栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:脳梗塞/心筋梗塞/再現性のある胸痛/低Na血症

夏休み終わってしまいました。MKSAPしぶしぶ始めますー( ´∀` )

脳梗塞 Stroke

❶症例 
 78歳女性。12時間前に発症した左半身の麻痺と構音障害。家では水を飲むこともできなかった。高血圧と糖尿病の既往があり、生活習慣改善でコントロールしようとしていた。血圧190/90 脈拍68整 呼吸数16 頸動脈雑音は聴取せず。ひどい構音障害と左半身の麻痺、感覚障害を認めた。意識清明。Cre1.1 トロポニン、尿検査は陰性。頭部CTで右内包後脚に低濃度領域。心電図は正常洞調律で虚血性変化はない。胸部Xpは正常。

 診断は?
A. ヒドララジン静注
B. カンデサルタン
C. ラベタロール
D. ニトログリセリン

E. 治療不要

 ❷脳梗塞急性期の降圧
  現時点で降圧の必要はない。発症から12時間経っており、tPAの適応もない。AHAは末梢臓器の虚血所見(AMI、心不全、大動脈解離、高血圧性脳症、腎不全、痙攣)がない限り、tPA適応のない患者の220/120までの血圧は許容している。降圧薬による治療はペナンブラの灌流低下による神経学的予後の悪化を引き起こす。SCAST試験ではカンデサルタンの投与により神経学的所見の悪化を認めている。退院やリハビリ転院までには220/120以下への降圧を目標として、降圧薬を始めたり再開したりする。

 選択肢の降圧薬は現段階では不適切であり、経口薬は誤嚥のリスクが高く嚥下評価を行うべきである。

Key Point
✓ 脳梗塞急性期の降圧は220を超えたら

Sandset EC, Bath PM, Boysen G, et al; SCAST Study Group. The angiotensin-receptor blocker candesartan for treatment of acute stroke (SCAST): a randomised, placebo-controlled, double-blind trial. Lancet. 2011;377(9767):741-750. PMID: 21316752

 

心筋梗塞
Acute Myocardial Infarction 

❶症例

 78歳男性。胸痛で救急外来を受診。安静時に始まった左胸骨下の痛みが12時間持続している。初回のエピソード。高血圧に対しニフェジピン内服中。30-pack-yearの現喫煙者。体温37.9℃ 血圧130/80 脈拍72 呼吸数12 BMI 28 頸動脈波正常で雑音なし。頚静脈怒張なし。心音は副雑音なし。肺音は清。末梢動脈触知良好。浮腫なし。
CK500 トロポニンI 26 他異常なし。心電図は脈拍70の整、Ⅱ、Ⅲ、aVfに2mmのST上昇、V2-3は1mmのST低下。CAGでLAD近位部の狭窄が見つかった。
 
 治療は?
A. CABG

B. 血栓溶解療法

C. 内服薬

D. PCI

 ❷心筋梗塞の治療
 STEMIの再灌流療法にはPCIと血栓溶解療法が含まれる。もう少し遅ければこの患者はPCIのみとなる。PCIは心原性ショックや脳出血の既往、3ヶ月以内の脳梗塞、大動脈解離疑い、出血などの血栓溶解の禁忌例でも行える。

❸その他の選択肢
CABG:救急でのAMIに対し、CABGは第一選択とはならない。診断のためのCAGをし、外科と手術室に連絡を取り、手術を行うまでに心筋はどんどん壊死していく。

血栓溶解療法:発症から12時間以上経過している患者ではtPAの明らかな利益はない。ガイドラインでは発症早期で出血リスクが低ければ血栓溶解療法の適応があるが、可能であればPCIがより好ましい。
内服薬:内服単独に比べ再灌流療法をすることで予後は改善する。

Key Point
✓ 急性心筋梗塞にはPCIと血栓溶解療法を考慮

Armstrong PW, Westerhout CM, Welsh RC. Duration of symptoms is the key modulator of the choice of reperfusion for ST-elevation myocardial infarction. Circulation. 2009;119(9):1293-1303. PMID: 19273730

 

