神経症状はクリプトコッカス髄膜炎に合致する。髄液培養は結果的に病原微生物を同定するが、血清や髄液中のクリプトコッカス抗原の方がより迅速で感度95%と診断特性も良い。急性期治療としてアムホテリシンBの静注、それに続いて長期間のフルコナゾールの内服、頭蓋内圧の管理が必要である。

❸その他の選択肢
サイトメガロウィルス:脳炎を起こしうるが、CD4が100以上ある場合は稀である。MRIでは脳室周囲の病変を伴う。
ヒストプラズマ:ヒストプラズマ・カプスラーツムによって起こり、オハイオミシシッピ川の南西部で流行している。免疫不全者に肺病変を起こしやすく、全身に播種する。播種すれば中枢神経症状を呈しうるが、顕性の肺病変がなく否定的である。
トキソプラズマ
AIDS患者に脳炎を起こし、頭痛、精神症状、神経症状を伴うが、普通はCD4が100を切ってからである。MRIでもトキソプラズマ膿瘍と呼ばれるリング状の脳病変が認められる。

Key Point

✓ ART開始後はIRISに注意

 Letendre SL, Ellis RJ, Everall I, Ances B, Bharti A, McCutchan JA. Neurologic complications of HIV disease and their treatment. Top HIV Med. 2009;17(2):46-56. PMID: 19401607

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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