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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:胸痛/妊娠中の掻痒感/OSAS×ALS/VAP予防

MKSAP

すっかり寒くなりましたね。メンバーが増えてMKSAPも盛り上がっております!

胸痛 Chest pain

❶症例 
 40歳女性。5日前からの間欠的な胸骨下の鋭い痛み。深吸気で増悪する。1週間前から発熱、咽頭痛を自覚。咳はない。診察上、前胸部の摩擦音があり、肺音は清。

 心電図ではV1-V4、aVR、aVLで2㎜のST上昇。CAGでは前壁中央から遠位、前側壁、心尖部に壁運動低下を認め、EFは45%、冠動脈の閉塞はなかった。来院24時間後のトロポニンIは45ng/ml。入院して3日間、呼吸困難感は増悪している。

 血圧92/54 脈拍123 呼吸数33 頸静脈怒張なし。聴診上ギャロップ聴取、心音減弱、摩擦音なし。奇脈は7mmHg。両側上肺野背側1/4にcrackle聴取。心電図では同じ誘導に0.5㎜のST上昇とT波のinversion。胸部Xpでは肺水腫。心臓超音波では前壁、側壁、心尖部で壁運動消失しEF30%。左室肥大。軽度の心嚢液貯留。

 診断は?
A. 心タンポナーデ
B. 心筋心膜炎
C. 心筋梗塞後症候群
D. たこつぼ型心筋症

 ❷心筋心膜炎
  この患者は、心不全に至った心筋心膜炎である。心筋心膜炎の診断は急性心膜炎に合併した心筋梗塞以外の心筋障害によりなされる。ST上昇は下に凸で局所的である。この患者は新規の壁運動異常、左室機能低下、心筋逸脱酵素の上昇を認め、心不全が進行した。

 心膜炎の合併症としての心タンポナーデでは呼吸困難を伴うが、この患者は頸静脈怒張や奇脈を認めない。心嚢液貯留は心膜炎、心筋心膜炎でも起こりうる。

 心筋梗塞後症候群は心筋梗塞による心筋障害後の心膜炎である。それ自体は原則心不全は起こさない。

 たこつぼ型心筋症は胸痛、ST上昇、左室機能低下、冠動脈正常、一過性の真菌逸脱酵素上昇を起こしうる。しかし、トロポニンIの上昇は軽度にとどまり、典型的には左室心尖部の腫大が特徴的である。

Key Point
✓ 心膜炎+心不全=心筋心膜炎を考える

Omar HR, Fathy A, Rashad R, Elghonemy M. Acute perimyocarditis mimicking transmural myocardial infarction. Int Arch Med. 2009;2(1):37. PMID: 20003228

 

妊娠中の掻痒感

What is ICP? 

❶症例

 26歳女性。夜起きてしまうような頑固な掻痒感。妊娠25週で、ビタミン、葉酸の内服中。体温36.7℃ 血圧110/65 脈拍88 呼吸数14 BMI27 意識清明。眼球結膜黄染。腕、胸、足に掻把痕。点状出血、変色なし。エコー上、胎児発育正常。腹水、臓器腫大なし。

Laboratory studies:

Hematocrit

36%

Leukocyte count

4500/µL (4.5 × 109/L)

Platelet count

350,000/µL (350 × 109/L)

INR

1.1 (normal range, 0.8-1.2)

Albumin

3.4 g/dL (34 g/L)

Alkaline phosphatase

160 units/L

Alanine aminotransferase

32 units/L

Aspartate aminotransferase

32 units/L

Total bilirubin

2.2 mg/dL (37.6 µmol/L)

 

 診断は?
A. 急性脂肪肝
B. HELLP症候群
C. 妊娠悪阻
D. 肝内胆汁うっ滞

 ❷妊娠中の掻痒感
 診断は妊娠中の肝内胆汁うっ滞(以下ICP)である。妊娠中期、後期に発症し、産後軽快する。ICPは南アジア、南米、スカンジナビア系に多い。全身の掻痒感があり掻把してしまう。検査では軽度のビリルビン、ALPの上昇を認めることが多い。肝酵素が上がってもよい。胆汁酸の上昇が最も感度が高く、単独上昇の患者もいる。ICPは性ホルモンによる肝細胞からの胆汁酸排泄阻害と考えられている。ウルソデオキシコール酸の投与で症状の改善が見込める。母体の症状は軽度だが、胎児ジストレスや発育遅延を起こしうる上、内服によって発症を必ずしも抑えられない。高胆汁酸血症の妊婦にはたーみネーションが推奨される。

