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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:Retrocohort 英国と米国における腹部大動脈瘤の手術閾値

英国と米国における腹部大動脈瘤の手術閾値
Thresholds for abdominal aortic aneurysm repair in England and the United States

N Engl J Med 2016;375:2051-9.

【背景】
 腹部大動脈瘤手術の閾値は国によって大きく異なる。
【方法】
 英国と米国における、動脈瘤手術の施行頻度、手術時の動脈瘤径の平均値、動脈瘤破裂率、動脈 瘤関連死亡率の差を調査した。英国の病院統計データベース(Hospital Episode Statistics)と米国の全米入院患者サンプル(Nationwide Inpatient Sample)から、2005-2012年における未破裂腹部大動脈瘤に対する手術の施行頻度、手術を受けた患者の院内死亡率、動脈瘤破裂率に関するデータを抽出した。また、英国の全英血管登録(National Vascular Registry:2014年データ)と米国の全米手術の質改善プログラム(National Surgical Quality Improvement Program:2013年データ)から、手術時の動脈瘤径のデータを抽出した。
 米国疾病管理予防センター(CDC)と英国統計局のデータをもとに、2005-2012年の動脈瘤関連死亡率を決定した。データは直接標準化法または条件付きロジスティック回帰を用いて、英国と米国との間の年齢と性別の差を補正した。
【結果】
 2005-2012年に、英国では2万9300例、米国では27万8921例が未破裂腹部大動脈瘤の手術を受けた動脈瘤手術の施行頻度は英国の方が米国よりも低く(OR 0.49:0.48-0.49) 、動脈瘤関連死亡率は英国のほうが米国よりも高かった(OR 3.60:3.55-3.64)。動脈瘤破裂による入院頻度は英国の方が米国よりも高く(OR 2.23:2.19-2.27)、手術時の動脈瘤径の平均値は英国の方が大きかった(63.7mm vs 58.3mm)。

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(本文より引用)
【結論】
 英国の方が米国よりも腹部大動脈瘤手術の施行頻度が低く、手術時の動脈瘤径の平均値は大きく、米国のほうが英国よりも動脈瘤破裂率と動脈瘤関連死亡率が低いことが明らかになった。

【批判的吟味】
・論文のPECOから見ていきます
P:腹部大動脈瘤患者
E:米国
C:英国
O:動脈瘤手術の施行頻度、動脈瘤関連死亡率、動脈瘤破裂による入院頻度、手術時の動脈瘤径
T:後ろ向き観察研究
・この差は非常に興味深いです。これは国毎のガイドラインの差なのかもしれませんが、これほど差があるんですね。
・一概にどちらが良いとは言えませんが、英国は手術閾値が高く、米国は手術閾値が低いということは言えますね。
・そもそも手術閾値が英国 63.7mm、米国 58.3mmで0.5cm違うことによる違いでしょうか。

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(本文より引用)
・ポイントは、米国の手術閾値を英国に導入したときに、英国の予後が改善するかどうか?というところでしょうか。
【個人的な意見】
 同じ疾患なのに、これほど違うとは・・・日本でも比較してみたいですね。興味深いです。一方で閾値が異なると手術件数が10倍になっています。これは、人口を英国6410万、米国3億1900万で約5倍であることを考えても2倍にはなっている計算になります。費用対効果の検証もしたいところですね。

✓ 英国と米国の大動脈瘤の手術適応は異なり、手術件数・手術時の動脈瘤径・動脈瘤破裂率・動脈瘤関連死亡率が関連する