栃木県の総合内科医のブログ

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論文:RetroCohort ESBL産生腸内細菌菌血症に対する初期治療としてのPIPC/TAZ vs カルバペネム

ESBL産生腸内細菌菌血症に対するPIPC/TAZ vs カルバペネム
Empiric Piperacillin-Tazobactam versus Carbapenem in the treatment of bacteremia due to Expanded-Spectrum Beta-Lactamase-producing Enterobacteriaceae*1
PLoS ONE 11(4): e0153696. doi:10.1371/journal.pone.0153696

【背景】
 ESBL産生腸内細菌はESBLが蔓延している国々では菌血症の原因として比較的多く、高い死亡率と関連している。また、治療選択肢にはカルバペネム系薬剤が考慮される。PIPC/TAZがカルバペネムと同等に効果があるかは検証したデータが限られている
【方法】
 シンガポールで多施設共同の後ろ向き観察研究を行い、empiricalにTAZ/PIPC治療群とカルバペネム治療群の30日死亡率を比較した。TAZ/PIPCもしくはカルバペネムの単剤治療群のみを組み入れた。
 プロペンシティマッチスコアを用いて、多変量解析で死亡率が算出された。

f:id:tyabu7973:20160828181608j:plain(本文より引用)

【結果】
 合計394人のESBL産生大腸菌とESBL産生Klebsiella pneumoniaの菌血症症例が組み入れられ、23.1%が市中感染だった。151人が初期治療が単剤治療で、94例がTAZ/PIPC単剤、57例がカルバペネム単剤だった。カルバペネム投与群は、医療ケア関連リスクが高く感染源が不明な例が多かったが、尿路感染は多かった。
 30日死亡は、PIPC/TAZ群 29/94(30.9%)、カルバペネム群 17/57(29.8%)と両群に有意差を認めなかった。PIPC/TAZ群は30日後の多剤耐性と真菌感染が少なかった(PIPC/TAZ 7/94:7.4%、カルバペネム 14/51:24.6%)。交絡因子の調整後も、PIPC/TAZ使用は30日死亡と関連しなかった(OR 1.00:0.45-2.17)
【結論】
 empiricalな初期のPIPC/TAZ投与はカルバペネムと比較して、30日死亡と関連せず、多剤耐性や真菌感染が少ない可能性がある。

【批判的吟味】
・まずはAbstract!見た目が構造化抄録になっていない時点でだいぶ読みにくいです。当たり前の様に思っていたけど、まだこういったベタっとしたAbstractってあるんですね(涙)
・論文のPECOは
P:ESBL産生腸内細菌菌血症患者
E:PIPC/TAZ単剤治療
C:カルバペネム単剤治療
O:30日死亡
T:後ろ向き観察研究
・治療についての研究ですから本来はRCTが望ましいことは言うまでもありません。
・そして、なにより気をつけなくてはいけないのは初期治療の評価ということ。培養結果が出てからはPIPC/TAZ群もほとんどカルバペネムに変更しています。そのままPIPC/TAZで押し切った例が9人でした。
過去の研究でも軒並みPIPC・TAZ使用はカルバペネム使用より死亡率が高いという結果でした。
・ほとんどの菌血症は尿路感染症なので一般化は難しいかも。
【個人的な意見】
 まあ、最初数日外しても大丈夫と取るべきなのか、PIPC/TAZでもいけちゃうんじゃない?と取るかは微妙なところ。ただ、正直臨床的な感覚として、初期治療が当たっていないESBL菌血症が改善傾向で、今更カルバペネムにする??って時はあるので、そういう意味では最初外しても後で調整すればいいよね?って感じで使えるかもしれません。
 あとはde-escalationではなくて最初狭めで後からescalationする方法もあるのかもしれません。初期治療が100%当たっていなくてはいけないという訳でもない??まあ、にしてもPIPC/TAZだからかなりブロードな訳ですが・・・

✓ ESBL菌血症に対する初期のempirical治療がカルバペネムでなくてPIPC/TAZでも30日死亡率は変わらない