再現性のある胸痛
Reproducible chest pain

❶症例

 38歳男性、非胸膜性の鋭い前胸部痛を主訴に来院。胸痛は3〜10時間が持続する。胸骨の左側に痛みがあるが、胸全体に広がるが、肩や腕、背部には放散しない。疼痛は安静時にある。体幹の後方の動きで悪化する。特に既往症なく薬剤歴なし。体温37.0 °C (98.6 °F)、血圧132/70 mm Hg、脈拍90/分, 呼吸14/分、BMI 26、胸骨に沿って再現性のある圧痛あり。心音は異常なし。

 診断は?
A. 
 急性心膜炎
B.  大動脈解離
C.  肋軟骨炎
D.  不安定狭心症

❷肋軟骨炎
 筋骨格系の胸痛は数時間から数週間持続する。鋭くて胸部の局所に限局する疼痛である。深呼吸や腕を動かすことで悪化する。

❸その他の選択肢
急性心膜炎:急性心膜炎による胸痛は、典型的には胸膜痛であり、横になると悪化する。胸膜摩擦音を聴取する。この患者には最近のウイルス感染や心筋梗塞、結合組織病、外傷、尿毒症といった心膜炎のリスクはなく、それらしくない。
大動脈解離:猛烈な引き裂くような背部の痛みが出る。一般的には高血圧の既往があり、脈の大きさは左右差がある。
不安定狭心症:心疾患のリスクファクターはなく、心疾患を示唆する病歴ではない。腕への放散痛や労作時の変化や安静による軽減、発汗、悪心嘔吐はない。年齢や胸痛の性状からACSの可能性は低い。

Key Point 

✓ 再現性の有無に関わらず心原性は考慮

Stochkendahl MJ, Christensen HW. Chest pain in focal musculoskeletal disorders. Med Clin North Am. 2010;94(2):259-273. PMID: 20380955

 

免疫再構築症候群
Immune reconstitution inflammatory syndrome

❶症例

 75歳の男性、3週間前からの腹囲の増大を主訴に来院。アルコール性肝硬変あり。未だに飲酒しており、薬剤のコンプライアンスも悪く、肝移植の対象にはならない。薬剤はプロプラノロールのみである。意識清明、体温36.2 °C 、血圧106/58 mm Hg、脈拍58/分、呼吸16/分、BMI 20、局所神経症状なし、アステレキシス、腹部の濁音移動なし。下腿浮腫あり。

Laboratory studies:

Albumin

2.0 g/dL (20 g/L)

Blood urea nitrogen

8 mg/dL (2.9 mmol/L)

Serum creatinine

1.6 mg/dL (141 µmol/L)

Electrolytes

 

Sodium

119 meq/L (119 mmol/L)

Potassium

3.6 meq/L (3.6 mmol/L)

Chloride

87 meq/L (87 mmol/L)

Bicarbonate

21 meq/L (21 mmol/L)

Glucose

95 mg/dL (5.3 mmol/L)

Osmolality

250 mosm/kg H2O

Urine studies:

 

Osmolality

156 mosm/kg H2O (normal range, 300-900 mosm/kg H2O)

Potassium

5 meq/L (5 mmol/L) (normal range for men, 11-99 meq/L [11-99 mmol/L])

Sodium

<5 meq/L (5 mmol/L) (normal range for men, 18-301 meq/L [18-301 mmol/L])

診断のための穿刺検査では、滲出性腹水であった。好中球は50/µL。

 適切なNa管理は?
A. 3%生理食塩水
B. コニバプタン
C. デメクロサイクリン
D. 水制限

❷低Na血症
 水制限は、血清Naが120meq/L未満の肝硬変患者の無症候性の低Na血症の管理として重要である。神経症状がない場合は、低Na血症が慢性であり、急速補正は不要であると示唆している。

❸その他の選択肢
3%生理食塩水:神経症状がある場合や、肝移植前でNa値が130 meq/L 未満の患者に対して投与する。
コニバプタン:V2 とV1a receptorsをブロックし、V1a receptorsは、血圧を下げ、肝硬変患者の静脈瘤破裂のリスクを上げるため、相対的に禁忌である。
デメクロサイクリン:
SIADHによる低Na血症の管理に使用される。

Key Point

✓ 肝硬変由来の無症候性の低Na血症には水制限

Ginès P, Guevara M. Hyponatremia in cirrhosis: pathogenesis, clinical significance, and management. Hepatology. 2008;48(3):1002-1010. PMID: 18671303

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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