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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:HbA1cの解釈/卵巣癌/大動脈解離/HP体とは

MKSAP 皮膚 検査 心臓血管外科 循環器 悪性腫瘍 産婦 内分泌

MKSAP全問正解が続いています。問題が簡単なのか読むのがうまくなったのか。では張り切って!

HbA1cの解釈 How to HbA1c

❶症例 
 48歳女性。HbA1cが8.5%(予測平均血糖197)。2型糖尿病で過去3ヶ月の空腹時血糖の平均は132。また月経過多による鉄欠乏性貧血に対し、最近鉄剤が開始された。他の薬剤はインスリン眠前とメトホルミン3回。体温36.9℃ 血圧127/78 脈拍77 呼吸数14 BMI26 その他身体所見特記事項なし。採血ではHbA1c8.5%、随時血糖130以外異常なく、血糖モニターの平均は132である。

 HbA1cと血糖値との解離の原因は?
A. モニターの不備
B. 鉄剤の補充
C. 夜間低血糖
D. 食後高血糖

 ❷HbA1cの解釈
  HbA1cと血糖モニターとの解離の原因は食後高血糖である。患者は空腹時や食前のみ血糖を測定されており、食後高血糖は反映されていない。記録上は目標である130前後であるが、実際食後数時間は200を超えているだろう。これが患者のHbA1c高値の原因であり、HbA1cは空腹時、食前、食後、夜間を含めた3ヶ月の血糖の平均を表している。

 
血糖モニターの不備も時にはあるかもしれないが、可能性は極めて低く、モニターと実際の血糖の誤差は10%未満である。
 
HbA1cは赤血球寿命の影響を直接受ける。未治療の鉄欠乏やビタミンB12、葉酸の欠乏による貧血では赤血球寿命が延び、高い値となる。逆に溶血性貧血や鉄、ビタミンの補充、エリスロポエチンにより赤血球のターンオーバーが速くなるとHbA1cは低く出る。この患者ではむしろ低く出るはずである。
 
この患者が夜間低血糖の遷延を起こしていると、HbA1cは低く出る。

Key Point
✓ 貧血時のHbA1c解釈は慎重に

Nathan DM, Kuenen J, Borg R, Zheng H, Schoenfeld D, Heine RJ; A1c-Derived Average Glucose Study Group. Translating the A1C assay into estimated average glucose values [erratum in Diabetes Care. 2009;32(1):207]. Diabetes Care. 2008; 31(8):1473-1478. PMID: 18540046

 

卵巣癌
Ovarian cancer

❶症例

 56歳女性の卵巣癌フォローを実施する。卵巣癌はStageⅢcで病理学的には中等度悪性。腹腔内と経静脈的な化学療法を6コース行った。化学療法中は手足に中等度の神経障害と脱力があり、体重は13.6kg減少した。化学療法終了時のCA125は正常値で、CT上腫瘍は陰性である
 
 適切なマネージメントは?
A. 1年間は4ヶ月毎にCTを撮る

B. 4ヶ月毎に病歴、身体診察、骨盤診察をし、CA125を測る

C. 1年後に病歴、身体診察、骨盤診察をし、CA125を測る

D. 1年後にパクリタキセルによる維持療法を行う

 ❷卵巣癌のフォロー

 最も適切なアプローチは4ヶ月毎に病歴、身体診察、骨盤診察をし、CA125を測ることである。この患者は進行卵巣癌に対し、化学療法が行われている。プラチナ製剤を含むアジュバントセラピーはStageⅠc以上の進行癌の生存率を上げる。CR患者は化学療法終了後少なくとも2年は3-4ヶ月毎に病歴、身体診察、骨盤診察、CA125をフォローすべきである。セカンドラインの化学療法が非常に有効なため再発は早期に発見すべきであり、遅れがあると腸閉塞などの腹腔内合併症が起きる。
 
CTは生存率と関連がない。NCCNのガイドラインでは臨床的に疑われない限り推奨していない。
 
StageⅢ、Ⅳの患者の卵巣癌再発率は70%以上であり、再発に対する化学療法は生存率を上げるため、1年後のフォローでは遅い。
 
維持療法の効果は明らかではなく、この患者は化学療法への反応がよいため現時点で施行する必要はない。

Key Point
✓ 化学療法後のフォローはまめに

Morgan RJ Jr, Alvarez RD, Armstrong DK, et al; National Comprehensive Cancer Network. Ovarian cancer. Clinical practice guidelines in oncology. J Natl Compr Canc Netw. 2008;6(8):766-794. PMID: 18926089

