読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Retrocohort 脆弱性骨折前後の薬剤処方パターン

脆弱性骨折前後の薬剤処方パターン
Patterns of Prescription Drug Use Before and After Fragility Fracture


JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2016.4814 Published online August 22, 2016.

【背景】
 脆弱性骨折を起こした患者はその後の骨折リスクも高い。そして、内服薬はその後の骨折リスクを減らすことができる修正可能な一因子である。
【目的】
 骨折に関連すると思われる薬剤の脆弱性骨折前後の処方について記述した
【デザイン/セッティング/患者】
 2007年〜2011年の米国メディケア全体の40%をランダム抽出したデータを用いて、後ろ向き観察研究が2015年2月2016年3月まで行われた。全部で16万8133人の市中メディケア受給者で股関節・肩関節・手関節の骨折患者が組み入れられた。
 コホートのメンバーにはメディケアPart A/B/Dをカバーするサービスに登録が必要とされ、少なくとも骨折後4ヶ月間のうち30日は市内に居住していることが条件だった
【曝露】
 骨折の前後4ヶ月の処方薬
【メインアウトカム】
 骨折リスクを増やす薬剤の処方に関連したデータはメディケアパートDから測定された。主に①転倒リスクをあげる薬剤、②骨密度を低下させる薬剤、③機序不明の薬剤、の3つのカテゴリーに分けられた。骨密度を増加させる薬剤も調査された。

f:id:tyabu7973:20160919155021j:plain

(本文より引用)

【結果】
 合計16万8133人(女性14万1569人:84.2%)が脆弱性骨折を起こし、組み入れ基準を満たしていた。91.8%が白人。全ての骨折のタイプを合わせて検討し、平均年齢は80.0歳、53.2%が骨折時には入院していたが、これは骨折のタイプによって大きく異なっていた。股関節100%、手関節 8.2%、肩関節 15.0%。リハビリ病院への転院割合も骨折の種類によって異なり、急性期リハビリの期間は平均28.1日だった。
 多くの患者が、骨折4ヶ月前の時点で少なくとも1種類以上の非オピオイド系の骨折を起こしやすい薬剤を内服していた(股関節 77.1%、手関節 74.1%、肩関節 75.9%)。およそ7%の患者が骨折後にこれらの薬剤を中止していたが、骨折後に新規にこれらの薬剤を開始している影響で相殺された。骨折後の骨折を起こしやすい薬剤頻度も同様で、股関節 80.5%、手関節 74.3%、肩関節 76.9%だった。

f:id:tyabu7973:20160919155054j:plain

(本文より引用)
 骨折リスクの高い薬剤の平均処方率は変化がなかった。この傾向は3つの薬剤カテゴリー全てで同様だった。骨密度を強化する薬剤の使用は少なく、骨折前後で25%程度だった。
【結論】
 骨折リスクの高い薬剤との曝露は骨折後にもほとんど減薬されていなかった。一部の患者では骨折に関連する薬剤を減薬したが、新規に同数の骨折に関連する薬剤が開始された。
 このパターンは、次に起こる骨折を予防するための一つの因子を修正する機会を逃したとも言えます。

【批判的吟味】
・いつも通り論文のPECOから
P:脆弱性骨折に罹患したメディケア受給者16万8133人
E:骨折4ヶ月前の骨折に関連する薬剤処方
C:骨折4ヶ月後の骨折に関連する薬剤処方
O:処方の変化
T:後ろ向き観察研究
・メディケア受給者のパートDのデータなので代表性がどの程度担保されているか?と言われると微妙なところでしょうか。
・4ヶ月前の処方で確認で良いのか?という問題
・ベンゾジアゼピン系薬剤はパートDからは除外されていた模様
・ちなみに薬剤毎で見ると、ステロイド・PPI・チアゾリジン・睡眠薬・SSRI・向精神病薬あたりが検討されています
【個人的な意見】
 何にせよ骨折している患者さんの8割弱が骨折リスクをあげる薬剤を内服しているという事実が重要ですよね。そしてここはまだ手つかずということ。ただ、あくまでこの薬をやめたら患者の真のアウトカムが改善するかは今後の検証次第ということになります。

✓ 骨折リスクの高い薬剤は骨折しても中止されることは少ない。限られた修正可能なチャンスを生かそう