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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:スルバクタムは何のため?/薬剤性の膵炎/膵嚢胞の合併症

カンファ 薬剤 消化器 感染症

カンファネタです。
久々に膵臓祭りでした。膵炎大変だなあ。
と思いつつ。あとは後期研修が新規に来ると楽しいですね。

スルバクタムは何のため? What is sulbactum for?

 皆様ユナシンⓇは好きですか?ABPC/SBTは大変良い薬です。ペニシリン系を軸にβラクタマーゼ阻害薬を配合しており、非常に広域ですよね。で、よく見かけるプラクティスが

「誤嚥にユナシンⓇ!」

ってやつです。この呪文は本当によく見られます。で、後期研修医とのやり取り。

指導医「誤嚥性肺炎の時のABPC/SBTなんだけど、起因菌は何を狙っているの?」

研修医「えーっと、口腔内常在菌と嫌気性菌です!」

指導医「そうだねえ、じゃあこのABPC/SBTのSBT(スルバクタム)は何を目的に使用しているの?」

研修医「嫌気性菌です!(`ω´)キリッ

指導医「・・・嫌気性菌は、ABPCがカバーしてるよねえ?」

研修医「え!?そうなんですか??ABPCが??

指導医「うん。じゃあスルバクタムは何のため?」

 これが冒頭の表題に繋がってきます。ABPCは基本的にはグラム陽性球菌で嫌気性菌も好気性菌にもよく効きます。横隔膜上の嫌気性菌であればカバーできます。スルバクタムはあくまでβラクタマーゼ阻害剤なので、βラクタマーゼ産生菌のカバーなのです。誤嚥関連で問題になるのは、黄色ブドウ球菌やインフルエンザ桿菌などでしょうか。もちろん嫌気性菌でもβラクタマーゼ産生するやつもいますが、代表格のバクテロイデスさんは横隔膜下の原因菌ですよね。黄色ブドウ球菌の誤嚥性肺炎はそれほど多くなく、インフルエンザ桿菌の感受性は施設毎に異なるとは思いますが、当院では耐性はそれほど高くありません。あとは誤嚥の腸内細菌くらいでしょうか。

 誤嚥性肺炎でグラム染色である程度、polymicrobialでグラム陰性桿菌びっしりとかでなければ、ほとんどの場合はスルバクタムは不要です。ABPCしっかり使えば十分治療が出来ることは頭の片隅に置いておいても良いでしょう。
 
 何でもカバーしておけば安心病は皆にありますが、言い出すとキリがないという側面もあり、患者さんの状態も考慮しながらバランスよく対処していく事が重要です。

 ✓ スルバクタムが嫌気性菌をカバーするわけではない!

 

薬剤性の膵炎 Drug induced pancreatitis

 膵炎の原因として薬剤がありますが、今回はそのおさらい。あらためて文献検索したら、2015年にReview(The Ochsner Journal 15:45–51, 2015)がでていました。

 まず簡単な機序としては、膵管狭窄・膵細胞障害性・毒性代謝物の蓄積・過敏性反応などがあります。また、薬剤性に高中性脂肪血症を来したり、慢性的な高カルシウム血症を来すことで、二次的に膵炎を来すこともあります。他には、局所の血管浮腫や動脈血栓などの機序も報告されています。

 可能性のある薬剤のリストは以下

f:id:tyabu7973:20161016163925j:plain(文献より引用)

✓ 薬剤性膵炎の機序も薬剤も多彩

 

 

仮性膵嚢胞の合併症 Complications of pancreatic pseudocysts

 膵仮性嚢胞は急性膵炎後の合併症として有名です。膵嚢胞自体は膵内あるいは膵周囲に形成された中空の構造で、嚢胞壁内腔面に上皮細胞を認めないものと定義されています。

 膵仮性嚢胞の合併症として、感染・閉塞・破裂・穿通・出血などがあります。合併症は特に慢性膵炎が急性増悪した場合にできた仮性嚢胞の方が合併症を来しやすく、大きさが6cmを超える場合に頻度が多くなります。合併症頻度は経過観察例の30-50%に発症したという報告もあり、意外と多いのかもしれません。

 それぞれの合併症をざっくり紹介してみます。結構熱いことも書いてあります!

①感染:嚢胞内感染を来たすことがあります。一般には慢性膵炎急性増悪後の仮性嚢胞に起こることが多い。膵管狭窄などにより形成された慢性仮性嚢胞では感染を来たすことは稀である。
②閉塞:嚢胞により消化管や胆道の閉塞を起こすことがある。消化管閉塞としては一般的には胃・十二指腸が多いが、稀に下部消化管閉塞も起こすこともある。胆道閉塞では黄疸を来たす。また、稀ではあるが下大静脈の狭窄を来たし下腿浮腫の原因となる場合もある。
③破裂・穿通:腹腔内への破裂、消化管や周囲臓器(肝臓や脾臓)への穿通が報告されている。嚢胞内の膵酵素により消化管壁の脆弱化を招き消化管に穿通する症例は稀ではない。この場合は消化管に内瘻化されたこととなり結果的に治癒した症例も報告されている。また、腹腔内や胸腔内への破裂により、膵性胸腹水を来たすことがある。門脈への穿破も報告されている。
④出血:嚢胞内出血に関しては、嚢胞壁の血管破綻によるもの、または周囲への炎症波及による周囲動脈の破綻や嚢胞周囲に仮性動脈瘤が形成され嚢胞内へ穿破することで嚢胞出血を来たすものなどがあげられる。この仮性動脈瘤は、膵管や胆管、稀には腹腔内に出血を来たすこともある。また、嚢胞そのものが脾静脈を圧排閉塞させ左側門脈圧亢進症を来たし消化管静脈瘤の原因となることがある。

詳細は以下に掲載してあります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/suizo/24/5/24_5_571/_pdf

  ✓ 膵嚢胞の合併症を整理しておこう