 

大動脈解離
Aortic disection

❶症例

 41歳男性。6時間前に突然発症したひどい胸背部痛。病院には定期通院しておらず、内服もない。体温37.6℃ 血圧190/110 脈拍100 呼吸数18 SpO2 98%(RA) 聴診上S4聴取。末梢動脈触知良好、左右差なし。murmurなし。

 

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(本文より引用)
薬物検査待ち。ECGは洞性頻脈でLVH、早期再分極を認める。
  
モルヒネ、ラベタロール、ニトロ製剤が開始された。

 追加治療はどれか?
A. 
 カテーテル
B.  血管内ステント
C.  手術
D.  追加治療なし

❷大動脈解離
 この患者には薬物治療が推奨され現時点で追加治療の必要はない。画像上、上行大動脈の解離はなく、StanfordB型大動脈解離である。偽腔への血流はintact flowである。コカイン使用が大動脈解離のリスクを上げる。

 
B型大動脈解離の生存率は薬物治療のみで90%を超える。大動脈へのストレス軽減のため、脈拍を60未満、血圧の目標を110-120とする。最近のコカイン使用があればラベタロールがα作用とβ作用のバランスを取り、理論上は有効である。
 
カテーテル治療はB型で命を脅かす腸間膜や腎臓、末梢動脈の虚血が起きている場合は有効である。この患者には起きていない。
 
偽腔や大動脈径が40mmを超えると臓器虚血や破裂、解離関連死のリスクが上がる。予防的な血管内ステント留置に関しては、薬物治療単独と比べて2年生存率を変えないというRCTがある。
 
B型でも治療に反応しない痛みや虚血、破裂があると、血管内治療や外科手術を考慮しなければならない。

Key Point 

✓ B型の解離は降圧から

Nienaber CA, Rousseau H, Eggebrecht H, et al; INSTEAD Trial. Randomized comparison of strategies for type B aortic dissection: the INvestigation of STEnt Grafts in Aortic Dissection (INSTEAD) trial. Circulation. 2009;120(25):2519-2528. PMID: 19996018

 

HP体とは

What is HP body?

❶症例

 25歳男性。数ヶ月前から下肢と鼠径部に掻痒感を伴う丘疹がある。初めは小さく硬かったが、今は赤く熱感がある。家族歴はなく、アレルギーもない。性活動は活発である。バイタル、身体所見は正常。

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(本文より引用)

病理ではHenderson-Patterson体が見られる。

 診断は?
A. 毛包炎
B. 基底細胞癌
C. 伝染性軟属腫
D. 疣贅

❷HP体

 この患者は伝染性軟属腫であり、ポックスウィルスによるcommonな皮膚感染症である。小児や性活動が活発な成人に起こりやすい。初めは硬く臍を伴わず滑らかであり、全身どこにできてもよく、特に皺が寄る部位、股間にできやすい。免疫不全では病変が拡がりやすく、治療抵抗性となる。伝染性軟属腫による炎症は個体の免疫反応であり自然消退する。二次感染は起こしにくいが、起きると治癒過程の伝染性軟属腫に似る。二次感染が疑われたら培養を取る。中心核は膿と間違いやすいが触れると硬いことがわかる。段階によって鑑別が変わり、初期は基底細胞癌や皮膚付属器腫瘍、疣贅、Spitz母斑が上げられる。鑑別に迷う時は生検を施行すると、真皮ケラチノサイトにHenderson-Patterson体が観察される。伝染性軟属腫は一時的なことが多いが、長いと数年続くこともある。
 
治癒過程の伝染性軟属腫は二次感染と間違いやすいが触診で鑑別できる。また毛包炎は毛包に一致する丘疹でありこの患者ではその所見はない。基底細胞癌は露光部に発生する血管拡張を伴う真珠状の隆起で多発することはほとんどない。疣贅はもっと乳頭状である。

Key Point

✓ HP体を見たら伝染性軟属腫

van der Wouden JC, van der Sande, van Suijlekom-Smit LW, Berger M, Butler C, Koning S. Interventions for cutaneous molluscum contagiosum. Cochrane Database Syst Rev. 2009; 4:CD004767. PMID: 19821333

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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