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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:RCT 長期保存輸血と短期保存輸血による院内死亡率の違い

NEJM 論文 血液

長期保存輸血と短期保存輸血による院内死亡率の違い
Effects of short-term vs long-term blood storage on mortality after transfusion
n engl j med 375;20 nejm.org November 17, 2016

【背景】
 長期保存された血液を輸血しても患者の有害転帰リスクが上昇しないことはRCTで示されているが、そのような試験の大半は高リスク集団に限定されている。一般入院患者集団において、血液の保存期間が輸血後の死亡率に影響を及ぼすかどうかを調査した。
【方法】
 4ヵ国6病院で行われたpragmatic RCTで、赤血球輸血が必要な患者を、利用可能な血液のうち保存期間が最も短い血液を輸血する群(短期保存群)保存期間がもっとも長い血液を輸血する群(長期保存群)に、1:2 の割合でランダムに割り付けた。
 予備的データから、血液型がB型とAB型の患者では、平均保存期間の差が10日以上という目標に達しないことが疑われたため、プライマリアウトカムの解析対象はA型とO型の患者のみとした。全例が現在の標準治療と同じ治療を受けるため、書面によるインフォームドコンセントは取得しなかった。プライマリアウトカムは院内死亡率とし、試験施設と患者の血液型で補正したロジスティック回帰モデルを用いて推定した。
【結果】
 2012年4月~2015年10月に3万1497人をランダムに割り付けた。そのうち6761人が登録基準を満たさず、ランダム化後に除外された。プライマリ解析では、血液型がA型・O型の2万858人を解析対象とした。うち6936人を短期保存群、1万3922人を長期保存群に割り付けた。平均保存期間は短期保存群13.0日、長期保存群23.6日だった。

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(本文より引用)

 死亡は短期保存群634人(9.1%)、長期保存群1213人(8.7%)だった(OR 1.05:0.95-1.16,P=0.34)。解析対象を全血液型の2万4736人に拡大しても結果は同じであり、死亡率はそれぞれ9.1%、8.8%だった(OR 1.04:0.95-1.14,P=0.38)。事前に規定した高リスクの3つのサブグループ(心血管手術を受ける患者・集中治療室に入室した患者・癌患者)でも、結果は同様だった。
【結論】
 一般入院患者集団では、利用可能な血液のうち保存期間が最も短い血液を輸血された患者と、保存期間が最も長い血液を輸血された患者とのあいだで、院内死亡率に差は認められなかった

【批判的吟味】
・いつも通り論文のPICOから見ていきます。
P:赤血球輸血が必要な患者
I:短期保存群
C:長期保存群
O:院内死亡率
T:RCT
・平均 69歳、男性 49.6%、血液型はA型とO型のみ
・今回は血液型が半分しか解析していないので、これで結論は出せないとは思いますが、過去の研究とも同様の結果です。
・観察研究でいくつかネガティブなデータは出ているようですが、RCTでは証明されませんでしたね。本来は副作用やリスクは大規模観察研究の方が良いのではとも思っていますが・・・
日本では輸血製剤の有効期間を採血後21日に設定しており、それなりに妥当な期間なのかもしれません。
【個人的な意見】
 輸血製剤の有効期間の過去の研究結果がようやく一段落と言えるのかも知れませんね。輸血製剤を破棄しているのはもったいないですものね。こういった医療資源の有効活用についての論文が出てくるのは良いことだと思います。
 
✓ 保存期間が最も短い血液を輸血された患者と、保存期間が最も長い血液を輸血された患者との間で、院内死亡率に差はない