読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:高Ca血症/両手の皮疹/体内異物感染/静脈血栓予防

書き方をシンプルにしてみました。MKSAPです。

 

Q1

 57歳女性。採血と身体診察を受けて帰宅。既往に高血圧があり、リシノプリルで治療されている。他に既往はなく、ビタミン剤やサプリメントも飲んでいない。血圧129/84、脈拍86、BMI 26。身体所見異常なし。骨折、尿路結石、骨痛の病歴はないが、兄が数年前に高カルシウム血症で精査を受けている。兄は健康で治療は受けていない。

Previous laboratory studies:

Albumin

3.8 g/dL (38 g/L)

Calcium

10.6 mg/dL (2.7 mmol/L)

Creatinine

0.9 mg/dL (79.6 µmol/L)

Parathyroid hormone

61 pg/mL (61 ng/L)

 

問 次にすべき検査は?

A プロラクチン測定

B 25(OH)VtD測定

C 尿中Ca、尿中Cre測定

D 副甲状腺シンチ

 

①高カルシウム血症の評価

 この患者は尿中Ca・Cre比を測定すべきである。その値が0.01を切っていたら家族低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)が示唆される。原発性副甲状腺機能亢進症でも1/3は同様の結果となるが、この患者はそれによる合併症が起きておらず、家族歴がある。診断の確定のためにCASR遺伝子の変異を調べることもできる。

②他の選択肢

 MEN1が疑われる場合は、プロラクチン測定も考えられる。この患者は他の腫瘍が証明されておらずあまり疑われない。

 25(OH)VtDの測定は高カルシウム血症、高PTH血症の診断に寄与しない。ビタミンD欠乏症が疑われるのは高PTH血症で血清カルシウムが正常かやや低値の時である。

 副甲状腺シンチは手術を前提とした局所画像評価として行われる。

 

POINT 家族歴のある高Ca血症を見たらFHHを考慮する 

Christensen SE, Nissen PH, Vestergaard P, Mosekilde L. Familial hypocalciuric hypercalcaemia: a review. Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2011;18(6):359-370. PMID: 21986511

 

Q2

 65歳男性。手に多発する無症候性の赤い丘疹。患者はフロリダで育ち、小児期はよく日焼けしていた。日焼け止めはほとんど使わなかった。

Figure 71.

(MKSAPより)

 

問 診断は?

A 日光角化症

B 基底細胞癌

C 晩発性皮膚ポルフィリン症

D 脂漏性角化症

 

① 両手の皮疹

 この患者は日光角化症である。一般的に日光露光部に起き、白人高齢者に多い。前癌病変とされ、1-5%は時を経て扁平上皮癌へと進展する。治療選択は多く、凍結療法、イミキモド外用、5-FU外用、光線療法などがある。日光角化症は視診より触診でより見つけやすい。単発だったり、治療反応性が悪ければ生検も考慮する。

②他の選択肢

 基底細胞癌(BCC)はつややかで血管拡張像が見られるのが特徴である。最も大きなリスク因子は白人であることと日光暴露であり、日光角化症と同じ領域にできやすい。

 晩発性皮膚ポルフィリン症はウロポルフィリノーゲンデカルボキシラーゼ欠損による水泡性病変である。家族性と後天性があり、日光暴露後の手背に嚢胞を形成する。結果的に破裂、びらん、脱色素、痂皮を形成することもある。

 脂漏性角化症は老人に起こりやすく、褐色、痂皮状、つややかな丘疹でstuck-onという見た目をしている。日光角化症で見られる赤色の見た目はあまり見られない。無害だが、時に悪性所見と間違え生検されることもある。

 

POINT 日光角化症は前癌病変であり治療の必要がある

Ridky TW. Nonmelanoma skin cancer. J Am Acad Dermatol. 2007;57(3):484-501. PMID: 17512631

 

Q3

 62歳女性、3日前からペースメーカージェネレーターが皮膚の外から見えているのことで来院。発熱、失神、失神の前兆なし。既往は、完全房室ブロック、永久PMは8年前に挿入し、バッテリーが消耗しつつあったため、ジェネレーターは2ヶ月前に、交換した。

 体温37.2 °C 、血圧128/82 mm Hg、脈拍60/分、 PMの一部が皮膚から見えている、出口部に紅斑はあるが、膿はなし。心電図は、心房センシングで心室ペーシングを認めた。経胸壁エコーでは、2本のリード線を認め、ベジテーションなし。血液培養2セット陰性。

 

問 治療は?

A ペースメーカーとリード線を摘出

B 4週間のバンコマイシン点滴

C 4週間のセファレキシン内服

D 外科的に皮膚を縫合する

 

①体内異物の感染

 局所感染の兆候がなくても、PMの一部が外部に露出しており、感染の可能性はあるため、抜去するのが良い。そして、少なくとも72時間抗菌薬投与するまでは、一時的ペーシングを挿入し、新しいPMを挿入する。

②他の選択肢

 経口でも経静脈的でも抗菌薬は感染予防で再挿入前に使用することはあるが、治療にはならない。

 皮膚縫合は感染の治療にはならない。

 

POINT 異物感染の原則は異物の除去

Baddour LM, Epstein AE, Erickson CC, et al; American Heart Association Rheumatic Fever, Endocarditis, and Kawasaki Disease Committee; Council on Cardiovascular Disease in Young; Council on Cardiovascular Surgery and Anesthesia; Council on Cardiovascular Nursing; Council on Clinical Cardiology; Interdisciplinary Council on Quality of Care; American Heart Association. Update on cardiovascular implantable electronic device infections and their management: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation. 2010;121(3):458-477. PMID: 20048212

 

Q4

 65歳男性、CTで診断された右被殻出血後に退院して4日後に再診。既往では、エナラプリルやヒドロクロロチアジド内服中のコントロールがつかない高血圧があり、CKDもある。入院時にラベトロールが追加処方された。

 血圧118/62 mm Hg、脈拍86/分で整、呼吸16/分、血圧130/80 mm Hg。四肢に浮腫なし、神経所見としては、構音障害と左顔面、左腕、左足の完全な麻痺あり。入院1日後と3日後のCTでは、血腫の増大などなし。MRIでは動脈瘤や静脈奇形は認めなかった。

Laboratory studies:

Activated partial thromboplastin time

36 s

INR

0.9

Platelet count

410,000/µL (410 × 109/L)

Creatinine

3.2 mg/dL (283 µmol/L)

 

問 適切な静脈血栓予防は?

A 弾性ストッキング装着

B 低用量のヘパリン

C 下大静脈フィルター

D 未分画ヘパリン皮下注

 

①静脈血栓予防

 この患者は、CTで血腫の増大なしであり、抗血栓療法は安全に行えると判断される。低分子ヘパリンは未分画ヘパリンよりややエビデンスは高いが、この患者はCKDがあるため、低分子ヘパリンの使用は相対的に禁忌である。

②他の選択肢

 脳卒中患者では、空気圧縮のない弾性ストッキングはDVT予防の効果なし。

  低用量のヘパリンは多くの外科手術後に使用されているが、脳卒中患者ではエビデンスなし。

 持続出血はなく、ヘパリン化は安全でDVT予防の効果があるため、IVCフィルターは不適切。コントロールできていない脳出血患者や脳出血で抗凝固療法ができない患者には使用する。

 

POINT ヘパリンは脳内出血患者で第4病日までの静脈血栓のハイリスク患者に推奨される

Kumar S, Selim MH, Caplan LR. Medical complications after stroke. Lancet Neurol. 2010;9(1):105-118. PMID: 20083041