読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Cross sectional 失神入院患者における肺塞栓症の頻度

NEJM 論文 循環器

失神入院患者における肺塞栓症の頻度
Prevalence of pulmonary embolism among patients hospitalized for syncope

N ENGL J MED 375;16,October 20,2016 

【背景】
 失神で入院した患者の肺塞栓症の有病率は十分に記録されておらず、現行の診療ガイドラインでは、このような患者で肺塞栓症の診断を確定するための精査について、ほとんど注意が払われていない
【方法】
 イタリアの11病院に失神の初回エピソードで入院した患者を対象に、失神の初期診断がつくか否かに関わらず、肺塞栓症を包括的に精査した。Wellsスコアによる検査前確率が低く、D-ダイマー検査が陰性の患者では肺塞栓を除外し、残りの患者全例にダイナミックCTおよび換気血流肺シンチをおこなった。

f:id:tyabu7973:20161105002704j:plain
(本文より引用)

【結果】
 平均76歳の560例が組み入れられた。肺塞栓症の検査前確率が低く、D-ダイマーが陰性であることで、560人中330人(58.9%)が肺塞栓症を除外された。残りの230人中97人(42.2%)で肺塞栓症が同定された。
 コホート全体における肺塞栓症の有病率は17.3%(14.2-20.5)だった。肺動脈主幹部・葉動脈の塞栓、両肺総面積の25%を超える血流欠損像が認められた患者は61人だった。肺塞栓症は、臨床診断がついた患者355人のうち45人(12.7%)、臨床診断がついていない患者205人のうち52人(25.4%)で同定された。
【結論】
 失神の初回エピソードで入院した患者の6人に1人の割合で肺塞栓症が同定された。


Pulmonary Embolus and Syncope


【批判的吟味】
・まずはいつも通り論文のPECOから。といっても横断研究ですからPECOという感じでもないのですが・・・
P:イタリアの11病院の失神入院患者 560人、平均76歳
E:失神の説明要因の有無にかかわらず全例肺塞栓精査目的のCT+換気血流シンチ

O:肺塞栓症の発症率
T:横断研究
・平均年齢76歳、男性40%、NMSの診断が26.6%、起立性低血圧20%。
・興味深かったのは、前駆症状の頻度はPEの患者でも42.3%もあるということでした。前駆症状では分けられないです。
・気をつけるべきは入院患者のデータということです。失神した患者が全例入院するわけではないことを考えると、入院適応は?と考えてしまいます。
・一応本文中の入院の適応は、転倒関連外傷、重篤な合併症、失神の原因が特定できない、心原性リスク高い患者、Syncope Study Scoreが高値などのようです。
・当初2583人の失神患者が来院し、入院しなかった患者は1867人で、迷走神経反射が829人、状況失神が465人、薬剤性低血圧 380人、循環血液量減少 112人、入院拒否 81人でした。
・また、抗凝固療法中患者も除外されています。

【個人的な意見】
 イタリアは失神については世界的に研究されている国です。なんとSCU(Syncope Care Unit)があるんだとか。それにしても頻度多いですね。おっちゃん困ってしまいます。でも、造影CT取りまくり〜の、overdiagnosisしまくり〜のってのも困りもんですね。cross-sectionalだし、日本国内でも出来ないですかねえ。全例シンチが厳しいか・・・

✓ 入院する失神患者では肺塞栓症の頻度は思っている以上に多いかもしれない