栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:シックデイ/不眠症/上下肢の血圧差/RAの治療

最近の救急当番がデフォルトで荒れます。ともあれMKSAP始めますよ!

シックデイ Sick day

❶症例 
 29歳女性。2日前から発熱、咳嗽、鼻汁、筋肉痛、倦怠感があり来院。3ヶ月前にアジソン病と診断されており、ヒドロコルチゾンとフルドロコルチゾンを内服している。薬剤内服可能であり、水分摂取もできている。体温38.2℃ 血圧102/68 脈拍88 起立性変化なし。呼吸数21 BMI31。咽頭後壁の発赤、頚部に小さなリンパ節腫脹あり。

 適切な治療は?
A. 入院の上、輸液とグルココルチコイド治療
B. フルドロコルチゾン増量
C. ヒドロコルチゾン3日間増量
D. 対症療法

 ❷シックデイ
  この患者はアジソン病の既往があり上気道感染を起こしているため、ヒドロコルチゾンをおよそ3倍量3日間投与すべきである。内服、飲水は可能で、上気道症状以外特記所見なくバイタルも落ち着いている。後は副腎クリーゼのリスク軽減のためにもヒドロコルチゾン増量が必要であり、シックデイの患者教育が重要である。

 この患者は低血圧でもなく、経口摂取可能のため、入院、点滴の必要性はない。

 感染症によりミネラルコルチコイドは追加分泌される傾向にあり、この患者ではフルドロコルチゾンの追加は不要である。

 対症療法のみだと、上気道感染の遷延や増悪を引き起こすかもしれない。

Key Point
✓ シックデイの対応はたかが風邪、されど風邪

Chakera AJ, Vaidya B. Addison disease in adults: diagnosis and management. Am J Med. 2010;123(5):409-413. PMID: 20399314

 

不眠症

Insomnia

❶症例

 42歳男性。数ヶ月の不眠の訴え。入眠障害があり、睡眠維持ができない。市販薬使用歴なし。飲酒は週末にビール2-3杯飲む程度であり、変化はない。また朝に2杯のコーヒーを飲む。妻はいびき、あえぎ呼吸など夜間の呼吸障害はないと言う。足の症状もない。夫婦は最近引っ越しをした。夫は昔の家より寝室が暑くなったと言うが、妻は快適だと言う。身体所見、バイタルは正常範囲内。BMI 26。精神状態も正常である。

 最適な初期介入は?
A. 
 禁酒のすすめ
B.  ベンゾジアゼピン
C.  睡眠衛生整備
D.  市販の抗ヒスタミン薬

❷不眠症

 この患者は、新居に引っ越してから睡眠衛生が乱れており、行動、環境の面からアプローチすべきである。睡眠衛生の整備のみで完全に不眠症が改善するわけではないが、他の治療を加えるに当たって基礎となりうる。このケースでは寝室の温度調整を行うことが第一であり単純な解決手段である。また、音やベッドの快適さ、患者の精神衛生も関与している可能性もある。

 アルコールは不眠の原因になり、適切に使えば不眠治療になるかもしれないが、この患者は入眠にアルコールを使っておらず週末の飲酒のみである。

 非薬物療法の効果がない場合は薬物療法も考慮されるが、抗ヒスタミン薬は抗コリン性の副作用を惹起し、日中の眠気も問題となるため推奨されない。この患者で睡眠薬を使うとすれば初めに睡眠構造に影響がなく副作用の少ない非ベンゾジアゼピン系のゾルピデムやザレプロンを試すべきである。ベンゾジアゼピン系のジアゼパムなどはその次に選択されるべきであり短期で使用する。

Key Point 

✓ 不眠症治療の第一歩は睡眠衛生整備

Wilson JF. In the clinic: Insomnia. Ann Intern Med. 2008;148(1):ITC1-1. PMID: 18166757

 

 

上下肢の血圧差

Upper high lower low

❶症例

 30歳男性。健康診断で来院。週に数回のジョギングをし、初のマラソンに向けてトレーニング中である。最近、長く走ると足がつることがあり、休むと治る。狭心症状、呼吸困難、倦怠感、浮腫はない。発熱なし。血圧は両上肢で160/80、BMI24。心尖拍動の外側偏位なし。Ⅰ音は正常、Ⅱ音は生理的な分裂のみ。Ⅳ音聴取。早期収縮期クリック、Levine2/6の収縮期雑音を胸骨右縁で聴取。背部でも左傍脊柱領域に収縮中期雑音を聴取する。橈骨動脈は両側で強く触知されるが、足背動脈、膝窩動脈の触知は難しい。

