読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Retroobserve ESBL産生腸内細菌による菌血症に対するセフメタゾールとカルバペネムの比較 

ESBL産生腸内細菌による菌血症に対するセフメタゾールとカルバペネムの比較
Cefmetazole for bacteremia caused by ESBL-producing enterobacteriaceae comparing with carbapenems

BMC Infectious Diseases (2016) 16:427

【背景】
 ESBL産生腸内細菌は、治療選択肢があまりない治療が難しい菌である。カルバペネム系薬剤はしばしば用いられるが、カルバペネム耐性腸内細菌が問題となっておりカルバペネム系薬剤の使用の妨げになっている。セファマイシン系薬剤であるセフォキシチンやセフメタゾール、セフォテタンはin vitroではESBL産生腸内細菌に効果があるが、これらの菌の菌血症に対する臨床効果は十分証明されていない。
【方法】
 ESBL産生腸内細菌による菌血症症例に対するセフメタゾールの効果をカルバペネム系薬剤と比較した後ろ向き観察研究を行った。また、抗菌薬選択の年次推移も合わせて評価を行った。
【結果】
 69人の患者(男性34人、平均年齢69.2歳±14.4)が解析のために評価された。2例は再発症例だった。最も多かったのは大腸菌で64人 93%、次いでKlebsiella pneumoniaeとKlebsiella oxytocaがそれぞれ2人で4%だった。カルバペネムによる治療群が43人(62%)で、Pittsburgh Bacteremic scoreによる重症度はセフメタゾール群より高かった(1.5±1.5 vs 2.5±2.1,p=0.048)。
 カルバペネム群の5人およびセフメタゾール群の1人が観察期間中に亡くなった。CTX-9遺伝子は比較的多かった(全体の59%)。感染症専門医は、本調査の開始時点ではカルバペネムを推奨していたが、徐々にセフメタゾールを推奨する様に変化していた。

f:id:tyabu7973:20160912005548j:plain

(本文より引用)

【結論】
 セフメタゾールはESBL産生腸内細菌による菌血症に対する治療としては安全であり効果的な治療薬と言えるかもしれない。特に状態が安定してる患者の場合には。

【批判的吟味】
 まずはいつも通り論文のPECOから
P:ESBL産生腸内細菌菌血症
E:セフメタゾール治療群
C:カルバペネム治療群
O:セフメタゾールの効果
T:後ろ向き観察研究
・まず大前提として、治療効果判定に対してはRCTで効果を証明するのが重要なことは言うまでもありません。さらに単一施設ですし・・・
・セフメタゾールが選考されるのは交絡因子はあるはずであり、実際重症度はカルバペネム群の方が高い結果です。
・セフメタ群の方がIDコンサルトがより多く入っている傾向もありそうですし、セフメタゾールが選択されるセレクションバイアスがかなりありそうです。
・とはいえ、興味深いです。正直実感としてもCMZでいける気はしています。何にせよ菌血症というより重症度の高い状態で試しているのはすごいですね。こういった後ろ向き観察研究で時系列的な比較なら、前後比較の観察研究としてデータ出せるかもしれませんね。
【個人的な意見】
 こういったものを地道なデータとして出していくことは重要ですよね。最終的には多施設大規模なランダム化比較試験・・・ってなってくるとお金のにおいが漂ってしまいますね・・・

✓ ESBL産生腸内細菌菌血症の患者では、セフメタゾールによる治療は安全かつ効果的かもしれない