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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

デスカンファ:看取りは目的ではない

デスカンファ 在宅

Tです。
 先月末も怒濤のカンファレンス、学習会ラッシュでした。学習会では、隣接県で在宅医療に力を入れている医師の話を聞く機会があり、私達の地域での実践とも通じる部分がとても多く、学びの多い講演でした。
 
 その中でも「看取りは(在宅医療の)目的ではない、ただの到達点」だと言う話がありました。在宅医療や終末期医療の話の中で「死に場所」の話題がよく取り上げられるかも知れませんが、どこでどのように亡くなりたいかより、どのように生ききりたいのかが大切ですね。

 さて、今回は60代の悪性腫瘍でご自宅で亡くなられた方を取り上げました。臨床倫理の4分割法での情報整理は以下のようになりました。

【医学的適応】
・悪性腫瘍   化学療法が効果を上げて数年間状態の良い期間が続きました
・月の単位で状態が緩やかに悪化
・週の単位で急な状態悪化が始まった頃に訪問診療依頼

【意向】
・本人) 家が良い。でも家族が大変だから入院も考える
・家族)(本人の家族を思いやる言葉を聞いて) 自宅で最後までと思っています。
・でも、不安でいっぱいです。

【周囲の状況】
・介護者は配偶者のみ。
・経済的負担には少し不安がある
・ケアマネージャーは以前から他の家族の件で関わりあり
・訪問診療、福祉用具、ヘルパー、続いて訪問看護、訪問入浴と数日のうちに導入

【QOL】
・自宅で最後まで過ごすこと
・苦痛の緩和
・家族と一緒に過ごすこと
・家族が疲弊しないこと、笑顔でいるサポート
・好きな入浴の実施
・本人、家族の不安を取り除く

(※情報は個人情報に配慮しています)

 カンファレンスでの話題から抜粋してみます。

・在宅のサポートチームにとっては短期間の関わりだったのですが、関わりの中で数年間の療養生活がどんな様子だったかを各職種がとてもよく聞き取っていました。その中で、化学療法が効果をあげていた時期は、精力的に出かけ、やりたいことをやっていた事がわかりました。とても充実した時間だったようです。

・でも、この方は発病前の50歳を過ぎてからすでに精力的に色々な活動をしていました。元々充実した生き方を実践していた方だったのです。療養の過程では、幾度かのターニングポイントとなる場面があり、そこに病院の主治医が本人の意向を尊重しながら寄り添っていた事が印象的でした。

・それらの布石があった上で、最終的に入院での姑息的治療は選択せず、ご自分の意思で在宅療養を選んだ事が分かりました。

・振り返ると、私達が関わる前に、最後まで自宅で過ごすことの人生における準備はあらかた済んでいたように思えます。

・また、お別れのあと少し経ってからご家族を訪問した様子も共有されました。これは、グリーフケアの一環として各事業所が自発的に行っているものです。ご家族にとっては、やはり突然すぎる別れであったようです。寂しすぎる別れではあるけれども、それでも、在宅療養を選択して良かったと思っていただけたようです。

 

ご家族からの言葉 下記のような話をしてくださいました。

「サポートチームの連携が迅速かつ強力で不安なくケアに関われました」

入院中より素早くてびっくりしました」

「それぞれのスタッフが病気の事だけにとらわれずに色々な話をしてくれたことでリラックスできて笑いながら過ごすことができました」

「皆さんがほとんど病気の話をしないので気が楽になりました」

「状態が悪いなかでも訪問入浴で2回入浴できて、とても本人が喜んでいたことが嬉しかった」

「短期間の関わりでも、多職種の関わりが十分に本人や家族の支えになっていた事が分かりました」

 

さて、今回のポイントです。
・看取りは目的ではない。生きることの一つの到達点。
・短期間の関わりでも本人、家族との良好な関係性構築は可能。
・そのためにも密な連携、迅速さが大切。

残されたご家族へのグリーフケアの関わりは続けていきたいと思います。
それでは、また。

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