 HELLP症候群は溶血性貧血、肝酵素上昇、血小板減少を3徴とする。妊娠後期に起こりやすくたーみネーションが必要である。この患者は3徴を満たさずHELLPは除外できる。急性脂肪肝では肝酵素上昇と凝固異常を起こすが、この患者にはない。

 妊娠悪阻は妊娠初期に起こり16週まで続く。たゆみない嘔気、嘔吐が特徴で半数に肝酵素上昇を認めるが症状が落ち着けば下がる。胆汁うっ滞や掻痒感は起こらない。

Key Point
✓ 妊娠中の掻痒感はICPを想起

Pan C, Perumalswami PV. Pregnancy-related liver diseases. Clin Liver Dis. 2011;15(1):199-208. PMID: 21112001

 

OSAS
Obstructive sleep apnea syndrome

❶症例

 68歳の男性、日中の眠気で来院。ALS患者であり、妻に、夜間の無呼吸を指摘されている。体温37.4 °C 、血圧116/74 mm Hg、脈拍82/min、呼吸数16/分、BMI 23. 鼻咽腔は保たれており、四肢の筋萎縮あり、舌と腕と大腿の筋攣縮は著明。上肢で反射亢進と筋力低下を認める。起床している時の動脈血液ガスでは、pH 7.39、PO2 61mmHg 、PCO2 53 mm Hg

 適切な治療は?
A. 
 BiPAP
B.  CPAP
C.  酸素投与
D.  気管切開

❷OSAS×ALS
 OSASはALS患者によくあるが、この患者では起床している時の血ガスでも呼吸不全があると考えられる。
BiPAPは呼気吸気ともにサポートし、夜間使用することで夜間・日中のPCO2を下げ、日中の眠気も改善する。 

 CPAPは上気道を開存させるが、換気は改善しない。高CO2貯留のないOSAS単独では、CPAPが良いが、低換気のためBiPAPも必要である。

  神経筋疾患の高CO2の呼吸不全の患者に酸素投与すると更に換気低下を引き起こす。

  気管切開は、侵襲的な呼吸器管理ができない人や口腔内分泌を管理でいない人にやる。

Key Point 

✓ 神経筋疾患による高CO2の治療はBiPAP

Hardiman O. Management of respiratory symptoms in ALS. J Neurol. 2011;258(3):359-365. PMID: 21082322

 

VAP予防
Ventilator associated pneumonia prevention

❶症例

 61歳の男性、冠動脈バイパス手術と大動脈弁置換術前日。心原性ショックで4日間ICUに入室し、銀コーティングされていない普通の挿管チューブで挿管されている。麻酔と鎮静をかけられ、点滴でPPIとニトログリセリンを投与されている。全身状態は落ち着いており、発熱なし。

 人工呼吸器関連肺炎(VAP)を予防するには?
A. 
 クロルヘキシジンで体を洗う
B.  手術前から抜管まで抗菌薬の予防投与を行う
C.  30°ベッドアップ
D.  気管切開

E.銀コーティングのチューブに交換

❷VAP予防
 人工呼吸器関連の感染は、“bundle”を参照するのがよく、 (1) 30°ヘッドアップ 、(2)呼吸器からの離脱ができるか毎日評価する、(3) クロルヘキシジンによる口腔内ケアを行うのが良い。

 抗菌薬予防投与や気切はVAPを予防するというエビデンスは現在ない。

 抗菌薬でコーティングされている気管チューブはVAP予防になるが、銀コーティングのものは近年推奨されていない。

Key Point 

✓ VAP予防バンドルに則って

American Thoracic Society; Infectious Diseases Society of America. Guidelines for the management of adults with hospital-acquired, ventilator-associated, and healthcare-associated pneumonia. Am J Respir Crit Care Med. 2005;171(4):388-416. PMID: 15699079

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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