 診断は?
A. 
 大動脈縮窄症
B.  心房中隔欠損症
C.  僧房弁逸脱症
D.  心室中隔欠損症

❷上下肢の血圧差

 診断は大動脈縮窄症であり、先天的に左鎖骨下動脈以遠で狭窄が起きている。これは上下肢の血圧差を生じ、古典的な身体所見では上肢は高血圧だが、大腿動脈では減弱、遅延が起きる。下肢の間欠性跛行はよく起きる。側副血行路による連続性雑音を聴取することもある。診断には心臓超音波が有用。この患者は二尖弁を思わせる身体所見もあり、大動脈縮窄症の患者の半数以上が合併している。ほとんどの患者が無症状で、聴診で気づかれることすらある。大動脈弁閉鎖不全症があれば拡張期雑音も聴取される。

 心房中隔欠損症の古典的な身体所見は、Ⅱ音の固定性分裂と三尖弁を通過する血流増加による汎収縮期雑音である。Ⅱ音の固定性分裂の機序は、右心系のボリュームが増え、肺高血圧になることによって起きる肺動脈弁閉鎖遅延である。

 僧房弁逸脱症は収縮中期クリックや、下肢挙上やスクワットにより減衰する収縮期雑音を聴取する。逆流が増えると、左室肥大を起こし、心尖拍動は外側に偏位する。

 心室中隔欠損症は等尺運動で増強する汎収縮期雑音を聴取する。孔が大きかったり、前向きの欠損である場合はスリルを触れることがある。

Key Point 

✓ 若年の間欠性跛行は大動脈縮窄症を疑う所見

Tanous D, Benson LN, Horlick EM. Coarctation of the aorta: evaluation and management. Curr Opin Cardiol. 2009;24(6):509-515. PMID: 19667980

 

RAの治療 

RA therapy

❶症例 
 36歳女性。5週間前からの手指の腫脹と疼痛。朝のこわばりは1時間以上ある。イブプロフェンで改善はわずか。バイタル正常。右の第2-4指と左の第3-5指のMCP関節の圧痛、腫脹。骨腫大、尺側偏位は認めない。レントゲンは正常。

Laboratory studies:

Erythrocyte sedimentation rate

40 mm/h

Rheumatoid factor

43 units/mL (43 kU/L)

Antinuclear antibodies

Negative

Anti–cyclic citrullinated peptide antibodies

Positive

IgM antibodies against parvovirus B19

Negative

Hepatitis B surface antigen

Negative

Hepatitis B surface antibodies

Positive

Hepatitis C virus antibodies

Negative

 適切な治療は?
A. エタネルセプト
B. ヒドロキシクロロキン
C. メトトレキサート
D. 6週以内に再評価

 ❷RAの治療
  早期の関節リウマチにはメトトレキサートが選択される。専門家は発症3ヶ月以内にDMARDsを始めるべきだとしている。早く始めるほど、関節破壊を防ぐことができメトトレキサートは関節リウマチの中心的治療薬である。メトトレキサートは時期や程度に関わらず、単剤での初期治療使うことができる。この患者は、対称性でDIPを含まない6関節の滑膜炎を起こしており、関節リウマチに矛盾しない。腫脹や朝のこわばり、ESR延長、RF陽性であり、すぐにメトトレキサートを始めるべきである。

 エタネルセプトはTNF-α阻害薬であり、重症の場合適応となるが、メトトレキサートに反応しない時に用いる。

 ヒドロキシクロロキンは軽傷で予後が悪くない早期の単剤治療に用いられる。滑膜炎やESR延長は中等症を示唆し、この段階での抗炎症効果はあまり期待できない。

 6週以内の再評価はパルボウィルスやB型肝炎が証明されていないこの患者では不適切である。これらのウィルス感染症は関節リウマチに類似した多関節炎を起こしうる。6週以上症状が続くことが関節リウマチらしいのは、ウィルス感染症が除外されるからである。しかし、待つことによる治療の遅れは避けなければならない。この患者では関節リウマチであることは十分証明されている。

Key Point
✓ 関節リウマチにはやはりメトトレキサート

Saag KG, Teng GG, Patkar NM, et al.; American College of Rheumatology. American College of Rheumatology 2008 recommendations for the use of nonbiologic and biologic disease-modifying antirheumatic drugs in rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum. 2008;59(6):762-784. PMID: 18512708 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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