栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACPJC:Therapeutics 冠動脈疾患患者では内服治療にCABGを追加すると全死亡と心血管死亡が減る

ACPJCまとめ。
この辺りはやはり組み入れ基準が重要な気がします。
NEJMも目を通しているつもりなんですが読めてない記事も多いなあ。
それにしても左室機能低下の定義が何だか年々厳しくなりますね。今回は35%未満です・・・

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Coronary-artery bypass surgery in patients with ischemic cardiomyopathy.

Velazquez EJ, Lee KL, Jones RH, et al; STICHES Investigators.

N Engl J Med. 2016;374:1511-20.

 

臨床上の疑問:
 冠動脈疾患で左室収縮能低下患者では、最適な内服治療に加えてCABGを追加すると効果がありますか?

方法:
デザイン:ランダム化比較試験のサブグループ解析(Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure Extension Study:STICHES)

割り付け:隠蔽化

盲検:二重盲検(死因評価者)

フォローアップ期間:平均9.8年

セッティング:多国籍22ヵ国99カ所の医療機関

患者:1212人の冠動脈疾患の既往がある18歳以上(平均60歳、男性88%)で、CABG適応がありEF≦35%の患者が対象。
 除外基準は、3日以内の心原性ショック・大動脈弁置換が必要・最近の心筋梗塞・CABG施行歴・過去の臓器移植歴・心臓以外で生命予後が3年未満もしくは周術期死亡率が高い・LMTの50%以上の狭窄またはCanadian Cardiovascular Societyの狭心症クラスが≧Ⅲ以上。

介入:ランダム化後14日以内のCABG+内服治療群(n=610人) vs 内服治療単独群(n=602人)

アウトカムプライマリアウトカムは全死亡。セカンダリアウトカムは、心血管死亡と全死亡・心血管関連入院などの複合アウトカム。

患者フォローアップ率:98%

結果:
 最終的に試験期間中にCABG群の91%、内服治療群の20%がCABGを施行された。内服治療単独群と比較して、CABG+内服治療群は全死亡が低く(平均生存期間 7.7年 vs 6.3年)、心血管死亡や複合アウトカムも、CABG追加群が有意に少ない結果だった。

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(本文より引用)

結論:
 冠動脈疾患で左室収縮能低下患者では、最適な内服治療に加えてCABGを追加すると10年後の全死亡や心血管死亡が減る

 初期の臨床研究ではEF低下患者に対するCABGの効果が立証されていました(N Engl J Med. 1985;312:1665-71.)が、最近の研究では効果が無いことが報告(Eur J Heart Fail. 2011;13:227-33.)されてきています。で、EF<35%などの重度左心機能低下患者で検証してみましょうというのが今回の背景です。

 今回は2011年に行われたCABG群 vs 内服群で全死亡は差が無かったが、心血管死亡が減ったというSTICH研究(N Engl J Med. 2011;364:1607-16.)の長期フォローアップ研究になります。前回は56か月で有意差が付きませんでしたが、今回は10年近くのフォローアップで有意に全死亡が減ったという結果でした。

 限界としては選択バイアスで、組み入れが1施設あたり年間2.6例といいう少なさです。これでは実際の施設ではほとんど組み入れできる患者さんがいないかもしれません。また、そもそも内服 vs CABGだけではなく選択肢としてはPCIの役割が大きくなってきている昨今、多様な選択肢や患者希望に合わせて注意深く判断していく必要があるとされていました。また、循環器内科・カテーテル専門医・心臓血管外科医の3者で話し合うことは不可欠ともされています。

✓ 冠動脈疾患で高度の左室収縮能低下患者では、最適な内服治療に加えてCABGを追加すると10年後の全死亡や心血管死亡が減る