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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RetroCohort 腹水を伴う肝硬変患者に対するプロトンポンプ阻害薬は肝性脳症と特発性細菌性腹膜炎のリスク

消化器 薬剤 論文

腹水を伴う肝硬変患者に対するプロトンポンプ阻害薬は、肝性脳症と特発性細菌性腹膜炎のリスク
Proton pump inhibitors as a risk factor for hepatic encephalopathy and spontaneous bacterial peritonitis in patients with cirrhosis with ascites 

HEPATOLOGY 2016;64:1265-1272

【背景】
 PPIは肝硬変患者の肝性脳症のリスクかもしれないし、消化管からの細菌移行による特発性細菌性腹膜炎(SBP)に繋がるかもしれない。
【方法】
 PPIと肝性脳症またはSBPとの関連を腹水を伴う肝硬変患者で評価した。腹水コントロール目的に、1年間以上フォローしたサタバプタン関連の3研究のデータを利用した。Cox回帰分析で、肝性脳症とSBPについてPPI使用者と非使用者とで比較した。
 組み入れされた865人のうち、PPI使用者は39%だった。フォローアップ中に内服継続していたのは52%で、常用しているのは30-39%だった。

f:id:tyabu7973:20161120193335j:plain

(本文より引用)

【結果】
 フォローアップ中に189人が新規に肝性脳症を発症した。PPI使用者の1年の合計リスクは、肝性脳症では HR 1.36(1.01-1.84)、顕性肝性脳症に限ると HR 1.88(1.21-1.91)だった。
 フォローアップ中に86人が新規にSBPを発症した。PPI使用者のSBP発症リスクはHR 1.72(1.10-2.69)だった。


【結論】
 PPIは肝硬変の国際的コホート研究では52%で使用されており、1年の合計リスクでは、肝性脳症やSBP発症リスクだった。これは、PPIが消化管からの細菌移行を増加させるかもしれないという仮説と合致するものだった。

【批判的吟味】
・まずはいつも通り論文のPECOから
P:腹水のある肝硬変患者(利尿剤効果ありもなしも含まれている)
E:PPI使用者
C:PPI非使用者
O:使用1年後の肝性脳症とSBPの発症頻度
T:後ろ向き観察研究(3つのRCTの患者データ使用)
・平均年齢58歳、男性 68%、死亡率は17-21%程度、アルコール性肝硬変が60%前後で最も多く、MELD score 11点援護、Alb 3.3、血小板 13万、フロセミド 62%、スピロノラクトン 64%
・注意しなければいけないのは3つのRCTともに、サタバプタンというバプタン系薬剤を使用している様な方々だということです。ちなみに、サタバプタンは肝性脳症やSBPとは関連しませんでした。
・minimal HEの評価はされていません。
・そもそもこの患者群は、サタバプタンの効果を検証するために集められた群なので、この患者群で、異なるアウトカムについて後付けで検証するのは望ましくはありません。
・また、同様の内容を検証したブラジルやアメリカの検証では有意差が得られませんでした。一方2015年にはSBPのリスクになるという報告もあり、現時点ではよく分からないところです。

【個人的な意見】
 先行研究でも肝硬変患者のPPI使用率は46-78%とかなり高いことが分かっています。ただ、今回の研究のみでは何とも言えないかなあと思います。基本的にこの手のリスクあり観察研究は、色々注意しなければいけない交絡がたくさんあと思っています。
 ただ、結局の所、本当に必要か否かです。そこに照らし合わせて不要なら、敢えてリスクを抱える必要は無いでしょう。

✓ 腹水のある肝硬変患者ではPPI使用は肝性脳症やSBPのリスクを増加させる