栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:アミロイドーシス/偶発性副腎腫瘍/胃腸炎後の下痢/RAのフレア?

寒くて布団から出られぬ日々。頭フル回転で乗り切りましょう!

アミロイドーシス Amyloidosis

❶症例 
 64歳男性。8週間前からの全身倦怠感、呼吸困難、舌痛、下腿浮腫、燃えるような下肢痛。喫煙歴、飲酒歴なし。非合法薬剤なし。内服薬なし。発熱なし。血圧156/84、脈拍100、呼吸数20、BMI22。巨舌と多発する皮下出血。頸静脈怒張なし。心尖部でⅢ音聴取。肺底部背側にラ音聴取。肝腫大あり。両下肢に3+のpitting edema。同部位に対称性の感覚低下あり。心電図は頻脈で低電位。胸部Xpは心拡大とうっ血所見。

Laboratory studies:

Hemoglobin

11.2 g/dL (112 g/L)

Hemoglobin A1c

5.8%

Albumin

2.0 g/dL (20 g/L)

Calcium

9.2 mg/dL (2.3 mmol/L)

Serum creatinine

1.5 mg/dL (133 µmol/L)

Total protein

8.0 g/dL (80 g/L)

Urinalysis

0-3 erythrocytes/hpf; 3-5 leukocytes/hpf

Urine protein–creatinine ratio

8.9 mg/mg

 診断は?
A. ALアミロイドーシス
B. 糖尿病性神経症
C. 結節性多発動脈炎
D. 原発性膜性腎症

 ❷アミロイドーシス
  診断はALアミロイドーシスであり、主に腎臓と心臓が侵される。腎臓は急速に進行する腎機能障害を伴うネフローゼ症候群が特徴的である。心臓はアミロイド沈着によって起こる拘束型心筋症が急速に心不全を引き起こす。肝腫大も起こりやすく、右心不全によるうっ血で起こる。疼痛を伴う両側遠位の感覚障害から運動障害へ発展するパターンはALアミロイドーシスに特徴的である。蛋白の種類によって分類されALアミロイドーシスは合衆国では最も多いタイプである。前駆蛋白はモノクローナルな軽鎖で一般的にはλタイプである。脂肪生検のコンゴレッド染色が低侵襲かつ診断に有用である。直腸生検も選択肢であり、これらが陰性の場合は腎生検も考慮する。血清と尿の蛋白電気泳動がモノクローナル軽鎖を見つける検査となり、ALアミロイドーシスの20%に多発性骨髄腫やリンパ増殖性疾患が見つかる。

 糖尿病も蛋白尿や腎機能障害を呈するが、この患者は糖尿病ではなく、症状も説明できない。

 結節性多発動脈炎では、発熱、腹痛、関節痛、体重減少が数日から数ヶ月で悪化する。2/3は多発性単神経炎を呈し、1/3は高血圧、精巣痛、結節、潰瘍、紫斑、網状皮斑のような皮疹を呈する。心不全、肝腫大、巨舌、ネフローゼ症候群は起こらない。

 原発性膜性腎症はALアミロイドーシスよりコモンであるが全身症状は伴わない。

Key Point
✓ アミロイドーシスの診断は脂肪生検

Zhu X, Liu F, Liu Y, et al. Analysis of clinical and pathological characteristics of 28 cases with renal amyloidosis. Clin Lab. 2011;57(11-12):947-952. PMID: 22239026

 

偶発性副腎腫瘍 Incidental adrenal mass

❶症例

 66歳女性。激しい腹痛の精査でCTを撮ると副腎腫瘍が発見された。腹痛は改善している。高血圧、糖尿病なし。動悸、頭痛、発汗、体重変化なし。体温36.6℃、血圧140/84、脈拍78、呼吸数16、BMI29。皮膚は正常で鎖骨上と後頚部のfat padあり。他、神経学所見含め異常なし。腫瘍は右副腎にあり長径2.5cmでCT値は9HU。

Laboratory studies:

Creatinine

1.0 mg/dL (88.4 µmol/L)

Electrolytes

 

Sodium

139 meq/L (139 mmol/L)

Potassium

4.1 meq/L (4.1 mmol/L)

Chloride

97 meq/L (97 mmol/L)

Bicarbonate

29 meq/L (29 mmol/L)

Glucose, random

89 mg/dL (4.9 mmol/L)

Cortisol (9 AM)

(Normal, 5-25 µg/dL [138-690 nmol/L])

Baseline

13.8 µg/dL (381 nmol/L)

After 1 mg dexamethasone the night before

1.1 µg/dL (30 nmol/L)

Dehydroepiandrosterone sulfate

0.2 µg/mL (0.54 µmol/L)

Urine metanephrine and normetanephrine

Normal

 適切なマネージメントは?
A. 
 MIBGスキャン
B.  MRI
C.  6-12ヶ月後フォロー
D.  右副腎摘出術

❷偶発性副腎腫瘍

 6-12ヶ月後のフォローでよい。偶然発見された2.5cmのmassで、無症状、副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、アンドロゲン、髄質ホルモンであるアテコラミンの過剰分泌もない。4cm未満かつCT値20HU未満では悪性腫瘍の可能性はない。副腎腫瘍は他の疾患精査で偶然見つかることが多い。ルーチンでは、大きさ、場所、画像的特徴(形状、均一性、濃度など)、ホルモン異常から悪性かどうかの評価を行う。高血圧や電解質異常、グルココルチコイド過剰は機能性病変を考える。早期の褐色細胞腫やCushing症候群は症状がはっきりしないことがあるため、この患者では二つの精査と、高血圧なら高アルドステロン血症を調べる。褐色細胞腫では24時間蓄尿カテコラミンを、Cushing症候群では1mgデキサメタゾン抑制試験を行う。原発性アルドステロン症では、レニン・アルドステロン比を算出する。

 高血圧、カテコラミン高値もないため、褐色細胞腫精査のためのMIBGスキャンは必要ない。

 同様にMRIの検査は診断のための情報を増やさない。手術の適応もない。

Key Point 

✓ 偶発性副腎腫瘍ではホルモン精査を

Nieman LK. Approach to the patient with an adrenal incidentaloma. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95(9):4106-4113. PMID: 20823463

  

胃腸炎後の下痢 Diarrhea after food poisoning

❶症例

 37歳女性。1ヶ月前に食中りと思われる症状があって以来、下痢が続いている。その時は、2日間、嘔気、嘔吐、水様下痢があった。数日後、症状は改善していたが、時折下痢を認めていた。1日に3-4回の水様便があり、食後に多い。過去1ヶ月はガス貯留と腹部膨満を自覚。夜間は排便なく、体重減少、発熱、血便はない。最近の抗菌薬使用歴なし。2年前の胆摘以外既往もない。バイタル正常。wheezeなし。腸蠕動音正常、腹部圧痛なし。直腸診正常。血算正常。便中白血球陰性でCD、虫卵、寄生虫、ジアルジア抗原は陰性。便中Na40mEq/l、K20mEq/l。

 診断は?
A. 
 胆汁酸塩に起因する下痢
B.  好酸球性胃腸炎
C.  過敏性腸症候群
D.  乳糖不耐症

E.  顕微鏡的大腸炎

❷胃腸炎後の下痢

 この患者は食中りないし胃腸炎後に起きた乳糖不耐症である。便の浸透圧ギャップが170である。計算は290-(便Na+便K)で行われる。便の浸透圧ギャップが100mOsm/kgを超えると浸透圧性下痢であり、乳糖不耐症はその最たるものである。毎食の乳糖を12g以下(牛乳グラス1杯程度)に制限すると症状は改善してくる。その後、徐々に量を増やす。

 胆摘後、下痢を起こす患者もいるが、手術ははるか昔であり、今症状が出るのはおかしい。また、分泌性下痢になるはずである。

 顕微鏡的大腸炎や好酸球性胃腸炎でも下痢は起こすが、顕微鏡的大腸炎は分泌性下痢であり、セリアック病でも合併しない限り浸透圧ギャップは開かない。好酸球性胃腸炎では浸透圧性下痢と分泌性下痢の両方が起こりうるが、頻度は乳糖不耐症よりはるかに低い。

 胃腸炎後に過敏性腸症候群が悪化することはあるが、浸透圧ギャップは開大しない。

Key Point 

✓ 下痢の鑑別に便中電解質

Shaukat A, Levitt MD, Taylor BC, et al. Systematic review: effective management strategies for lactose intolerance. Ann Intern Med. 2010;152(12):797-803. PMID: 20404262

 

RAのフレア? RA flare?

❶症例

 42歳女性。3週間前からの倦怠感、皮疹、胸痛、手の腫脹・疼痛。4年前に血清反応陽性の関節リウマチの診断を受け、メトトレキサートが開始された。9ヶ月前にはインフリキシマブが始まり、滑膜炎のフレアは起きていない。体温38.1℃、血圧130/80、脈拍88、呼吸数18。前腕や顔など日光露光部に紅斑。左側胸部に胸膜摩擦音を聴取。両側PIP関節に軟部組織の腫脹と圧痛を認める。血算、生化学、CRPは正常。リウマチ因子、抗CCP抗体、抗核抗体陽性。6ヶ月前のツベルクリン反応は陰性。レントゲンで左胸水少量。

 適切なマネージメントは?
A. 
 ヒドロキシクロロキンを追加
B.  リツキシマブを追加
C.  インフリキシマブを中止
D.  メトトレキサート増量

❷薬剤誘発性ループス

 適切な対応はインフリキシマブを中止することである。この患者はインフリキシマブによる薬剤誘発性ループス(DILE)を起こしている。インフリキシマブをしている多くの患者は抗核抗体、抗DNA抗体、抗Sm抗体を含む自己抗体が陽性化し、稀にDILEを発症する。この状態になった患者は典型的なSLE症状を呈するが、皮膚、漿膜が侵されやすく、腎臓や神経が侵されることは極めて稀である。この患者は関節リウマチの症状は安定している。滑膜炎が活動性であれば関節リウマチのフレアも起こりうるが、日光過敏の皮疹、抗核抗体陽性はDILEを示唆する所見である。原因薬剤を中止すべきである。

 ヒドロキシクロロキンは関節リウマチの治療としてメトトレキサートと併用され、非薬剤誘発性のSLEには使用されるが、この患者でまずすべきことは薬剤中止である。

 リツキシマブのような生物学的製剤の併用は推奨されず、感染症の危険性が高まり、デメリットの方が大きい。

 DILEがなければメトトレキサート増量も活動性の滑膜炎では選択肢となるが、この患者では不適切である。

Key Point 

✓ DILEではまず薬剤中止

Costa MF, Said NR, Zimmermann B. Drug-induced lupus due to anti-tumor necrosis factor alpha agents. Semin Arthritis Rheum. 2008;37(6):381-387. PMID: 17977585

MKSAP for Students 5

MKSAP for Students 5

 
MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)